2010年6月29日(火)「しんぶん赤旗」
主張
G8/G20サミット
各国事情を反映した玉虫合意
カナダで開かれた主要8カ国(G8)と20カ国・地域(G20)の両首脳会議(サミット)は、米国発の金融危機に対処するために各国が行ってきた財政刺激を見直す「出口戦略」などをめぐって、一致した方針を示すことができませんでした。冷え込んだ世界経済が新興国を成長エンジンとして徐々に落ち着きをみせる一方、ユーロ危機という新たな難問が表面化し、各国事情の違いが色濃く投影された格好です。
「健全財政」と「内需拡大」
G20は、危機に対処するには主要国と新興国との協力が不可欠との認識から、G8に代わって世界経済を議論する場として生まれました。4回目の今回は初めてG8との連続開催です。一方のG8は、政治問題が国連安保理を主舞台とし、経済問題が議論の焦点となって本来取り組むべき温暖化対策などが後景に下がったことから、存在感が一段と薄くなりました。
G20宣言は財政健全化の必要を認め、先進国の期限付きでの財政赤字削減目標に踏み込みました。ギリシャの財政悪化を機にしたユーロ危機が欧州統合にも不安をもたらすなか、英独仏なども財政赤字を国内総生産(GDP)の3%内に抑える欧州連合(EU)の基準達成を目指し、緊縮政策に踏み出したことを反映しています。
半面、宣言は緊縮政策が世界経済の回復に与えるリスクも指摘しました。輸出拡大による雇用確保など景気対策を重視する米国にとっては、各国の内需の弱さが懸念の種です。欧米の事情をそれぞれ反映したかたちの宣言は、各国がそれぞれの事情に応じて政策を進めることを確認しただけです。
日本について宣言は、成長戦略と財政再建という計画を「歓迎する」としました。菅直人首相は「各国にも参考にしてもらいたい」と述べました。しかし、宣言は状況の違う日本を同列に扱わなかっただけで、増税しても景気回復できるという菅政権の主張を支持したわけではありません。
消費税を引き上げる菅政権の方針は、広範な国民から購買力を奪い、消費を冷え込ませ、景気をさらに悪化させるものです。それが大企業向け法人税減税の穴埋めとして行われることは、大企業による輸出主導の日本経済のゆがみを強め、世界的な経済不均衡も拡大させることになります。
欧州諸国でも、日本の消費税にあたる付加価値税の引き上げなど緊縮政策が、とりわけ低所得者に痛みを押し付けるものとして、批判や反対が起きています。
今回のG20は金融規制でもみるべき前進を遂げませんでした。米国と欧州それぞれで金融規制の動きが進んでいるときだけに残念な結果です。菅首相が銀行規制の強化に反対したことも影響しています。11月にソウルで開かれる次回G20では前進が求められます。
軍事費削減こそ
菅首相はG20直後に開かれたオバマ米大統領との初の首脳会談で、沖縄への新基地建設を確認し、日米同盟を深化させると表明しました。財政再建を言いながら、米軍への思いやり予算や新基地建設、グアムでの米軍基地建設費と大盤振る舞いし、軍事費を膨張させています。一方、欧州諸国は軍事費を聖域にせず、なたを振るおうとしています。菅首相はこれこそ欧州から学ぶべきです。