2010年8月7日(土)「しんぶん赤旗」
核兵器禁止条約の国際交渉が現実的課題となりつつある
広島 志位委員長が会見
日本共産党の志位和夫委員長が6日、広島市内で行った記者会見の要旨は次の通りです。
――今日、広島に来られた思いは。
志位 被爆65周年の今年、世界では「核兵器のない世界」をめざす新しいうねりが起こっています。犠牲になった方々への追悼とともに、日本国民の悲願である地球的規模での核兵器廃絶を一刻も早く、という思いでやってまいりました。
国連、各国政府、自治体、反核NGOの共同の新たな広がり
――今年の印象はどうでしょうか。
志位 平和記念式典に参加し、原水爆禁止世界大会にも参加しましたが、今年の特徴の一つは、国連、各国政府、自治体、反核NGOが共同して、「核兵器のない世界」をめざすという流れが、新しい発展の段階に来ていることにあると感じました。
潘基文(パン・ギムン)国連事務総長が、国連事務総長として初めて広島の記念式典に参加されました。事務総長は原水爆禁止世界大会にも心のこもったメッセージをよせておられます。国連軍縮担当上級代表のドゥアルテさんは、記念式典とともに、原水爆禁止世界大会に参加され、素晴らしいスピーチをされました。私も懇談させていただきました。広島市、長崎市をはじめ自治体がたいへん重要な役割を果たしておられます。国連と各国政府と自治体と反核NGO、そして市民が共同して、「核兵器のない世界」をつくろうという流れが広がっていると感じました。
核兵器禁止条約――交渉開始を促し、実らせていくたたかいを
志位 もう一点、全体の中身でいいますと、核兵器禁止条約を締結していこう、そのための国際交渉を始めよう、ということが国際政治のなかで現実的な課題となりつつあるということがしめされたと思います。
記念式典で潘国連事務総長が、核軍縮のためのご自身の「5項目提案」について言及されました。この第1項目が核兵器禁止条約です。秋葉忠利市長は、「平和宣言」のなかで、日本政府が「核兵器禁止条約締結の音頭を取る」べき、といわれました。原水爆禁止世界大会の主題もまさにそこにあるわけですが、核兵器をなくそうと思ったら、核兵器廃絶そのものを主題とした国際交渉=核兵器禁止条約締結のための国際交渉を始めていくことがどうしても必要です。このことがまさに国際政治のなかで現実的な課題となりつつあると思います。この動きを促進し、交渉を開始させ、それを実らせていくたたかいがこれから大事になっています。
日本政府は「核の傘」から離脱してこそ、核兵器廃絶の先頭に立てる
――首相が「核抑止力」は必要だといいました。
志位 さきほど菅首相が、記者会見で、「核抑止力はわが国にとって引き続き必要だ」とのべたというニュースを聞きました。たいへん残念な発言です。
秋葉市長は、「平和宣言」で、「今こそ、日本国政府の出番です」として、「『核兵器廃絶に向けて先頭に立』つために、…『核の傘』からの離脱」が必要だとよびかけました。潘国連事務総長も、「核抑止力」依存を批判し、世界の安全の保障は核廃絶でこそという立場を、くりかえしのべておられます。
「核抑止力」論にたてば、「抑止」という名で核兵器使用の「脅し」の対象とされた国は、同じ論理で核兵器を持つことになる。結局、核拡散の元凶にもなるわけです。ですから、本気で「核兵器のない世界」をつくろうと思ったら、「核抑止力」という立場から抜け出す必要があります。日本政府は、「拡大抑止」=「核の傘」から離脱する必要があります。
そのことを、広島の「平和宣言」のなかで、この記念すべき日に、秋葉市長が提起されたにもかかわらず、その提起を目の前で聞きながら、「核抑止力は必要だ」と核兵器の合理化論を語ったのは、広島の声に背をむけ、世界の平和を願う声に背をむけるものとして許せません。
日本政府は、「核の傘」から離脱し、「核抑止力」という呪縛(じゅばく)から解放されてこそ、世界にむかって核兵器を捨てようとよびかける立場にたてます。唯一の被爆国の政府として、ぜひそういう立場をとるべきだといいたいと思います。