2010年5月31日(月)「しんぶん赤旗」
NHK「日曜討論」
市田書記局長の発言
日本共産党の市田忠義書記局長が30日のNHK番組「日曜討論」で各党代表と行った討論での発言は次のとおりです。司会は影山日出夫解説委員。
普天間基地の無条件撤去こそ
沖縄県民の総意より米国の意思最優先―「際限ない移設先探し」は破たん
名護市辺野古を米軍普天間基地の「移設先」とした日米合意について、民主党の細野豪志副幹事長は、鳩山由紀夫首相同様、政権与党として“おわびする”としながら、「やむをえなかった」と表明しました。
市田氏は、次のように批判しました。
市田 首相自身が「国外、少なくとも県外」といっていた自らの公約をまず踏みにじった。あの4・25県民大会で示されたように、県内移設は絶対反対だというのが沖縄県民の総意です。その総意を踏みにじったことは絶対に許されません。
結局、沖縄県民の総意よりも、アメリカの意思を最優先にし、それを県民と国民に押し付けた。こういうやり方は、沖縄県民の怒りをいっそう増幅させ、団結を強めることになります。こんな方法は結局破たんします。この方針は中止すべきです。
こういうことになった根底には、際限のない「移設先」探しの破たんがあります。普天間の“痛み”は、どこに移しても同じ“痛み”だと思います。“痛み”は拡散したり分散するものではなくて、取り除くものです。
また、細野氏が緊迫した東アジア情勢などを理由に挙げたことについても、次のように述べました。
市田 さきほど、「抑止力」論や北東アジア情勢について発言されましたが、「抑止力」の名でどれだけ沖縄県民の安全が脅かされ、いのちの危険にさらされてきたことか。ワインバーガー氏(元国防長官)やチェイニー氏(元副大統領)らアメリカの高官自身、“在日米軍は日本防衛の任務を持っていない”とずっと言い続けてきているのです。「抑止力」どころか、アフガニスタンやイラクへの出撃基地になっています。(海兵隊は)そういう部隊ですから、「侵略力」「戦争力」そのものです。無条件の返還を本腰を据えて堂々と交渉する以外に解決の方法はないと思っています。
沖縄の怒りは後戻りを許さない
志位委員長は米国に乗り込み堂々と交渉 真正面から県民の意思を伝えた
社民党の重野安正幹事長が、「移設先」としてグアム、サイパン、テニアンなどを挙げたのに対して、市田氏は、次のように述べました。
市田 さきほど「移設先」探しの破たんだといいました。(普天間基地は)無条件でアメリカに持って帰ってもらい、どこに置くかはアメリカが判断すればいいわけです。(海兵隊が)“日本の平和と安全のための抑止力だ”という呪縛(じゅばく)から抜け出すことが、解決のカギだと思います。
1969年に日米政府で合意した沖縄の施政権返還を振り返ってみると、これは日本が沖縄の施政権を放棄したサンフランシスコ条約第3条からいえば、条約上(返還は)不可能だったのです。その不可能を可能にしたのは、(のちに沖縄県知事になった)屋良朝苗氏が琉球政府主席に当選し、無条件返還を求める県民運動も盛り上がった(ことがあります)。アメリカ国務省の日本担当者が、“これ以上施政権返還を認めなかったら、もうもたない”と本国に報告したわけです。やはり、世論を背景に本腰を据えて交渉すべきです。
わが党の志位(和夫)委員長は、ワシントンに乗り込んで、国務省に対し、“もう沖縄の怒りは限界点に達している、あと戻りできない”と堂々と話しました。アメリカの政府と私たちの立場は違いますが、真正面から堂々と、“これが県民の意思だ”と伝えました。(鳩山政権は)そういうことを全然やらずに、言葉だけは「県外だ」と。これでは、まったく解決できないと思います。
社民党は「県内移設反対」といっていますが、これは県民の総意なので当然です。それと閣内にとどまることはあい矛盾すると思うんです。やはり、「移設先」探しの枠内から脱却し、解決策を示すことがカギだと思います。
鳩山内閣の政治責任は重大
「県外・国外」公約は選挙のためか 普天間問題の集中審議を求める
番組では、公約を破った鳩山首相の責任や進退問題が議論となりました。市田氏は次のように主張しました。
