2010年7月9日(金)「しんぶん赤旗」
主張
農産物輸入自由化
農業つぶしの「強い経済」路線
菅直人政権の農業政策に対して、全国の農業者と消費者の間に懸念と批判が広がり、参院選でも大きな関心を集めています。菅首相が意気込む「強い経済」路線が、農産物輸入の完全自由化に道を開こうとしているからです。
これを許せば、日本農業は壊滅的な打撃を受けます。消費者は安全で安心な国産食料の入手がいよいよ困難になります。
日豪EPA、日米FTA
日本は、国民が日々消費する食料の大半を外国に依存する異常な姿をしています。政府の農産物の輸入自由化路線こそ、食料自給率を引き下げ、日本農業を衰退させてきた要因の一つです。
歴代の自民党政権は、世界最大の食料輸出国でもあるアメリカの圧力に屈して、農産物の輸入を次々と拡大し、コメの輸入も解禁しました。農業者と国民の批判が向けられたのは当然です。民主党は「食料自給率の向上」と農業者の所得補償を掲げ、昨年の総選挙で政権につきました。
ところが、菅政権はその公約とは相いれない農産物輸入の自由化を積極的に進めようとしています。参院選政策の「強い経済」づくりの一環として、「各国とのEPA・FTAの交渉などを積極的に進める」と明記しています。
菅内閣は先月閣議決定した「成長戦略」でも、今年度中に日豪経済連携協定(EPA)交渉を進め、日米自由貿易協定(FTA)を念頭に、日米間の経済連携のあり方も検討するとしました。さらに、それらを含むアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)の構築も20年までに実現すべき目標として盛り込んでいます。菅首相は、FTAAPを打ち出したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の11月日本開催に向け、議長国として実現を推進しています。
「成長戦略」がいう、海外で「日本企業が活躍しやすい」環境整備は、輸出大企業の利益を確保し、農業を切り捨てるものにほかなりません。
これが財界の要求から出ていることは明らかです。「モノの流れ」を促進するという「成長戦略」は、日本経団連が同時期に発表した「APEC議長国・日本の責任」の文書とも共通しています。菅政権は、農産物の関税の削減・撤廃を要求する財界と二人三脚で農産物輸入の完全自由化を進めようとしています。
民主党は昨年、日米FTA推進を打ち出し、農業者から大きな批判を受けました。今回の公約では「日米FTA」の言葉こそ隠したものの、自由化路線にいっそう傾斜しているのが実態です。
自給率の抜本引き上げへ
地球温暖化の影響や食料の国際価格の上昇などで、食料を海外に依存する時代は終わったとの認識が広がっています。食料自給率の抜本的な引き上げは国民的な願いです。自由貿易一辺倒の世界貿易機関(WTO)農業協定の抜本見直しを求める声も国の内外で高まっています。
日本共産党は、農業破壊の輸入自由化に正面から反対し、食料・農業政策を自主的に決定し、日本農業をまもる政策を一貫して追求しています。林産物・水産物も輸入野放しをやめさせます。農業分野でも、アメリカにも財界にもモノのいえる政党として、日本共産党の役割がますます重要です。