2010年7月8日(木)「しんぶん赤旗」
テレビ朝日系「報道ステーション」
志位委員長の発言
志位和夫委員長は6日、テレビ朝日系番組「報道ステーション」に出演し、司会の古舘伊知郎氏と一色清・朝日新聞編集委員の質問に答えました。
普天間基地問題
――苦しみは移すのでなく、なくすのが政治の責任
古舘 共産党は、「消費税(増税)は断固反対だ。法人税減税で大企業優遇が消費税とバーターになっている」と各地でおっしゃっていますね。それに関して私なりにお聞きしております。もう一つ、沖縄に関してお聞きしたい。
例えば私の中にも魔物が住んでいまして、沖縄に取材に行くと、これは大変だ、今までの沖縄の歴史は、と正直、感じます。ところが帰ってきていろんな忙しさにかまけていると魔物がいまして、自分の痛みを伴わない、気がつくと今までどおり沖縄、何とかしてもらえないのと思ってしまう。現にマスコミもあれだけ騒いでいても、いよいよ選挙となったときに沖縄にスポットを当てていることがここんとこ少ないわけです。こういうことも含めて、志位さんは沖縄問題、まず何から手をつけてどういうふうに共産党として解決していきますか。
志位 選挙中も普天間基地を抱える宜野湾市にいって住民のみなさんとずいぶん話しあう機会があったんです。共通しておっしゃるのは、「こんな苦しみはどこにも移したくない。アメリカに持って帰ってほしい。自分たちはこれだけ苦しんでいるんだから、県内はもとより、本土のどこにも同じ苦しみは味わわせたくない」と。だからアメリカに(普天間基地の)無条件撤去を求めるというのが、宜野湾市民の実に75%なんですよ。ですからこの問題は、苦しみはどこかに移すものではなくて、とりのぞくのが政治の責任です。ですから移設条件なしの撤去ですね。無条件撤去を求めて、アメリカと本腰の交渉が必要だ、と私たちは主張しています。
古舘 ところが、8月いっぱいに工法を決めるのも含めて、とても沖縄は収まるわけはない。
志位 絶対、(沖縄県民は)合意しませんね。
古舘 下手をすると、普天間を固定化することになるとこれも大問題ですからね。
志位 これは普天間(基地)というのはもともと、アメリカの基準でも存在自体が許されない危険な基地なわけで、その固定化は最悪の事態ですから、それはまた、県民は許しませんよ。沖縄は、私は最近、何度もうかがっていますけど、怒りが沸騰点を超えている。絶対に後戻りすることのない、「限界点」を超えているという事態にあるわけですから、本土のわれわれは、自分たちの問題と考えて、問題の解決は、無条件撤去を本気になってアメリカ政府に求めること、ここにあると思います。
米国政府との会談
――問題解決の道をきっぱり伝えた
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古舘 共産党は共産党として活動をしていく。これはもちろんだと思いますが、実際にそれを動かすためには、長きにわたる外務官僚のアメリカへのスタンスとか、政治家の今までのスタンスとか、全部そのあたりを洗っていって、総力戦でアメリカと友好的にぶつかったときに、ことは動くのかなという気もするんですね。
志位 私は5月上旬に初めて訪米しまして……。
古舘 初めての訪米だったんですね。
志位 ええ。初めてのアメリカ訪問だったんですが、訪問前にはルース(駐日米国)大使とも会談し、アメリカでは国務省と会談し、連邦議会の(議員の)みなさんとも会談する機会がありました。その場で、沖縄県民の総意はどこにあるか、どういう歴史があるのか、普天間問題は無条件撤去しか解決の道はないんですと、アメリカ政府にはっきり伝えました。
そうしますと、相手とは立場は違いますよ。でも、はっきりこちらがものを言うと、向こうもはっきり言ってくる。国務省での会談は1時間15分。
古舘 どうはっきり言いました。国務省の高官は。
志位 国務省の高官はやはり「沖縄の海兵隊は抑止力だ」と言いますね。私は、「抑止力といえますか、(沖縄の海兵隊の)行っている先はイラクやアフガンではないか、日本の平和と関係ないじゃないですか」と。激しい議論になるんだけれども、最後に国務省の側は、「立場は違っても、こうした意見交換は有益です。民主主義の基本です。今後も続けましょう」ということをむこうから言ってきて、私は、「その点は同意できます。大いに今後も意見交換をやっていきましょう」ということになりました。
「海兵隊は抑止力」
――この虚構の議論の呪縛にとらわれてはならない
古舘 わかりました。あの情報公開というのはとっても大切だと思いますが、抑止力を言うときに、必ず北朝鮮の脅威や中国の脅威、台湾海峡をはさんでということになるんですが、そこから先の具体的データ、どのくらいの脅威なのか、どういうことが想定されるのかとなると、ある段階からアメリカの軍事機密みたいなことになって、そのあたりをもっと情報公開してもらうよう日本は動いていかないと、いつまでも抑止論ということがあやふやなうちに雲としてかかっている気がするんです。
