2010年8月14日(土)「しんぶん赤旗」
主張
低下した食料自給率
国境措置強め抜本引き上げを
農水省が発表した2009年度の食料自給率(カロリーベース)は40%で、前年度比1ポイント低下しました。北海道が長雨に見舞われて、小麦やテンサイの生産量が減ったためです。コメの消費が減ったことも影響しました。
政府も「50%」目標
長期低落傾向をたどった食料自給率は、06年度の39%を底に、その後の2年間は毎年1ポイントずつ上昇してきました。それがふたたび低下したことは、日本農業の衰退に依然として歯止めがかかっていないことを示し、先行きに不安を投げかけています。
政府は自民党政権時代、農産物市場を際限なく開放する農業つぶし政策をとってきました。余剰農産物の市場を確保したい米国が圧力を加え、国内では、工業品の輸出拡大をねらう財界が、農業に犠牲をしわ寄せしてきました。その結果が、先進国で異常に低い食料自給率です。
コメは日本が唯一自給できる作物であり、輸入する必要がありません。それにもかかわらず、ミニマムアクセス米として、外国から年間77万トンも輸入し続けていることは、異常な市場開放路線を象徴するものです。不要なコメを積み上げていることが、米価下落の要因の一つとなって、農業者を苦しめています。
食料自給率の抜本的引き上げの必要は、いまや国民的な合意です。政府は3月に決めた「食料・農業・農村基本計画」で自給率を「50%」に引き上げるとの目標を掲げています。そのためには、関税をはじめとする適切な国境措置の維持・強化が欠かせません。
ところが、農産物輸入を拡大する路線は、民主党政権でも転換されていないどころか、逆に強まっています。民主党が昨年の総選挙で、オーストラリアとの経済連携協定(EPA)や米国との自由貿易協定(FTA)の締結をマニフェストに掲げました。
実行されれば、農業や地場産業が重大な打撃を受け、地域経済がいっそう疲弊することは目に見えています。農業者と広範な国民から批判を浴びたのは当然です。
しかし、菅政権から「民間から初」との鳴り物入りで中国大使に任命された丹羽宇一郎氏(元伊藤忠商事社長)は、中国とのFTAを早期に締結すべきだと強調しています。丹羽大使は、日中FTAが日本農業に与える影響を見越して、日本も農産物の輸出をめざすべきだといいます。
市場を開放するとともに、日本農業の国際競争力を強めるというのは、自民党政権が推進し、破たんが明らかな路線です。
温暖化もかかわって、世界的に異常気象が強まっています。小麦の主要輸出国であるロシアは、異常干ばつで小麦生産量が大幅に落ち込んでいることから、輸出を禁止しています。これに投機マネーが小躍りし、小麦価格を高騰させています。ロシアの事態は例外ではありません。農業大国オーストラリアも長期にわたって干ばつに見舞われています。
コメ輸入は中止を
食料の外国依存を強める危険は明らかです。政府は、「50%」の自給率目標を実現するため、ミニマムアクセス米の輸入中止をはじめ輸入自由化路線を転換し、「食料主権」に立つ貿易ルールを確立すべきです。