2010年6月16日(水)「しんぶん赤旗」

市田書記局長の代表質問

参院本会議


 日本共産党の市田忠義書記局長が15日、参院本会議で行った代表質問は次の通りです。


写真

(写真)代表質問する市田忠義書記局長=15日、参院本会議

 私は、日本共産党を代表して菅総理に質問します。

口蹄疫問題

国の責任で防疫措置講じ畜産農家守り抜く支援を

 口蹄(こうてい)疫の拡大は、南九州はもちろん、日本の畜産業、国民の食料にも大きな影響を与える重要問題です。国が全面的に責任を持って徹底的な防疫措置を講ずることを求めます。同時に、被害を受けた畜産農家をなんとしても守りぬかなければなりません。その意思を政府が明確に示すことが急がれます。そうしてこそ、被害の拡大の防止に農家のみなさんの協力も得られ、日本の畜産業の再生への道も開かれます。そのために最低必要なことは、(1)被害農家への被害の全額補償と生活支援、(2)大規模経営農家の従業員の雇用保障、(3)新たに家畜を導入するための資金および、家畜が販売できるまでに育つ間の直接支援など、従来型の融資にとどまらず直接支援の道を示すことが必要です。特措法の見直しも含めて、早急に方針を示すべきではありませんか。

政治とカネ

何の説明ないままの辞任 民主党ぐるみの疑惑隠しか

 さて、菅内閣は、鳩山前首相の突然の辞任によって発足しました。あなたはこの事態を「挫折」とよび、その原因が、「政治とカネ」の問題と、普天間移設をめぐる混乱にあり責任を痛感していると述べられました。

 まず「政治とカネ」の問題についてです。鳩山前首相は裁判が終われば「資金の使い道について説明する」と、再三、国会で答弁してきたのに、何の説明もしないまま辞任されました。総理はそれでけじめが完全についたと考えておられるのですか。

 小沢前幹事長は「法的には問題ない」の一点張りで、国民が等しく疑問を抱いた土地購入資金の出所について、国会の場ではただの一言も説明していません。辞任がなんのけじめにもならないこと、それは、昨年、代表辞任で説明責任を逃れた小沢氏を幹事長にすえたことからも民主党自身が証明していることです。それを、今回また同じことを許すのですか、もしそうなら、民主党の党ぐるみの疑惑隠しと言われても仕方ありません。「国会のことは国会で決めていただきたい」と逃げるのではなくて、小沢氏に対して、総理の責任で、国会の場において事実を解明し、政治的道義的責任を明らかにするよう指示すべきではありませんか。

普天間基地

その場その場で変わる言動 どれを信用したらいいのか

 次に、沖縄の普天間基地問題についてです。

 沖縄県民の総意と自らの公約を踏みにじった鳩山前総理の責任は重大ですが、副総理として共同の責任を負っていたあなたの口からは一言の謝罪もありませんでした。

 それどころか総理は、いの一番にアメリカのオバマ大統領と電話会談を行い、普天間基地の辺野古への県内たらい回しの「合意を踏まえ、しっかり取り組んでいきたい」という決意を述べました。これは、あなたが混乱の責任を痛感した相手は、沖縄県民や日本国民ではなくアメリカ大統領だったということのなによりの証左ではありませんか。

 総理は、昨日の衆院本会議で、かつて民主党幹事長・代表代行だったときの自らの言動、「海兵隊は即座に米国に戻ってもらっていい」「海兵隊は抑止力とは関係ない」を、わが党の志位委員長に問われて、過去にいろいろ言っても、変わるのは政治家として当然だとの趣旨の答弁をされました。開き直りもはなはだしいではありませんか。あなたには一片の誠実さもないといわなければなりません。その場その場で変わるあなたの言動のどれを国民は信用したらいいのか。

