2010年7月29日(木)「しんぶん赤旗」
B型肝炎 札幌地裁第2回和解協議
国また救済策示さず
原告団 「命もてあそぶな」
「国は何もしようとしない。私たちは1秒1秒を真剣に生きているのに、もてあそんでいるかのよう」―。B型肝炎訴訟の第2回和解協議が28日、札幌地裁で行われ、前回の協議と同様に、加害者の国は被害者の救済に何の全体像も示さず、9月1日の次回協議に持ちこされました。
|
協議の焦点になっている被害者の証明方法について、国は「証明には母子手帳が必要」と主張しています。原告側は、当時、集団予防接種が国により義務化されており、被害者の証明に母子手帳は必要ないと主張しています。
今回、国側は「母子手帳にかわる証明方法については検討中である」として、具体的な内容を示しませんでした。
和解に向けた協議のテンポやスケジュールすら示さない国側に対し、裁判所は、できる限り早期に全体像を示すよう求めました。国は「裁判所の見解を政府に伝える」と述べるにとどまりました。
協議後開かれた記者会見では、原告・弁護団から、国への怒りが相次ぎました。
北海道原告団の高橋朋己代表(57)は、「国からは具体的な話は聞かされず、いったい国は何を調査してきたのか、そういうことすら教えてくれません。ただ待たされているだけ。国は国民を助けようという思いがないのか」と激しい口調で批判しました。
解説
国は加害責任を果たせ
予防接種強制は歴史的事実
原告側は、「母子手帳」がなくても、「国内に居住していたことが証明されれば」予防接種による感染と認定することを求めています。
この要求には歴史的根拠があります。
戦後、占領期の日本の医療・公衆衛生政策を取り仕切った連合国軍総司令部(GHQ)C・F・サムス准将は、▽戦後間もなく6千万人に天然痘の予防接種をおこなったこと、▽30歳未満の人口のうち3千万人にBCG接種をおこなった―。などを自著『DDT革命』に書き、「世界医学史上類をみない」大規模な免疫プログラムを実施したことを誇っています。
なぜ、占領軍は、しゃにむに予防接種を強制したのか?
『厚生省50年史』は、「GHQの公衆衛生対策の基本的な目的が連合国軍兵士の健康維持にあった」と記述。『GHQ日本占領史』も、「占領地の住民の健康よりも、兵力維持のためにまず自国の軍隊の保護が優先された」と、歴史的背景をのべています。
日本人に予防接種を義務付けて接種率の向上を追求したのは占領軍のためだったのです。
二の腕に予防接種痕が残る人は多いことでしょう。日本に住んでいたならば集団予防接種を受けたというのは、誰もが認識できる歴史的事実なのです。
国は、B型肝炎ウイルスを広げた歴史的事実を見据えて加害者としての責任を果たすべきです。(菅野尚夫)