2010年7月5日(月)「しんぶん赤旗」
財界いいなりの消費税増税許さない
テレビ党首討論 志位委員長の発言
NHK「参院選特集」
日本共産党の志位和夫委員長は4日のNHK番組「参院選特集」に出席し、民主、自民、公明、国民新、社民、みんなの党、たちあがれ日本、新党改革の各党首らと討論しました。司会は影山日出夫解説委員。
消費税増税
大企業減税がセット、社会保障にも財政再建にも回らない
大きな争点になっている消費税問題について、菅直人首相は「強い経済、財政、社会保障を一体的に実現するなかの一つとして消費税についてふれた」と発言。自民党の谷垣禎一総裁は「予算を組み替えれば簡単に出てくるのが前提だったはず」、公明党の山口那津男代表も「負担を求めるところだけ一緒に議論しようといってもだめだ」と発言。これに対し菅氏は「自公政権がやってきたことについて説明もないままいわれるのは不公平」などとのべました。
国民新党の亀井静香代表は「総理も消費税を今やるなんておっしゃっていない」とかばいだてし、社民党の福島瑞穂党首は「消費税というけれどなぜ富裕層に対する減税策を元に戻すといわないのか」とのべました。
志位氏は次のようにのべました。
志位 菅さんは、今度の消費税の税率の引き上げについて、「福祉のためだ」、あるいは「財政再建のためだ」とおっしゃるんですけれども、民主党のマニフェストには、「強い経済」という項目があって、その目玉として法人税率引き下げと書いてある。「強い財政」の目玉として消費税の増税が書いてある。すなわち消費税の増税というのは、大企業の法人税の引き下げとセットで押し出されている。ここが重大だと思うんです。
財界は、いま法人税は40%から25%まで4割下げろといっています。経済産業省が出した文書でも、25%という同じ数字が書いてある。ここまで下げますと、2007年度のリーマン・ショック前の実績で計算しますと、法人税収に9兆円の穴があくんですよ。
菅さんは、今は(法人税収が)少ないというけれども、菅さんたちは3%の(経済)成長を目指すわけですから、そのときには同じ穴があくわけです、9兆円の穴が。
そうして消費税5%を上げたとしても、実際には財源になるのは11兆円です。
結局、増税しても、それは大企業の減税に消えてしまって、社会保障の財源にも財政再建にもならない。ですから、こういうやり方には絶対反対というのが私たちの立場です。
法人税
日本は高くない、三大銀行は10年以上1円も払ってない
これに対し菅氏は、「課税ベースを広げて景気が回復すれば法人税収を変えないでいることは十分可能」と指摘。法人税減税についても「法人税は国際的な競争の問題で日本が突出している」として引き下げる考えを改めて表明しました。
志位氏は次のように反論しました。
志位 民主党がいう課税ベースの拡大とは、租税特別措置の見直しのことだと思います。しかし、たとえば(民主党は)研究開発減税などは恒久化するといっていますから、どうカウントしても数千億円程度にしかなりませんよ。さっき言った9兆円の穴はとても埋まらない。
それから「国際競争力」ともいうけれど、日本の法人税はけっして高くありません。日本経団連の幹部が“日本の法人税は見かけほど高くない、表面税率は高いけどいろいろな政策減税があるので高くない”と(いっている)。
実際、いろいろな優遇税制があって、(大企業の)上位100社でみますと(法人税の負担率は)40%もありません。30%です。ソニーは12%、パナソニックは17%、三大メガバンクに至ってはこの10年間以上、法人税を1円も払っていない。こういう実態があるんです。
これを、「国際競争力」だと言ってどんどん下げるのが当たり前というのは、財界の論理なんですよ。これに菅さんが屈したというのが、いまの現状です。
ギリシャの財政破たん
原因は法人税減税と消費税増税、菅首相がやろうとしている路線
司会の影山氏は「消費税引き上げと財政再建が両立するのか」と質問。菅氏は、ギリシャの財政破たんをあげて、「共産党は(国債を)いくら増やしても大丈夫なことをいわれておられますが」などと日本共産党を攻撃しました。
これに対し志位氏は次のように批判しました。
志位 事実をねじまげる発言はやめてほしい。借金を増やしてもいいなんてどこでもいってませんよ。
私たちがギリシャの問題で指摘したのは、ギリシャの財政破たんというのは日本とは状況が違うと(いうことです)。ギリシャでは、7割が外国人投資家の借金だが、日本の場合は9割が国内です。同列には扱えませんよといっている。