 普天間基地の辺野古移設に反対する声は県民の84%に達しています。

 沖縄県民、日本国民の期待にこたえていま政治がやるべきこと、それは、普天間基地の無条件撤去を求めること、そしてその機能をアメリカのどこに持っていくかはアメリカが自由に決めればよいことと、真正面から堂々とアメリカに通告し、交渉することではありませんか。

後期高齢者医療制度

自分の言動に責任持つなら先送りでなく直ちに廃止を

 総理は、鳩山内閣が後期高齢者医療制度を廃止するという公約を投げ捨てたことへの責任にはなにひとつ触れられませんでした。あなたはかつてこの制度について、「75歳で差別するような制度は、断固として廃止しなければならない」と述べられていました。政府が廃止を先送りした間にも、75歳になった人が次々にこの制度に移行させられ、保険料も引き上げられました。あなたが自分の言動に責任をもつのなら、先送りではなく、直ちに廃止の措置に踏み切るべきではありませんか。

生活保護 老齢加算 

福岡高裁判決を受け止め上告断念し復活するべきだ

 違憲訴訟の和解に応じた障害者団体との約束はどうなったのか。障害者の声を無視し、応益負担の原則を残した民主・自民・公明による法案は撤回すべきではありませんか。

 昨日福岡高裁で、生活保護の老齢加算廃止は不当だとの判断が示されました。総理はこれを謙虚に受け止めて、上告を断念し、老齢加算の復活をすべきだと思いますがいかがですか。

税と財政

能力に応じて払うのが原則 消費税引き上げは絶対反対

 最後に、税と財政についてです。

 総理は、財政の危機的状況を改善するために「税制の抜本的改革に着手することが不可避」だと述べられました。

 財政の危機というならやるべきことはいくらもあります。5兆円にもおよぶ軍事費をまず削減すべきです。民主党政権で、過去最大の3370億円にまでふくれあがった米軍への「思いやり予算」やグアム移転費などは撤廃すべきです。

 歳入についてはどうか。株式を大量に持っているだけで巨額の所得を得ている大資産家は、法律で定められた税金の半分を免除されています。この免除をなくすだけでもいわゆる「事業仕分け」により生み出されたのと同じくらいの税収は確保できるではありませんか。

 大企業は、「日本の法人税は高すぎる」という大合唱の陰で、研究開発減税、外国税額控除、受取配当金不算入などさまざまな大企業優遇税制を享受しています。いま大企業の手元には、60兆円を超える「空前のカネあまり」現象さえ起きています。税制改革というなら、こうした大企業優遇税制こそ廃止すべきです。これこそ税制改革の本丸であるべきだと思いますが、いかがですか。

 ところが、日本経団連は法人税の引き下げを求め、直嶋経済産業大臣も法人税の15%削減、来年から5%削減をと打ち出しました。これによる減収はどうして埋めるつもりなのですか。大企業への減税によって景気が良くなり税収が増えるという夢物語はもはや通用しません。この10年間の大企業減税の結果は、内部留保が87兆円もふえたように、大企業のふところはおおいに豊かにしたけれども、国民のくらしも日本の経済も先進国中最低水準に落ち込ませてしまったのではありませんか。

 消費税は、年収200万円に満たないワーキングプア、生活保護世帯、国保・介護・後期高齢者など保険料の軒並み引き上げで手取りがいよいよ少なくなった年金生活者からも有無を言わせず税金を取り上げるものです。その引き上げがどれだけ生活を破壊するか、総理には想像できないのでしょうか。

 総理は、自民党の消費税増税を含む「財政健全化責任法案」に呼応して、「財政健全化の緊要性を認める超党派の議員」による「財政健全化検討会議」を提起されました。これは、「消費税増税大連立」をめざすものではないのかというのが多くの国民の疑念ではないでしょうか。

 「税金は負担能力に応じて払う」、これが原則です。

 わが党は、国民の暮らしを破壊し、日本経済の危機をいっそう加速する、社会保障とはもっとも対極にある消費税増税には絶対に反対であることを明らかにして質問を終わります。





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