2010年7月7日(水)「しんぶん赤旗」
B型肝炎訴訟 国が予防接種の証明強要
札幌地裁和解協議 原告「救済 程遠い」
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集団予防接種の注射器使い回しでB型肝炎ウイルスに感染したとして、患者らが国に損害賠償を求めている北海道B型肝炎訴訟の第1回和解協議が6日、札幌地裁(石橋俊一裁判長)で開かれました。B型肝炎訴訟の和解協議は全国で初。
この日の協議で国側は、救済対象者の認定要件として、母子手帳の提出か「それに代わる証拠」で予防接種を受けたことを証明するよう求めました。原告側は「予防接種は国民全員に受ける義務があり、証明は不要」と反論しました。
全国原告・弁護団は国側の対応について「不当な証明負担を課すもの」「被害者救済には程遠い」と厳しく批判する見解を発表しました。
北海道原告団の高橋朋己代表は「国はいったい、いつまで解決を先延ばしするつもりなのか。私たちには本当に時間がないのです。政府は責任を果たしてほしい」と怒りをあらわにしました。
全国原告団の谷口三枝子代表は「菅首相は最小不幸社会を実現すると言っていますが、患者は国の誤りで地獄の苦しみを味わっているのです」と早期の救済を求めました。
解説
加害責任の自覚なし
国の案は、予防接種を受けたかどうかの認定について「母子手帳の提示」か、「母子手帳」に代わる予防接種を受けた記録の提示を求めました。
予防接種を受けたかどうかの記録は、予防接種法で定められていて、「母子手帳」のほか、地方自治体が「接種台帳」を作ることになっていました。しかし、保存期間は5年。廃棄されて残っていません。国の主張は「無いものを出せ」という理不尽な要求です。
戦後の集団予防接種は、1948年に制定された予防接種法により、受けないと3千円の罰則が科せられ実施されました。
原告側は、幼児期に日本に住んでいれば集団予防接種を受けており、当時日本に住んでいたことが明確なら、「母子手帳」がなくても救済することを要求しています。
そもそも集団予防接種によるB型肝炎被害の問題は、2006年6月の最高裁判決で国の加害責任が断罪されている問題です。
加害責任を自覚せずに、新たに無理難題を持ち出して解決を引き延ばすことは許されません。(菅野尚夫)