2010年8月30日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
大地震 どう備える
9月1日は「防災の日」 首都圏は…
9月1日は「防災の日」です。1923年のこの日に起きた関東大震災の教訓を忘れず、地震・台風・津波など自然災害に対処する心構えを準備しようと、60年に制定されました。大地震の被害を最小限に食い止めるために必要なことは何か。首都圏の備えの現状を紹介します。
直下型 30年以内で確率70%
巨大地震がいつ東京を直撃してもおかしくないといわれています。とりわけ大被害を出した阪神・淡路大地震と同じ首都直下地震は、「静穏期から活動期の段階」に入ったといわれ、国の中央防災会議は、マグニチュード(以下M)7クラスの直下型が30年以内に70%の確率で発生すると発表。これを受けて東京都は、直下型地震が東京を直撃した場合、死者約5600人、建物全・半壊45万棟もの被害が生まれると被害を想定しています。(東京湾北部地震M7・3)
しかし、都内には木造住宅密集地域が約2万4000ヘクタールも残され、繁華街の雑居ビルや地下道など危険な場所が数多く存在し、想定自体が低く抑えられたものといえます。くわえて学校、病院などの公共施設、交通機関、超高層ビル、帰宅困難者、災害弱者など被害は底知れず、“政治・経済の中枢をおそうスーパー都市災害”となることは避けられません。
地震の備えは万全なのでしょうか。
東京における地震対策の基礎は、革新都政時代に築かれたもので、制定された震災予防条例では「地震は自然現象であるが、地震による被害は人災である」(前文)とうたい、被害から都民の生命・財産を守るために全力をあげることを定め、そのための施策を前進させました。
ところが、石原都政はこの条例にもとづいた防災対策を発展・強化させるどころか、前文を削除し、災害対策の基本を都民の「自助」とし、防災から手を引いていく路線に転換しました。くわえて財界や多国籍企業のための都市づくりである「都市再生」を最重要課題とし、木造住宅密集地域対策をなおざりにし、全体として地震対策を後退させました。
条例改悪に賛成した自民、公明、民主などの責任は重大です。
1300万人の都民が生活を営み、日本の政治、経済、文化が集中する首都東京を巨大地震の被害から守ることは自治体に課せられた最重要な仕事の一つです。
日本共産党は阪神・淡路大震災の教訓に学び、「予防」「応急」「復興」のそれぞれの段階でのとりくみが不可欠として、系統的にとりくみをすすめてきました。都議会においては防災基本計画の見直し、木造個人住宅やマンションの耐震補強の助成、学校耐震化や長周期地震動や側方流動対策などの先駆的提案を行い、それぞれ改善を実現してきました。区市町村議員団でも住宅の耐震診断・耐震補強支援、防災のまちづくりなどにとりくみ、施策を前進させています。(末延渥史・日本共産党東京都委員会自治体部)
避難所・対応策知ることも
災害列島日本において、防災体制の確立と生活再建に向けた救援・復興の課題は、重要性が高まっています。全国災対連(災害被災者支援と災害対策改善を求める全国連絡会)は、阪神・淡路大震災の被災者支援を契機に1999年に結成しました。
この組織は、全労連や新婦人、全商連、農民連等の運動団体のほか、日本科学者会議や新建築家技術者集団などと、過去に災害を受けた地方を含め26団体の構成です。
私たちは、憲法25条で保障されている生存権に基づき、第一義的に国と自治体が被災者への支援と生活再建に責任を持つことを求めています。
国の制度は、防災と災害発生時の救援については、一定あります。しかし、救援後の生活再建の制度はまったくありませんでした。阪神・淡路大震災の被災者と、その後の災害被災者が政府に制度確立を求め、98年、不十分ですが「被災者生活再建支援法」を作らせました。その後2回にわたって改正され、家屋再建を含め上限300万円までの個人補償が実現しています。
半壊世帯や一部損壊世帯への支援金はなく、適用条件も問題があります。私たちは来年の見直し年までに制度改正の署名に取り組んでいます。
全国災対連は、結成10周年を迎えた昨年、『災害対策マニュアル』(写真)を発行しました。どのように対応するか、どのような救済制度があるかをまとめたものです。
私たちは、日常的に自らも防災対策を取ることも勧めています。次の取り組みは家族で共有したいものです。
(1)地域防災計画を見ておきましょう―自治体は、「地域防災計画」を策定しています。住んでいる地域でどのような被害が想定されているか、避難所などをあらかじめ知っておくことです。
(2)被災想定への対応策を―家族で具体的な被害をイメージし、対応策も考えてみましょう。首都直下型地震が発生した場合、帰宅者は、どのようなルートで帰るかなども考えることが必要です。
(中山益則・全国災対連事務局長)
全国災対連=全労連気付、電話03(5842)5611
学校耐震化 ほぼ完了 子の安全優先
東京・日野
小中学校の耐震補強について日野市は、2002年度に必要な小中学校19校の校舎、21校の屋内運動(体育館)の改修計画をつくりました。
目標から数年遅れましたが、今年度中に校舎で19校中18校、屋内運動場(体育館)で全校が耐震補強を完了します。残る1校は校舎の一部が、UR都市機構団地の再開発との関係で、改築計画が見合わせられています。
工事内容は、校舎改築(建て直し)が小学校1校、中学校1校、校舎耐震補強に大規模改修が併せて行われたものが小学校2校、耐震補強工事が小学校8校、中学校6校で、屋内運動場の耐震補強工事と合わせて総事業費は約92億円。国庫補助は約3分の1、残りが起債(借金)や一般財源など市の負担です。
党日野市議団は、学校校舎の改修計画をつくる上でも、計画に基づく耐震補強工事を促進する上でも、重要な役割を果たしました。一つには、「行革」で教育予算の大幅削減がすすめられる中で、「税金の使い方の優先順位を改めよ」と論戦に臨みました。特に01年市長選挙で市長が公約した「市民の森ふれあいホール(総合体育館)」建設計画との関係です。「子どもの命と安全を後回しするのか」と徹底的に追及しました。
市は、10年度、「ホール」建設に着手しましたが、学校の耐震補強工事をそれまでに完了させざるを得ませんでした。
もう一つは学校の実態調査でした。耐震不足だけでなく、雨漏りによって天井に穴が開いたり、非常階段が老朽化して使えなくなっている実態を暴露しました。
市長は「学校現場がボロボロでありますとか、雨が漏るとか随分言われまして」(07年12月市議会)と言っていました。(中谷好幸・日本共産党日野市議団長)