2010年10月1日(金)「しんぶん赤旗」
尖閣諸島 歴史的にも国際法上も日本の領土
衆院予算委集中審議
笠井議員の質問
日本共産党の笠井亮議員は30日、「尖閣諸島をめぐる問題」をテーマにした衆院予算委員会・集中審議で質問に立ち、政府の姿勢についてただしました。
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日本の領有権には明確な根拠
菅首相 私の認識も全く同様
笠井氏は冒頭、「沖縄県の尖閣諸島が日本固有の領土であることははっきりしています」として、次のように述べました。
笠井議員 日本共産党はこのことを1972年、いまから40年近く前に見解として発表して、日本の領有には歴史的にも国際法上も明確な根拠があることを明らかにしています。
この間、尖閣諸島周辺で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突し、漁船船長が逮捕され、中国側が抗議する事件が発生しました。尖閣諸島付近の日本の領海で、外国漁船の不法な操業を海上保安庁が取り締まる。これは当然のことです。船長は処分保留で釈放されましたが、逮捕の被疑事実と釈放に至る経過について、国民に納得いく説明をする責任が日本政府にある。同時に中国にも事態をヒートアップ(過熱)させないために、冷静な行動を取るべきだと求めたい。
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次に笠井氏は、今回のような事件を繰り返させないため、「一番肝心の領有権についての歴史的、国際法的な根拠について整理して確認したい」として、次の歴史的事実を示しました。
(1)尖閣諸島の存在は、古くから日本にも中国にも知られていたが、いずれの国の住民も定住したことのない無人島だった。1895年1月14日の閣議決定によって日本領に編入されたのが、歴史的には最初の領有行為であって、それ以来日本の実効支配が続いている。
(2)所有者のいない土地にたいしては、国際法上、先に占有していた「先占」に基づく取得および実効支配が認められている。
(3)日本の領有に対して、1895年から1970年代にいたる75年間、外国から異議が唱えられたことは一度もなく、中国も沈黙していた。
笠井氏の指摘にたいし、菅首相は「私の認識もまったく同様です」と答弁。笠井氏は「日本の領有は国際法の要件に十分に合致していて、極めて正当なもの。ここは大事なところだ」と強調しました。閣僚席では、身を乗り出して聞く人や、盛んにうなずく姿が見られました。
“中国領”と書いたのは92年
前原外相 その通り
それでは中国、台湾が尖閣諸島の領有権を主張し始めたのはいつからか―。
前原誠司外相 中国政府や台湾当局が独自の主張を開始したのは1970年代以降です。中国、台湾とも1971年にそれぞれ声明を出しています。中国の声明は12月30日、これが尖閣諸島の領有権にかんする中華人民共和国政府外交部の声明、台湾の声明は6月11日、琉球群島の地理問題に関する中華民国政府外交部声明です。
笠井議員 中国が領海法に尖閣諸島を中国領と書き込んだのは1992年のことです。それまでは中国で発行された地図でも尖閣諸島は中国側が領海とする区域の外に記載されていました。そういうことでよろしいのでしょうか。
前原外相 その通りです。1960年に中国が出した公図においては中国領に含めておりません。日本の領土という記述になっております。
「したがって、領有権を主張する中国側の言い分には道理がない。これは明らかだ」と笠井氏は主張。そのうえで、この問題での政府の姿勢についてただしました。
日本政府はきちんと主張せず
外相 大いに反省するところある
笠井議員 このように尖閣諸島が日本の固有の領土であることについて、歴史的にも国際法的にも明確な根拠がある。そのこと自体を国際社会と中国政府に堂々と正面から主張すべきだと思うのです。そういうことを、首相自身が先の国連総会の場でも、理を尽くして言う機会が十分あったはずです。首相はそういうことを言ってこられたのでしょうか。
菅首相 先の国連総会は、ミレニアム開発(目標)が主要課題で、それに沿った話をしました。個別の会議では、外相が米国務長官との話をふまえて全体の話をしました。そういうこととあわせて、わが国の立場は機会を得てしっかりと表明すべき時にはしましたし、これからアジア欧州会議(ASEM)に出かけることにしていますが、そういう場でもしっかり言うべきことは国際社会に対して明確に申し上げていきたいと思っています。
笠井議員 いろいろありましたが、(外相と米国務長官との会談で米側が述べた)安保条約第5条の適用は日本でも世界でも流れました。それから、「(東シナ海には)領土問題はない」という立場で、「国内法にもとづいて厳正かつ粛々に」という話(日本政府の姿勢)が世界に流れました。しかし、(尖閣は日本固有の領土という)歴史的、国際法的根拠についてはどれだけ伝わったのかというと、今、首相の口からは、「明確に言われた」ということはありませんでした。果たしてそれで本当にすむのかということが問われています。
さらに笠井氏は、1978年の日中平和友好条約批准時における両国政府のやりとりに言及しました。
