2010年6月28日(月)「しんぶん赤旗」
テレビ討論 市田書記局長の発言
消費増税やめ「二つの聖域」にメスを
日本共産党の市田忠義書記局長は27日放送のフジテレビ系番組「新報道2001」、NHK番組「参院選特集」の各党討論に連続して出席し、参院選の一大争点になっている消費税増税問題などについて討論しました。討論から浮かび上がったものは―。
民主党政権の評価
「政治変えたい」の国民の願い 公約を破り期待を裏切る
「参院選特集」では民主党政権の評価を各党がそれぞれ述べました。市田書記局長は次のように述べました。
市田 去年の総選挙では、暮らしと平和を壊してきた自公政権に国民が審判を下しました。「政治を変えてほしい」という願いの反映だったと思うんです。民主党政権に期待をたくした人が多かった。(しかし)この9カ月間で、「期待を裏切られた」と、「公約破りもはなはだしい」という思いを多くの人が持っていると思うんです。普天間(基地問題)については、自公案と同じところに戻った。ある意味で、それ以上にひどい。訓練施設を全国にばらまくわけですから。
「政治とカネ」の問題でも、いっさい道義的責任を国会の中で明らかにすることをやらなかった。何よりも暮らしの問題で、これほど「使い捨て労働」がまん延するときに派遣法の問題でも、国会で改正案がだされたけれども、事実上、製造業への派遣もそのままです。
障害者自立支援法についても、1割負担(応益負担)をやめると言っていたのに先延ばしした。後期高齢者医療制度も、自らただちに廃止するといいながら、先延ばしをするなど期待を裏切られた。それらへの不信感が相当募っているんじゃないか、と思います。
民主党の枝野幸男幹事長は、「試行錯誤の中でご迷惑をかけたことはあったが、『政権交代が良かった』となるためにも、この選挙で勝たせていただきたい」などと開き直りました。
自民党の茂木敏充幹事長代理は、「言っていることとやっていることが違う」、公明党の井上義久幹事長は、「政治とカネ、高速無料化」など「何一つ進展していない」と述べましたが、政権時代の自ら行った政治への反省はないままでした。
「脱官僚・政治主導」
大企業と米国にモノ言えない政治の中身が問われている
民主党政権の「脱官僚・政治主導」について、みんなの党の江田憲司幹事長は「完全に捨ててしまった」と批判。自民党の茂木氏は、「結局ムダの削減はできていない。だから増税にたよる」と非難しました。これに対し、市田氏は次のように述べました。
市田 私は、官僚に依存するか排除するかということより、政治の中身が問われていると思うんですね。
たとえば、大企業に減税して、その財源づくりのために消費税の10%への増税を打ち出された。それから、普天間基地の問題では、沖縄の県民の総意よりもアメリカの意向を尊重するというね。私は自公政権時代に戻ったんじゃないかなと思う。
アメリカと大企業にモノが言えないという政治。やっぱり政治主導というのは、政治の力で、そういうことを変えていく。問われているのはその中身です。
民主党の枝野氏は、「事業仕分けなどは、(自公政権時代には)霞が関の抵抗でできなかったこと」だと“実績”を強調しました。
消費税10%
平均世帯で34万円の負担 景気は落ち込み税収も減る
「新報道2001」では、経済成長のための税制「改革」がテーマになりました。
みんなの党の江田憲司幹事長は、「いきなり税負担でなく、まず成長させて税収を上げることを考えるべきだ」と発言。自民党の石破茂政調会長も「法人税を下げるということを含めて、経済を成長させる税制『改革』とは何かという議論をしなければだめだ」と述べました。
市田氏は、法人税減税とセットで打ち出されている消費税増税について次のように述べました。
市田 今の消費税増税の考え方は財政再建のためでも社会保障のためでもなくて、法人税減税、大企業減税とセットで出てきているところに特徴があるんですよ。これは、大企業減税の財源づくりのための消費税増税であり、暮らしを破壊するものです。
消費税を10%に増税したら、平均世帯で年間にしたら34万円もの負担になる。これでは消費は冷え込むし、暮らしは大変になります。景気は落ち込み、経済も成長が止まって、税収も減ることになる。暮らしを応援してこそ景気も経済もよくなる。
「参院選特集」では菅政権が「強い経済、強い財政、強い社会保障」の手段として消費税増税を主張していることが議論に。市田氏は次のように述べました。
市田 「強い社会保障」とおっしゃるが、自公政権時代に2200億円ずつ社会保障費が削減され、医療も介護もずたずたにされた。その「傷跡」を治すのかと思ったら、民主党政権は、医療費の窓口負担軽減にも手をつけようとされないし、後期高齢者医療制度の廃止も先送りです。本当に「強い社会保障」というのならそこに立つべきです。
いま言われている消費税増税は、財政再建のためでも社会保障のためでもない。いま大企業は本当に金余り現象で内部留保が229兆円になっているわけで、(これらを)社会に還元させることが大事なときに、法人税は減税、消費税は増税というのは本末転倒しています。
日本経済どうする
暮らし・中小企業を応援し国民の懐温め土台から強く
