2010年6月30日(水)「しんぶん赤旗」

政府が新年金制度の基本原則

「安定財源」確保が前提


 政府の「新年金制度に関する検討会議」(議長・菅直人首相)は29日、関係閣僚による会合を開き、新しい年金制度の基本原則として7項目を決めました。「将来にわたり安定的な財源を確保する」とし、制度の骨格として▽全国民が同じ年金制度に加入する(年金一元化)▽最低保障年金と所得比例年金の導入▽保険料と税金の一体的で確実な徴収―などを示しています。

 しかし、具体的な制度の中身や最低保障年金の額、新制度実施までの道筋などは示されていません。

 民主党は昨年の総選挙では、月額7万円以上の「消費税を財源とする」最低保障年金創設を掲げ、消費税5%分を全額財源にあてるとしていました。

 今回の基本原則に消費税という言葉はありませんが、参院選マニフェストでは「年金制度の一元化、月額7万円の最低保障年金を実現するためにも、税制の抜本改革を実施」としています。菅首相は、税制抜本改革として消費税の10%への税率アップを打ち出しており、消費税引き上げが新制度実施の前提になっています。

 2013年中の関連法案成立を目指し、超党派の議論を呼びかける方針です。


年金制度の基本原則

 (1)年金一元化(全国民が同じ一つの制度に加入)

 (2)最低保障(最低限の年金額の保障)

 (3)負担と給付の明確化(負担と給付の関係が明確な仕組み)

 (4)持続可能(将来にわたってだれもが負担でき、安定的財源を確保)

 (5)「消えない年金」(年金記録の確実な管理と加入者本人がチェックできる体制)

 (6)未納・未加入ゼロ(年金保険料の確実な徴収により、無年金者をなくす)

 (7)国民的議論(国民的な議論のもとに制度設計)


解説

政府の新年金制度案

大企業は負担軽く

 民主党政権の新制度案の具体的中身はあいまいですが、そのなかでも大企業に有利という特徴が見えます。

 第一に、最低保障年金の財源に消費税が考えられていることです。現在、サラリーマンの年金保険料は事業主が半分負担しています。一方、大企業は消費税を価格に転嫁できるので払っていません。最低保障年金を全額、消費税でまかなえば大企業は、その分の保険料負担を免れます。

 最低保障年金は経済的弱者を支えるものです。その財源に、所得の低い人ほど負担の重い消費税をあてるのは矛盾しています。さらに最低保障年金の水準を上げようと思えば、国民は消費税増税を迫られることになります。

 年金一元化も問題です。保険料の半分を事業主が負担する厚生年金や共済と、事業主負担がない国民年金をどう一元化するのか。

 国民年金の保険料に事業主負担分を上乗せして徴収すれば大幅な負担増になり、払えない人が大量に生まれます。一方、国民年金にあわせて厚生年金の事業主負担をなくせば、厚生年金の受給額は大幅に低下します。ただ、企業は保険料負担を免れるので、財界はかねてからこれを求めています。民主党の「一元化」は、そこをどうするかも、なぜ一元化しなければならないかも、不明です。

 いま年金に問われている問題は、年金未納者の増加による空洞化や無年金・低年金の打開です。民主党の最低保障年金案では、制度の完成は40年後で、目の前の無年金・低年金の問題を解決できません。政府の示した基本原則は、「保険料の確実な徴収により、無年金をなくす」とするだけです。国民の切実な問題にはこたえていません。(西沢亨子)





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