なぜギリシャで財政破たんが起こったかというと、この10年間で法人税を40%から24%に下げて税収に大穴をあけてしまった。消費税のほうは18%から23%に5%上げた。
つまり菅さんがやろうとしていることを10年前から先取りしてやったのが、ギリシャなんですよ。“ギリシャのようになる”っていうけど、“ギリシャのようにしようとしている”のが、菅さんの路線だ。
私たちはそういうことを批判したわけであり、今の巨額の財政赤字については、5兆円の軍事費にメスを入れる。行き過ぎた大企業・大資産家への減税にメスを入れる。こういうことできちんと再建していく道を私たちは責任もって提示しています。
財政再建と経済成長
大企業応援から暮らし応援に切り替え、内需を活発に
菅氏は「この20年間の経済財政運営が間違っていた」としたものの、「法人税も下げるほうが景気にプラスという意見も強い」と発言。
各党は「企業ものびないといけない」(谷垣氏)、「産業振興が大事」(亀井氏)、「経済成長と歳出削減が車の両輪」(山口氏)、「デフレギャップ30兆円を解消するには日本銀行に30兆円の資金を供給してもらう必要がある」(みんなの党・渡辺喜美代表)とのべました。
志位氏は次のようにのべました。
志位 財政再建と経済成長という問題を考えるさい、この10年間の日本経済の教訓というのがあると思うんです。
菅さんのおっしゃったように10年間、GDP(国内総生産)はまったく伸びなかった。自公政権がやったことは、大企業に対しては年間5兆円の減税をやりました。そして、庶民に対しては定率減税の廃止など年間6兆円の増税をやった。その結果、大企業は利益を2倍以上に増やした。しかし、働く人の賃金は総額で1割減った。GDPは伸びない。こういう状況になったわけです。大企業は強くなったけれども、国民は貧しくなり、成長が止まってしまった。そのなかで税収も落ち込んで、経済成長も財政再建も共倒れになったというのがこの10年なんですよ。
じゃあ、どうやって両立させるかといったら、大企業応援から暮らし応援に切り替える。たとえば、「使い捨て」労働をなくして、派遣法は“抜け穴”なしの抜本改正をやって、「雇用は正社員が当たり前」にする。大企業による下請けいじめをやめさせて公正な取引のルールをつくる。後期高齢者医療制度は4年後に先送りじゃなくてただちに撤廃する。こういう暮らし応援に切り替えていく。そのことによって内需、家計、これを活発にして経済を健全な成長の軌道に乗せていく。これがやはり、本当の意味での暮らし応援の「経済成長戦略」だと私たちはいっております。
10年間成長止まった日本経済
「大企業減税、消費税増税」は、自・公政権と同じ道
司会の影山氏は、「(民主党は)成長戦略のなかで法人税の税率を主要国並みに引き下げるということを明記されました。一方で、消費税は将来的に上げていく、法人税は下げると。これは、民主党政権が、家計重視から企業重視の方向にかじをきったということなんでしょうか」と問いかけました。
菅氏は「法人税だけを議論するのでも消費税だけ議論するのでもなく、全体の議論を」などとごまかしました。
志位氏は次のように指摘しました。
志位 結局、きょう菅さんと議論して明りょうになったのは、消費税は上げるけれども、法人税は下げると。このやり方こそ、この10年間の、あるいは20年間の経済の長期停滞、衰退、これを招いてきたやり方だと思うんですよ。
この10年間成長が止まった。これはやはり、大企業には減税をやって庶民には増税をやる。あるいは、労働法制の規制緩和をやり、これが本当に社会を荒廃させ、家計と内需を壊して、(経済が)成長しなくなったわけです。それと同じやり方を菅さんはやろうとしている。すなわち、大企業に減税して消費税を増税するという、自公政権がやってきたやり方とおんなじじゃないですか。
これは「第三の道」でもなんでもない。自公政権がやってきた「第一の道」と「第二の道」を足したようなものですよ。それと同じ道で焼き直しだと思います。
テレビ朝日系番組
菅首相の党首討論欠席
この10年で初めて、理屈が立たない
4日放映のテレビ朝日系番組「サンデー・フロントライン」には、日本共産党の志位和夫委員長をはじめ7党の党首(民主党は幹事長)が出席し、討論しました。
冒頭、司会の小宮悦子氏は、菅直人首相が「各テレビ局への番組出演は1回だけ」との理由で同番組の出席を断ったことについて「とっても残念」と発言。代理の枝野幸男民主党幹事長が「逃げている訳ではない」などと述べてスタジオが騒然となり、志位氏は次のように述べました。