笠井議員 当時のケ小平・中国副首相は、「尖閣諸島のような問題は一時棚あげにしても構わない」、と棚上げの立場を表明しました。それに対して日本政府はどうしたかというと、それ以降、30年余り、そうした棚上げ論をいいことにして、中国政府に主張してこなかったのではないでしょうか。尖閣問題をめぐって30年余り、言う機会はいくらでもありました。日本の領有権に明確な根拠があることについて、中国政府にも国際社会にも、理を尽くして、日本外交がきちんと主張してきたことがあったのか、事実を確認したい。
笠井氏の質問にじっと耳を傾けていた前原外相はこう答えました。
前原外相 議員がおっしゃったように、しっかりとその点について、中国ならびに国際社会に対して発信してこれたかどうかについては、大いに反省するところがあるのではないかと思います。
笠井議員 結局、尖閣諸島のいろんな問題、一貫して存在しないという立場にたって、そういう形で、根拠についても堂々と主張してこなかった。政権が代わっても、首相が言われたかといえば、明確におっしゃったと言われない。結局、政権が代わっても対応が変わっていない。それですまないから、今回のような問題が起きているのだと思います。領土にかかわる争いごとについて現に起きていることは事実だと思うのです。だから国民も経済界もこんなに懸念をして、不安が広がっているわけです。
国際社会で積極的な活動行え
首相 あらゆる機会で表明する
笠井氏の指摘に対し前原外相はしきりにうなずきました。
笠井議員 今回のような事件を繰り返さないためには、日本政府が、尖閣諸島の領有権について、歴史的にも国際法的にも明確な根拠があることを中国政府や国際社会に明らかにする積極的な活動を行うことが必要だと思います。来週にアジア欧州会議がありますが、首相はこうした立場にしっかりたって臨むべきだと思うのですが、いかがですか。
菅首相 おっしゃった通り、この問題、特に今回の事案を受けてのことも含め、積極的に国際社会に対し、尖閣諸島はわが国の固有の領土であって、歴史的にも国際法的にも揺るがすことができない根拠があるのだということを、あらゆる機会を得て表明、あるいは説得していくことが必要と考えております。
笠井氏は、「そのことは非常に大事です」と述べ、「領有権の根拠について自信があるというのなら、相手の国や国際社会に対し堂々と言えばいい。そうすれば日本の立場の大義が明らかになる。ここはしっかりやるべきだということを強く申し上げたい」と強調しました。
漁業者の安全確保へ交渉せよ
首相 必要に応じ申し入れる
笠井氏は、「両国の間に、領有権をめぐる立場の違いがあるもとでも、やらなければいけない緊急の問題」があるとして、尖閣周辺海域で操業・航行する漁業者の安全確保を求めました。
9月28日、沖縄県議会は日中両政府に対する決議を可決。「尖閣諸島周辺海域において、本県およびわが国の漁業者が自由かつ安全に操業・航行できるよう適切な措置を講じること」を要求しています。
笠井議員 この願いは切実で、待ったなしの問題だと思います。こうしたことをしっかり受け止めながら、こうしたことを繰り返させずに、日本の漁業者が安心して操業できるようにするための必要な措置、その点での交渉というのが必要で、そういうことをきちっと講じるべきだと思うのですが、基本的な姿勢と方針についてうかがいたい。
菅首相 わが国、沖縄県の漁民のみなさんが安心して操業できるように、海上保安庁の努力も必要ですし、それから外交的な努力も必要です。いまの時点でどうするかは申し上げられませんが、当然ながら、そういったことをわが国の安全な漁業活動を阻害することについては、どの国であっても認めるわけにはいかないという意思を明確にし、必要に応じてはそういったことを申し入れることも必要だと思っています。
平和的に話し合いでの解決を
笠井氏は最後にこう述べました。
笠井議員 日本領土問題を含む国際的な紛争問題は、決して緊張をエスカレートさせず平和的・外交的にきちっと話し合いで解決すると、これは大筋大道だと思いますし、そういう外交力を発揮するのが政府の役割だと思います。同時に、中国側にたいしてもこうした事件にさいして緊張を高めない冷静な言動や対応をとるよう求めます。
■尖閣諸島沖での中国人漁船船長逮捕をめぐる動き
9月7日 中国トロール漁船と海上保安庁の巡視艇が尖閣諸島沖で接触
8日 石垣海上保安部は公務執行妨害の疑いで、漁船の中国人船長(41)を魚釣島沖で逮捕
10日 中国が丹羽駐中国大使を呼び出して抗議
19日 石垣簡易裁判所は漁船長の拘禁延長を発表
同 中国外務省は閣僚級以上の往来の停止などを措置
22日 中国の温家宝首相が漁船長の即時・無条件の釈放を要求
同 仙谷官房長官は日中ハイレベル協議を呼びかけるが、中国側は拒否
23日 国連総会に併せて行われた日米首脳会談、日米外相会談で尖閣諸島問題が議題に。日中首脳会談は開かれず
24日 準大手ゼネコン「フジタ」の社員4人が中国河北省内で中国当局に拘禁される
同 那覇地検は漁船長について、日中関係や国民への影響を考慮した上で、処分保留で釈放すると発表
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