2010年7月26日(月)「しんぶん赤旗」

民主党政権 日本農業壊滅の危険

FTA・EPA推進

コメは9割減少 自給率は12%に


 菅直人内閣は農産物の輸入自由化をいっそうすすめようとしています。農産物輸出大国のオーストラリア(豪州)、アメリカ、さらにカナダや中国などとの環太平洋FTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)構想がそれです。この秋に日本で開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC)を活用して交渉を促進させる構えです。


10年後までに

 6月18日に閣議決定した「新成長戦略」では、2020年までに実現する目標として、FTAやEPAをアジア、太平洋、さらにインドやEU(欧州連合)と結ぶことを「工程表」にしています。

 スタートとなる今年度は、「早期実施事項」として、日米EPAの検討、日豪EPA交渉の推進、日本・中国・韓国のFTA研究などをあげています。

 10、11月に横浜市を中心に開かれるAPECについては「2020年を目標にアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を構築するため」の道筋をつくる場と位置づけています。

 自公政権時代にスタートした日豪FTAは、民主党政権になって10回目の交渉を重ねます。岡田外相は6月7日に開かれた日豪経済委員会シンポジウムで「大局的観点から締結に全力をあげる」と熱心です。

経団連が圧力

 背景には、経団連は閣議決定の3日前の6月15日に「アジア太平洋地域の持続的成長を目指して」という文書を発表。この中で政府の実行計画にない協定締結期限を明記しています。

 日豪EPAは2年後の2012年、日米EPAは5年後の15年までの妥結を求めています。

原則関税ゼロ

 FTAは、農産物や工業製品などモノの貿易にかかる関税を原則として撤廃する2国間や複数国間の協定です。EPAは、人の移動やサービスなどを含むさらに広範囲な協定です。

 日豪EPAが締結されると、農水省の試算では、日本の小麦、砂糖はほぼ全滅、乳製品、牛肉も半分が打撃を受けます。食品企業などの関連産業をふくめ3兆円以上の被害をうけます。さらに米や大豆、果物などほとんどの農産物が影響する「アジア太平洋FTA」の締結となると、アメリカ、カナダ、中国という農産物輸出国も加わり、ほぼ全面自由化になります。

 農水省の「国境措置を撤廃した場合の国内農業等への影響(試算)」(07年)では、米は9割減という壊滅状態、酪農も88%が減少します。現在41%の食料自給率は12%まで落ちます。

 農民連(農民運動全国連合会)や全国食健連(国民の食糧と健康を守る運動全国連絡会)では、農家にたいし「戸別所得補償」(民主党)、「経営所得安定制度」(自民党)の対策をしても日本農業の再生と食料自給率向上はできないと指摘。「自由貿易一辺倒では、世界的な異常気象による食料供給の不安や飢餓人口の深刻化に対応できない」として、各国の食料自給を高める「食料主権」を確立する政治を求めています。

低すぎる日本の関税

 日本の食料自給率はカロリーベースで41%。欧米諸国が70%〜100%以上に自給率を維持・向上させているなかで異常な低さです。

 日本の農産物の平均関税率は、自民党政権時代に輸入自由化による「農業つぶし」をしたため、すでに国際的には低くなっています。高関税は、日本の主食の米、さらに麦、でんぷん、牛肉、乳製品など一部産品だけになっています。「市場開放しすぎた国」になっています。(グラフ)

グラフ




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