2010年10月17日(日)「しんぶん赤旗」

主張

B型肝炎和解協議

いのちの重さ 平等に扱え


 「人の命の重さは平等です。なぜ差別されるのですか」。B型肝炎訴訟の和解協議で被告の国が示した賠償額をめぐって、原告の被害者から批判があがっています。

 B型肝炎訴訟は、国が義務付けた予防接種によって肝炎に感染した被害者が国に謝罪と損害賠償を求めたものです。国は責任を認め、裁判所が求めた和解協議に応じていますが、早期全面解決のための全体案を示してきませんでした。5回目の協議でようやく示した賠償額は、被害者の心を傷つける理不尽なものでした。

原告の要求と大きな差

 国が示した賠償額は、死亡や肝がんは2500万円、肝硬変は症状に応じて2500万円〜1000万円、慢性肝炎は500万円を支払うなどというものです。まだ症状がでていない無症候性キャリアー(持続感染者)は賠償の対象にしません。

 原告は、薬害肝炎(C型肝炎)被害者救済特別法による給付金と同額を要求していて、国案と比較すると多いもので千数百万円の差があります。原告団・弁護団は、「生命や身体の侵害を原因とする損害賠償請求訴訟における一般的な賠償水準や、同じ肝炎被害者に対する賠償である薬害肝炎救済法の解決水準を大きく下回っている」と国の案を批判しています。全国原告団代表の谷口三枝子さんは「命に差をつけるのは納得いかない」ときびしく批判します。

 国は、こうした具体案を示した理由の一つとして多額の財源が必要になることをあげています。その根拠として、集団予防接種でB型肝炎に感染した感染者は44万人もおり、国の案でも「30年間で2兆円」、原告の案なら「8兆円」が必要になるとし、賠償額を値切ることを正当化しています。

 しかし、仮に国の推計が正確でも、その償いは国が負わなくてはならない問題です。国は、注射針や筒を一人一人取り換えないで使い回しをすれば肝炎ウイルスに感染する危険性を知りながら約40年間も放置してきました。膨大な感染被害を出した加害者が「多額の財源を必要とする」と賠償を値切るというのは、まさに「著しく正義に反して許されるものではない」(原告・弁護団声明)ことです。

 しかも国の推計には、疑問も出されています。原告団・弁護団は、感染被害者数について「根拠がなく不当に過大なもので国民を惑わすもの」と批判しています。菅直人首相は「国民に負担をお願いすることもある」と述べていますが、巨額の財源問題を持ち出して、国民と原告被害者を対立させる魂胆がみえすいています。

一日も早い解決こそ

 和解協議では、予防接種が感染原因かどうかについての立証方法をめぐっても、母子手帳か接種台帳、接種痕による確認を求める国と、すべての国民に罰金まで科して強制した予防接種を一度も接種していない国民はいないと反発する原告の主張との溝はうまっていません。

 札幌地裁が和解を勧告したのは今年3月。7月の第1回和解協議から3カ月たちました。すでに原告10人が亡くなっています。

 これ以上命の重さと尊厳をもてあそぶ対応は許されません。加害責任を自覚して、被害者が納得できる解決案を示し、肝炎訴訟の解決を急ぐのは国の責任です。





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