志位 私はこの10年、党首討論会に参加していますが、小泉(純一郎)さんのときも、安倍(晋三)さんのときも、麻生(太郎)さんのときも、こんなふうに選挙戦本番に入って、与党第1党の党首が出ないということはなかったですよ、一度も。
「各局1回ずつ」といいますが、小泉さんにしても、みんな複数回やったんです。これが当たり前だった。「1回ずつ」ということで討論を拒否する。これは理屈が立たない。
民主党政権の総括
数々の公約違反の大もとに米国と財界いいなり政治
消費税増税をめぐる論争の後、司会者やコメンテーターから「9カ月の民主党政治はどういうことだったのか」との問題提起がされ、志位氏は次のように語りました。
志位 私は、小宮さんや(「朝日」編集委員の)星(浩)さんがおっしゃったようにこの1年間の総括は大事だと思うんですよね。
私たちは、政権交代があったときには、国民のみなさんの政治を変えてほしいという願いを反映して、(民主党政権も)いくつかの前向きの政策を出したと思うんですよ。例えば普天間基地は「県内移設はしない」「国外、最低でも県外」と。しかし、(民主党政権は)辺野古に新基地をつくるという日米合意を結んでしまった。後期高齢者医療制度はただちに廃止というのが公約だったのに、4年後に先送りだというふうになる。あるいは、労働者派遣法の問題でも結局、「抜け穴」だらけのものになってしまう(司会「そういったことをすべて総括する選挙だということですね」)。内政で日本経団連の圧力がかかってくると、もう消費税の問題、かじを切ってしまう。あるいは、日米関係ではアメリカの言いなりで、「海兵隊は抑止力ではない」と言っていた自分の考えを捨てて「抑止力だ」と。この二つの問題があると思うんですね。
財源問題
5兆円の軍事費と、ゆきすぎた大企業・大資産家への減税にメスを
来年度予算編成に向けた財源問題が議論となり、民主党の枝野氏が「埋蔵金」や「事業仕分け」で歳出にメスを入れれば財源をつくれると述べたのに対し、志位氏は次のように発言しました。
志位 私は、まさに政治が手をつける場所があると思うんですよ。たとえば5兆円の軍事費の問題です。とくに米軍向けの予算です。「思いやり」予算、あるいはグアム移転費用。これは、民主党は野党のときに反対してきたんですよ。(「思いやり」予算の)特別協定にも、グアム協定にも反対してきた。ところが、これが民主党政権のもとで3370億円まで膨れ上がっているわけですよ。やはり、こういうものは全廃して、軍事費でも1兆円ぐらいは全体で切れます。
それから、ゆきすぎた大企業・大資産家への減税の見直し。とくに、証券優遇税制というものがあります。これは、株の配当や譲渡で得られた所得に対して税金が10%しかかかっていないわけですよ。本則20%にすぐに戻すべきですし、富裕層は30%にすべきです。アメリカにしてもイギリスにしても(富裕層に対する課税は)大体3割から4割が世界標準ですから、大金持ちには相応の負担をしてもらう。
この二つの部分にきちんとメスを入れないと、結局、もう財源は消費税しかないという議論にすぐもっていくわけですね。
フジテレビ系番組
消費税増税の震源地
日本経団連が4月に出した方針書にこたえた動き
4日放映のフジテレビ系番組「新報道2001」では、8党党首が消費税増税問題を中心に討論しました。
このなかで菅直人首相は「自民党が10%と提案したので、(民主党は)議論の上で参考にしたいと言った。マニフェストでは超党派で話しあおうと言っている。ぶれてもいないし後退もしていない」と発言。自民党の谷垣禎一総裁も「総理としてきちんと問題提起されたのは率直に評価する」など、消費税増税で応じる姿勢をみせました。
日本共産党の志位和夫委員長は、いまの消費税増税が法人税減税の穴埋めで持ち出されていることや、民主、自民などが持ち出している「日本の法人税は高い」との言い分に反論したうえで、消費税問題について次のようにのべました。
志位 今回の消費税増税議論の震源地は、日本経団連だと思います。4月に「成長戦略2010」という文書を出して、消費税率を一刻も早く上げて、法人税を下げろと、セットで押し出したわけですね。それに応えての(菅政権の)動きだと。
実は、1989年に消費税を導入したときにも、同じやり方でやられた。あの時も「福祉のため」といわれた。しかし福祉は良くなりませんでした。
22年間で、消費税の税収総額は224兆円。しかし同じ時期に、法人3税で208兆円の減収があった。
結局、国民が額に汗して納めた消費税は大企業減税の穴埋めに使われた。これをもう1回繰り返そうというのが、菅さんのやろうとしていることだと思います。