2010年8月18日(水)「しんぶん赤旗」
イラク 連立交渉停止
宗派間争いが表面化
【カイロ=松本眞志】イラクの新政権樹立に向け連立交渉を行っていた世俗会派イラキーヤは16日、マリキ首相率いる法治国家連合との交渉を停止したと発表しました。3月初めの総選挙実施から半年近くに及ぶ連立交渉の不調は、治安の悪化や公共サービスの低下を招いており、今月末の米軍戦闘部隊のイラク撤退にも影響を与えかねない事態となっています。
連立交渉が行き詰まった要因の一つは、イスラム教のスンニ派とシーア派の対立が再び表面化したことにあります。
マリキ氏がイラキーヤを「スンニ派だ」と決め付けたことに対し、イラキーヤの報道官は「私たちはスンニ派だけではなく、国民に責任を負っている」と反論。イラキーヤのアラウィ元首相はマリキ氏らを「セクト的だ」と批判しています。
イラキーヤ側では、連立交渉再開の条件として、マリキ氏らにこの問題での謝罪を要求しています。
3月に実施された総選挙でイラキーヤは、91議席を獲得して第1党に進出。法治国家連合は89議席を得て第2党となりました。
選挙ではイスラム教スンニ派の多くがイラキーヤに投票したとみられています。このためシーア派主導のマリキ政権は、かつてサダム・フセイン独裁体制を支えた旧バース党やスンニ派の復権を警戒し、アラウィ氏の組閣にも難色を示してきました。
総選挙後の政争とこれにともなう政治空白は、7月の自爆テロなどによる死者数(535人)がこの2年間で最悪になるなど治安が再び深刻化する事態を招いています。
期待された組閣交渉の失敗が、米軍撤退のスケジュールにとってかく乱要因となるのは確実。イラク軍幹部のババカル・ゼバリ中将はすでに、治安の悪化を理由に米軍の駐留延期を主張。「イラク軍が完全に治安に責任を持てるのは2020年だ」と語っています。
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