市田 鳩山内閣の政治責任は極めて重大です。一つは、「県外」「国外」という公約を破りながら、“あれは党代表の発言であって公約ではない”と開き直っているわけで、これには二重の重大な責任があります。
「学べば学ぶにつけ」という(首相の)発言がありました。この十数年来、これほど大問題になってきた問題ですし、アメリカでさえ普天間基地は“世界一危険な基地”だといってきたわけです。それなのに、いまごろ「学べば学ぶにつけ」だといっているわけです。国民からみれば、「県外」「国外」というのは、“口先だけ”“選挙のためにいってきたのか”ということになります。
この問題は当然、予算委員会で、総理の出席のもとで時間をかけて集中審議をやるべきです。各党間で立場はいろいろ違うと思いますが、こういうときに国会の場で議論しなかったら、いったいいつ議論するんですか。
徳之島や全国に被害を広げる政府方針「負担軽減」どころか自公案より危険
自民党の大島理森幹事長は、「基本的に自民党案に戻ってしまった」と述べ、細野氏は、鳩山内閣が決定した「対処方針」には、「自民党にもできない画期的なことが書いてある」などと述べたことについて、次のように指摘しました。
市田 さきほど、「現行案に戻っただけだ」、「いや、そうじゃない。それよりもいい」という議論がありました。(自民党政権がまとめた辺野古「移設」の)現行案は県民の合意が得られず、わが党は反対です。
しかし、細野さんは、“現行案よりはいい”といいましたが、徳之島や国内の自衛隊基地に訓練を移転するわけです。いわば、危険を分散するんです。
2006年に(日米合意で)訓練を「移転」するといっていた嘉手納基地ではどうか。地元の宮城(篤実嘉手納)町長は、“世界中のアメリカの航空機がきて、いっそう騒音被害がひどくなった”といっています。だから、負担軽減というのは口先だけで、むしろ被害を全国に広げるだけで、全然負担軽減になっていないことを一言いっておきたいと思います。
強権的な与党の国会運営
審議わずか6時間で郵政法案を強行採決 問答無用のごり押しは民主主義感覚ゼロ
郵政「改革」関連法案を、わずか審議1日で強行採決(衆院総務委員会)するなどの強権的な民主党の国会運営についても議論となりました。市田氏はまず、郵政「改革」関連法案の内容と与党の横暴について次のように指摘しました。
市田 郵政民営化によって、郵便局が撤退したり手数料が値上げされ、サービスが低下した。(しかし)今度の与党案も、けっきょく株式会社としたうえで3分社化するというものです。利益優先の株式会社化とユニバーサルサービス(全国一律に提供するサービス)は矛盾します。
しかも、たった1日、実際には6時間で(法案を)あげてしまう。これをあまりにひどいと思わなかったら、議会制民主主義の感覚が今の政権党にはゼロだといわれても仕方がない。(一方で)自分たちの都合の悪いことは、いっさい国会で議論しない。これだけ「政治とカネ」の問題に国民が怒っているときに、国会の場で政治的道義的責任を追及するのは当たり前です。鳩山さんも裁判がすんで資料がもどってきたら「明らかにする」と言っていたのにいまだにやらない。小沢さんは国会で一言も説明しない。普天間の集中審議も前から(行うべきだと)要求しているのにやらない。
こういうことをやらないで自分たちが通したいと思う法案は、問答無用でごり押しにやる。こんな強権的な国会運営はかつてなかった。反省がないとだめです。
参院選で何が問われるか
普天間基地・後期医療・派遣法… 米国と財界にモノが言える政治をつくる
最後に、司会者から「参院選は、何が問われる選挙となるのか」と問われた市田氏は、次のように述べました。
市田 昨年の総選挙で、自民・公明に(退場の)審判がくだって民主党政権ができました。ところが8カ月の間に公約をことごとく裏切った。後期高齢者医療制度の廃止も、普天間基地、労働者派遣法の問題、民主党が公約を裏切った背景には、自民・公明政権と同じように、アメリカと大企業にはモノが言えない、根底にそういう弱点をもっている。それがこういう事態をもたらしているわけで、やはり、アメリカにも大企業にも、道理と事実にもとづいて、堂々とモノが言える政治をつくる。「そのためには日本共産党にぜひご支持を」と大いに訴えていきたい。