2010年7月26日(月)「しんぶん赤旗」
主張
米金融規制法成立
日本も銀行救済見直すべきだ
米国で金融機関への監督を強化する金融規制改革法が成立しました。2年前のリーマン・ショック以来、金融危機を繰り返させないために世界で模索されてきた規制強化の流れが具体化しています。
企業に自由に活動させることが全体の利益につながるという規制緩和の迷信が、本拠地の米国で挫折し、転換を余儀なくされています。「金もうけは自由にさせ、失敗したら政府が救済しろ」という、金融機関の身勝手な言い分はもはや通用しません。
税金投入なくす
今回の金融危機で、米政府は多くの金融機関を救済しました。世界最大の保険会社AIGなどを破たんさせれば、その影響が世界中にも及ぶことから、「大きすぎてつぶせない」ことが縛りになりました。米政府が救済のために用意した公的資金は約7千億ドル(約61兆円)にのぼります。
新法は税金による救済の再発を防ぐものです。オバマ米大統領は21日、法案に署名した際の演説で、金融機関が破たんした場合、今後は粛々と処理し、税金を使った救済はないこと、「大きすぎてつぶせない」ような金融機関はないことを強調しました。
新法がとりわけ注目されたのは、預金を受け入れる銀行が、ヘッジファンドへの投資や自己勘定による売買など、高いリスクをとる投機に走るのを禁止しようとしたことにありました。
金融は「経済の血液」とたとえられるように、実体経済を支えるべきものです。それが金もうけの手段として肥大化し、公共性を投げ捨てて暴走し、実体経済を振り回す逆立ちした存在となったことが、危機をもたらしました。
米国は1929年に始まった世界恐慌の教訓に立って、広く預金を集める銀行を危機から隔離するため、銀行と証券とを分ける「グラス・スティーガル法」を制定しました。しかし、70年代以後、自動車や電器など米国の製造業が日本など外国企業に駆逐されるなかで、金融こそが米国経済の強みだとする考えが支配的になりました。企業活動への規制を緩和する新自由主義のもとで、同法は骨抜きにされ、それが今回の金融危機の土壌となりました。
新法は銀行による投機の道をふさぐにはいたりませんでした。金融界の強い抵抗を前に、ヘッジファンドなどへの投資を自己資本の3%まで認めるなど、不十分なものになりました。法案を最終的に受け入れた金融界に、この内容ならしのげるとの判断があったことは確かです。
それでも、新法は金融機関の無軌道な活動の規制に向かう歴史的転換になるものであり、前進です。ただ、金融機関の活動がグローバル化したもとで、米国での規制が実効性をもつには、国際協調が欠かせません。今度は日本の姿勢が問われる番です。
銀行甘やかし改めて
日本では、投機に走った金融機関を公的資金を投入して救済する仕組みがいまもなお生きています。政府は96年以来、金融機関に巨額の税金を投入し、国民負担は10兆円を超えています。
危機の再発を防ぐには、異常な銀行甘やかし姿勢を根本的に改める必要があります。銀行による投機をやめさせるとともに、金融機関の破たんは金融業界の自己責任で処理させることが必要です。