志位 いま言われた北朝鮮、中台の問題、この問題がすぐに海兵隊の(駐留の)根拠にされるけれども、抑止力というのは、これはいざとなったらその軍事力を使うということが前提になって初めて成り立つ議論なんです。核の抑止もそうですけども。しかし、例えば朝鮮半島で戦争をするのか。中台で戦争をするのか。実際に(戦争が)起こるのかということを具体的な問題として考えたときに、そんなことを考えている国は今、ないですよ。ですから、これはひとつの虚構なんですよ。
実際に海兵隊が動いているのは、さっき言った中東に行っている。普天間の海兵隊だって1年の半分は海外に行っていて、いないわけですよ。日本の平和と関係ない。そこを本当に見て、私たちは抑止力という呪縛(じゅばく)、虚構、これにとらわれちゃならないと思います。鳩山(由紀夫前首相)さんは、そこにとらわれたところから、結局、ああいう「日米合意」で辺野古に移すという、(県民を)裏切る結果になったと思います。
古舘 ある意味では、鳩山前総理が、結果はそうだったけれどもふたは開けましたよね。
志位 それは鳩山さんが開けたというより、沖縄県民が開けたんですよ。
古舘 今までの流れの中で。
志位 ええ。沖縄県民の、ともかく県内移設はだめだという総意がまさに突き動かして新しい局面が開いているというのが現状だと思います。
民主党政権への対応
――「米国、財界に、国民の立場に立ってモノが言える党」が必要
一色 共産党は当初、民主党政権に対して建設的野党になるんだと言っておられました。それは協力するべきところは協力するという意味だったと思うんですけれど、あまりそういうふうな光景はみられなかった。みられてないんですけど、建設的野党になるというのは、もう捨てたんでしょうか。
志位 これは、去年の鳩山政権誕生当初は、「政治を変えてほしい」という国民の期待が、圧力が、働いていましたから、部分的ではあっても国民の願いを反映した前向きの要素が(民主党政権の)政策の中にあったんですね。ですから私たちは「建設的野党」という言葉を使いました。
しかし、そのあと(民主党政権が)実際にやったことは、普天間問題でも「国外、最低でも県外」という公約を投げ捨ててしまった。後期高齢者医療制度でも、「すぐ廃止」といったのに4年後に先送りと(いうことになった)。そして消費税(増税)の問題を押し出してくる。ことごとく、一番肝心かなめのところで国民の期待に背いてきたというところが現状だと思うんですね。
それでは、なぜ公約が守れなかったのかということを考えますと、普天間問題ではやはり“アメリカいいなり”の政治という問題がある。そして消費税の問題では、やはり日本経団連が震源地ですよね。ですから、アメリカにも、財界にも、国民の立場に立ってモノを言える政党が必要だと、日本共産党はそういう仕事を果たしていきますと、いうことをいま訴えています。
日米FTA、日豪EPA
――日本農業を根本から壊す動きには断固反対
古舘 あの、経団連が震源地だというのは、消費税を上げる、それは法人税を減税するっていう(志位「はい」)思惑があるがゆえに消費税を上げるんだっていうのが共産党の見方なわけですね。あの、ちょっとこれは、ごめんなさいね志位さん、私の固定観念でいうと、驚いてしまったんですが、マニフェストを見ているときに、共産党のマニフェストに「経済成長戦略」というのが載っていて、正直、意外な感じがしたんです。そしていろいろ、中小企業に対する支援とか、読ませていただきました(志位「はい、はい」)。その中でおっと思ったのは、日米のFTA(自由貿易協定)、自由貿易ですね、2国間の。そして日本・オーストラリアのEPA(経済連携協定)、これも同じような感じ。これは断固阻止と。この自由貿易阻止が経済成長戦略だというのはわからなかったです、正直。これどうとらえたらいいんですか。
志位 私たちは、自由貿易全体を反対しているわけではないんです。今はグローバル化の世界で、自由貿易は当然なんですね。私たちが、問題にしているのは農産物なんですよ。いま言われた日豪EPA、これ実際にやったとしますとね、酪農、畜産、砂糖、そういうところを中心に、北海道経済だけで1兆3千億円の損失が出る。それから日米FTAについては、これをやったとしますと、日本のお米が82%、壊される。いま日本の食料の自給率というのは40%でしょう。その自給率が根底から壊されると。
これはどこの国でも、自分の国の主食、基礎的な品目については高い関税をかけて守っていますよ。たとえば欧米でしたら、牛乳とか乳製品が、日本のお米みたいな大事な品目なんですね。高関税をかけて守っています。EUの農産物の関税率は平均したら20%。日本は12%ですよ。そこまで下がっている。やはり農業、農産物、そして食料、これは自給すると。そして自給率を高めていくと。いま世界中が、食料が逼迫(ひっぱく)して飢餓や貧困が深刻になっているわけですから、その時に自給力がありながら、それを壊していくという政治というのは間違っている。ですからこの日豪EPAと日米FTAは、そういう問題点があるから、私たちは断固反対といっています。
古舘 農産物に関してと。
志位 そうです。
古舘 わかりました。まだまだお伺いしたいことはあるんですが、時間が来てしまいました。ありがとうございました。
志位 ありがとうございました。