2010年10月16日(土)「しんぶん赤旗」
労働者の人生 狂わせるな
参院予算委 山下議員の質問
「もうかっている大企業が、労働者を“細切れ雇用”で入れ替える。労働者の人生設計はどうなるんだ。そういうやり方が許されるのか」―。15日、参院予算委員会で政府を追及した日本共産党の山下芳生議員。“派遣期間工切り”の生々しい実態を突きつけ、労働者派遣法の抜本改正を迫った質問に、菅直人首相もうなずき、他党議員から拍手が起こりました。
ダイキン工業
利益上げ“期間工切り”
首相 「大変不合理、労働者に負担」
「今年に入り、4万2千人の非正規労働者が雇い止めされている」―。こう切り出した山下氏は理不尽な「期間工切り」を告発しました。
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―世界第2位の空調機メーカー、「ダイキン工業」(本社・大阪市)の堺製作所で8月末、200人もの期間工(同社では『有期間社員』と呼ぶ)がいっせいに雇い止めになりました。「2年6カ月」の契約期間がきたからというのが理由です。ところが、雇い止めした労働者とは別に、新たに200人の「有期間社員」を雇い入れました。
山下議員 仕事はずっとあるのに、労働者は短期の雇用契約で入れ替える。首相、こんなやり方はおかしいとは思いませんか?
菅直人首相 個別的事案、言われていることだけで判断するのはできかねる。
答えない首相に山下氏は、雇い止めされた36歳の労働者から届いた手紙の内容を紹介しました。
―仕事が継続しているのにもかかわらず、多くの人がなぜ離職に追いやられ、路頭に迷わなければいけないのか。世の中の仕事がすべて期間の定められた仕事しかなくなってしまうのではと不安です。
山下議員 “細切れ雇用”で労働者を入れ替える。これでは人生設計ができない。そういうやり方が許されるのですか。
菅首相 一般的に言えば大変不合理であるというだけでなく、働いているみなさんに大変負担をかけている。
山下氏は、ダイキンは利益剰余金をこの5年で1602億円も積み増しており、「その0・5%取り崩すだけで年収400万円の正社員を200人雇える」と指摘。「巨額の利益をあげながら、何の合理性もない労働者の“細切れ雇用”はやめさせなければならない」と迫りました。
山下議員 一人ひとり生きた人間で、家族も生活もある。それをモノのように扱い雇用の調整弁にする。そんな企業や社会でいいと思いますか。
菅首相 期間工が増え、正社員がだんだん減り、それへのフォローが何もない形は好ましい状況でない。
雇い止めされた労働者は、もともと「偽装請負」で働かされていて、大阪労働局から是正指導をうけて、最長2年6カ月の期間工として採用された人たちでした。(図)
偽装「請負」の違法行為について大阪労働局から「是正指導」を受け、「直接雇用」に切り替えたが、「最長2年6カ月」という期限付きの「有期間社員」にし、労働局もそれを認めたことからこんなことになったのです。
雇い止めされた労働者は、ダイキンを相手取り、雇用の継続を求め大阪地裁に提訴しています。
山下氏が、「本来、『期間の定めのない』正社員にすべきだった。労働局のこうした『是正指導』のあり方に問題があるとは思わないのか」と迫ると、細川律夫厚労相は「偽装請負の是正にあたっては、違法状況を是正させるだけでなく、労働者が解雇されないようにすることが重要」と答弁せざるを得ませんでした。
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厚労省の責任
正社員登用の指導せず
厚労相 「派遣元の契約と同じに」
労働局が「是正指導」をして「直接雇用」されたものの、パナソニック、キヤノン、いすゞ自動車、日産自動車などで短期で雇い止めされる事例が広がっています。
山下議員 雇い止めされている労働者は、勇気を持って違法行為を告発した人たち。こういう事態を放置していいのか。
細川厚労相 何とかしないといけないという思いで、派遣法の改正案を出している。
「労働者のための改正だ」という細川氏に対し、山下氏は、政府の「改正」案で、短期雇用で雇い止めされた労働者を救えるのかと、ただしました。
政府案には「違法派遣」があった場合、派遣先が直接雇用を申し込んだとみなす制度が盛り込まれています。しかし、その場合でも「期間の定めのない直接雇用」(正社員)になれるという保証はありません。派遣法では、「直接雇用」されても労働条件はそれまでと同一とされており、6カ月の契約期間だった人は6カ月だけ直接雇用されるだけです。
細川厚労相 派遣元の契約と同じとみなされている。
山下議員 非常に重大な中身だ。派遣元と同じ労働条件だということは、賃金は低いままだ。半年や1年で雇い止めされる危険が大きいということだ。
山下氏は「これでは違法行為を告発・申告できなくなる」との声も示し、政府案の抜本見直しを求めました。
政府案では製造業派遣を「原則禁止」としながら「常時雇用」を例外とし、登録型派遣についても専門業務を例外としているため、大半の派遣労働者が規制の対象外とされてしまう「抜け穴」があいています。
日本共産党は、「製造業派遣の全面禁止」「専門業務の抜本見直し」など派遣労働者から正社員への道を開く抜本改正案を提案しています。
労働者派遣法
「抜け穴」やめ抜本改正を
大企業は、正規から非正規雇用への置き換えを進め、ばく大な利益をあげてきました。相次ぐ規制緩和に伴い派遣労働者が増加し、大企業の内部留保も増大。09年度には244兆円にものぼっています。
山下氏は、「労働者を安上がりで使い捨てながら、一握りの大企業が富を独り占めにする。ここにこそ日本経済のゆがみがある」と指摘。「労働者派遣法を抜本改正して、人間らしい雇用を保障することは、244兆円もの巨額の資金を生きたお金として日本経済に還流させ、首相がいう『富が広く循環する経済構造』を築くことになる」と力説しました。
共産党の抜本改正提案(抜すい)
○製造業派遣はきっぱり禁止する
○「専門26業務」を抜本的に見直す
○名ばかり「常時雇用」でなく期限の定めのない雇用にする
○「みなし雇用」を実効ある規定にする
○「均等待遇」原則を明記
○3〜5年先に先送りせず、速やかに施行