2010年8月12日(木)「しんぶん赤旗」

欠損金の繰越控除制度とは?


 〈問い〉大銀行が「欠損金の繰越控除制度」を活用し、法人税を納めていないことを知り驚きました。この制度はどんな制度ですか?

 〈答え〉企業のもうけにたいする課税、つまり、法人課税の仕組みについてはマスメディアもほとんど取り上げず、国民に知らされていません。驚かれるのも当然です。日本共産党は一貫して大企業優遇税制を是正するように求めてきました。

 欠損金の繰越控除制度とは、企業の赤字(欠損金)を翌期以降の黒字(課税所得)と相殺することができる制度のことです。前期以前の赤字を当期の黒字から差し引くことができるため、法人税額を軽減することができます。

 この制度は1950年度税制「改正」で導入されました。導入当時の繰越期間は5年間でした。

 繰越期間の延長を求める財界・大企業、とりわけ銀行業界を中心とする強い要望に応えて、自民・公明政権のもとで、繰越期間は2004年度税制「改正」で7年間に延長されました。

 欠損金の繰越控除制度はすべての企業に適用されますが、特に不良債権処理で巨額の赤字を抱えた大銀行に大きな恩恵を与えています。大銀行が不良債権処理で積み上げた赤字とその後の黒字が相殺されるからです。

 大手銀行6グループ(三菱UFJ、みずほ、三井住友、りそな、住友信託、中央三井)傘下の銀行は、住友信託銀行を除き、10年以上法人税を納めていない状態が続きました。

 2010年3月期の決算では、大手銀行6グループはそれぞれ数千億円もの業務純益を上げながら法人税納付は、住友信託銀行も含めてそろってゼロでした。同行の課税所得が赤字に転じたためです。

 欠損金の繰越期間の延長は大銀行や財界の要望に沿ったものでした。

 全国銀行協会は、繰越期間が7年に延長された04年度税制「改正」に向けた要望の冒頭で「金融機関等の欠損金の繰越期間を延長すること」を要求。日本経団連も「ある年度に欠損金が生じた場合は、当然に前後の事業年度との損益通算が認められるべきである」と強調し、繰越控除期間を「7年に延長すべき」と強く求めていました。

(2010・8・12)





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