2010年5月18日(火)「しんぶん赤旗」
労働者派遣法改定案審議
焦点の専門業務“抜け穴”
民主党 拡大を要求 共産党 抜本縮小を主張
労働者派遣法改定案で「登録型派遣の原則禁止」の例外とされた「専門26業務」をめぐり、民主党の議員が専門業務の拡大を求めるなど重大な焦点になっています。
仕事のあるときだけ雇われる不安定な登録型派遣は「本来全面禁止すべき」(宇都宮健児日弁連会長)との声が出ていますが、政府案は26の専門業務を禁止の例外とする“抜け穴”法案です。専門業務には派遣期間の制限がありません。「事務用機器操作」(45万人)ではパソコン作業が専門業務とみなされるため、「業務偽装」も横行しています。
介護も看護も
日本共産党は、使い捨て自由の不安定雇用をなくすために、「専門業務を厳格に絞り込むべきだ」(4月16日の衆院本会議、高橋ちづ子議員の質問)とのべ、大幅な縮小を求めてきました。
民主党はどうか。衆院厚生労働委員会(同23日)で初鹿明博議員は「誰でもパソコンが使える時代にこれが『専門』でいいのか」とのべたものの、一方で「介護とか看護とか、ただでさえ人材不足の分野が『専門』に入っていない」と主張。「対象業務を絞り込んだり、新しく広げていったりすべきだ」と、“抜け穴”の拡大をも求めました。
長妻昭厚労相は「不断の見直し、検討が必要」と歩調を合わせ、原則禁止が施行される3年以内に審議会で検討すると述べました。専門業務は政令で決めるため法改正なしに増やすことができます。
専門業務の拡大は日本経団連や派遣業界が求めてきました。厚労省の政策会議(2月23日)でも、原則禁止されてきた医師・看護師を加えることなどを検討していくことを決めています。専門業務の縮小を求める労働者の願いに背くものです。
自民党は、日本共産党の志位和夫委員長の質問(2月8日)に合わせて厚労省が出した「専門業務適正化」の通達と是正指導を攻撃しています。
参院厚労委員会(4月20日)で丸川珠代議員が、是正指導に反発する派遣業界の「要望」をとりあげ、「突然、アポイントもなく指導官が訪れ、違法であると決め付けて尋問した。こういう立ち入り調査が認められるのか」と指摘。通達で「事務用機器操作」について「習熟を要するものに限られる」などとしたことについて「政令を超えた通達だ」などと攻撃し、現行法にもとづく専門業務の「適正化」にさえ反対しています。
「不十分でも」
社民党は、政府案の閣議決定に同意しながら、衆院本会議(4月16日)で服部良一議員が「専門26業務の中には事務用機器操作など業務内容が拡大解釈され、違法に悪用されている実態があり、例外がいくらでも広がる危険性がある」などと質問。一方で「不十分でも何としても今国会成立を」(照屋寛徳国対委員長、5月11日の与党国対委員長会談)と主張しています。
改定案は衆院厚労委員会(4月23日)で与党分の質疑が1回行われただけで、他の法案審議が優先され審議再開のめどはたっていません。労働者や弁護士などから、“抜け穴”などの問題点を抱えた改定案の抜本的見直しを求める声が広がっており、各党の姿勢が問われています。(藤原直)