「参院選特集」では財源論とあわせ、日本経済をどう立て直すかが議論になりました。民主党の枝野幸男幹事長は「少子高齢化のなかで2〜3%ぐらいの安定成長を確保する」などと発言。自民党の茂木敏充幹事長代理は、「民主党は家計の直接支援でうまくいくと言ったがうまくいってない」と述べ、大企業応援政治への逆戻りを主張しました。市田氏は次のように述べました。
市田 橋本内閣のときに(消費税率が)3%から5%に引き上げられ、暮らしは大変になる、景気は落ち込む、経済もどん底になって財政赤字はいっそう深刻になった。経済成長にもつながらない。
やっぱり、雇用は正社員が当たり前で、社会保障ももっと充実させる、中小企業を応援し、大企業の下請け単価たたきなどをやめさせる。国民の懐を温めることによって経済を土台から強くしていく。そうすれば景気もよくなり、経済もよくなって、かえって税収も増えてくると思う。それと逆行することをやろうとされているわけで、本当にいまの現状に合っていないと思います。
茂木氏は、民主党から呼びかけられている「財政再建」の超党派協議について「最初から増税ありきの協議会には入らない」と言うものの、司会から「消費税の引き上げが必要ということははっきりしているのか」と問われると、「それはそうだ。われわれが3月に出した案を民主党が3カ月遅れで出しているだけだ」と述べました。市田氏は次のように述べました。
市田 海の向こうのアメリカが5年間で1兆ドル、90兆円の軍事費を削減すると言っています。それから多国籍企業と大金持ちにまけてやっている税金を増税してむこう10年間で100兆円をつくりだして国民に回そうと(している)。
財源の問題を考えるとき「二つの聖域」にメスを入れるという姿勢に立つ必要があると思うんです。
なにより5兆円の軍事費に全く手付かずです。せめてグアム島にアメリカの基地をつくってやるための米軍再編経費だとか、条約上義務付けられていない「思いやり予算」、いま3370億円です。こういうのはばっさり削る。
そして、まけすぎてやっている大金持ち(減税を元に戻す)。例えばゴーンさん(日産CEO=最高経営責任者)の所得は8億9000万円です。しかし、所得税の最高税率は下げたままです。それから証券優遇税制。本来20%だったのにいま半分の10%です。せめて20%本則どおりきちんと払ってもらうだけでも事業仕分けで出たお金よりもたくさん出てきますよ。
大企業・大資産家優遇税制にメスを入れる。軍事費にメスを入れる。財源といえば消費税しか頭に浮かばないというのは全然ダメだといっておきたい。
比例定数の削減
“身を削る”でなく民意を削る 政党助成金こそ「仕分け」を
「参院選特集」では、「民主党さんは国会議員を80人減らすとおっしゃったけど1人も減らしていない」(みんなの党・江田憲司幹事長)など、野党が民主党政権に国会議員の定数削減の実行を求める場面も見られました。
民主党の枝野氏は「衆院議員の定数削減、早期に実現したい」と述べました。市田氏は次のように指摘しました。
市田 (衆院の)比例定数を80人削減するというのは、(国会議員が)身を削るというよりも、民意を削るということになると思う。
秘書の経費も含めて、1人の国会議員にかかるお金は約7000万円です。80人分削ると56億円。一方で、政党助成金は320億円ですが、これを削ったら何と450人分の国会議員を削るのと同じくらいになる。
事業仕分けというなら、政党助成金も対象にするのか。私は、政党助成金は全部、返上すべきだと思うんです。
公務員削減論
本来削るべきムダにメス入れ必要な行政サービスは拡充こそ
「新報道2001」では、公務員の人件費削減が話題になりました。公明党の井上義久幹事長は「(民主党のマニフェストに)人件費2割削減とあるが、工程表を示していない」と発言。自民党の石破氏も「本当に2割削減できるのか」と民主党に迫りました。
民主党の枝野氏は「9カ月かけて公務員の実態を調べた。これから工程表をつくって削減を進めていく」と応じました。これに対し、市田氏は次のように語りました。
市田 無駄を削るというとすぐに公務員削減という話になるが、国民に必要な行政サービスを、どう提供するか(ということが重要だ)。
確かに公務員に無駄もあるが、必要なところもある。十把一からげに何でもかんでも公務員が悪いんだというバッシングは正しくない。
たとえば公安調査庁の職員は弾圧・スパイ機関だが、これには中小企業庁の7倍も人がいるわけです。これらはなくすべきです。一方、下請け単価たたきがやられているときに、中小企業庁の職員や下請け検査官を増やすなど、増員が必要なところもある。公務員のことしかいわないが、たとえば、1メートルつくるのに1億円かかるような東京外郭環状道路、あるいは政党助成金の320億円にメスを入れるのかどうか。
何よりも年間5兆円もかかる軍事費、とりわけ「思いやり予算」や米軍再編経費の3370億円は事業仕分けの対象にも全然なっていないんですよ。
本来削るべき無駄にきちんとメスをいれる。公務員も、削るべきところもあるが、必要な部分は増員すべきだし、ただ公務員を減らせばいいという考え方はおかしい。