2010年10月19日(火)「しんぶん赤旗」

COP10の課題〈上〉

地球と人類の将来左右

日本共産党地球環境問題対策チーム責任者 笠井衆院議員に聞く


 18日から名古屋市で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の本会議が始まりました。同会議への出席を予定している日本共産党地球環境問題対策チーム責任者の笠井亮衆院議員に、生物多様性の現状とCOP10の課題について聞きました。


写真

 地球上にどれだけの種類の生物が存在するのか、まだまだ未知の種類が膨大に存在するとされ、正確な数は分かりません。国連環境計画(UNEP)の1995年の報告書は生物種の総数を1362万種と推計し、現在名前が付けられている生物種は、そのわずか13%の約175万種にすぎないとしています。

 人類は、豊かな生態系によって、きれいな水や空気をはじめ、安全で快適な生活を支えられています。食料、燃料、材料、薬など衣食住に必要な資源を得て、自然の風景など精神的にも満足感を得ています。

 生物多様性は、人類社会が生態系から受けるあらゆる利益=「生態系サービス」の源泉です。人類社会は生態系サービス抜きには成り立ちません。生物多様性の保全と、その持続可能な利用は、地球温暖化問題とともに、人類社会の持続可能性に大きく影響する重要課題です。

 21世紀に入り、地球環境の危機を科学的、客観的に評価する取り組みが活発化しました。それらの積み重ねを踏まえて今年5月に公表されたのが「地球規模生物多様性概況第3版」(GBO3)です。

 生物多様性条約の「2010年目標」として「生物多様性の損失速度を顕著に低下させる」ことが掲げられてきました。しかし、GBO3報告は、その目標は「達成できなかった」「保全への努力は増加したにもかかわらず、生物多様性の状況は悪化し続けている」と指摘しました。

 残念なことに、生物多様性の喪失は地球規模でも国内でも「加速しつつある」(日本学術会議統合生物学委員会の「提言」)のが実態です。

 こうした多様性の急減の原因として、人間による湿地、干潟、森林、熱帯林などの破壊、化学物質による環境汚染、移動の拡大に伴う外来種の侵入、人間が引き起こす温暖化などの気候変動などが挙げられます。

 UNEPの主導のもとに、「生態系と生物多様性の経済学」(TEEB)をまとめる作業が行われてきました。その最終報告書がCOP10開催中の20日に公表されます。生物多様性の喪失について経済学的な観点からの世界レベルの研究として注目されています。

経済的な損失

 この研究の成果としてすでに、▽森林破壊による経済的損失が50年には年間220兆〜500兆円に及ぶ可能性がある▽生態系サービスの直接の受益者の多くは貧困層であり、生物多様性の喪失と貧困は不可欠に関連している―などが示されています。

 何も対策をとらなければ、地球上の自然資産は50年までにオーストラリア大陸とほぼ同じ大きさの約750万平方キロが消失すると予測し、それを防ぐには世界のGDP(国内総生産)の0・1%(450億ドル)を自然保護地域の保全に投資すべきだと述べています。TEEBが公表されれば、各国政府や企業の活動を生態系保全に向けて変えていく大きな足掛かりとなります。

 このようにCOP10は地球と人類社会にとって極めて切迫した課題を議論する会議であり、議長国として日本の政府が果たす役割は重要です。

 生物多様性の危機の背景には、巨大企業の生産システムがグローバル化(地球規模化)するもとで、環境の制約を無視した目先の利益追求が最優先で行われていることがあります。とりわけ世界最大の経済・消費大国であり、圧倒的多数の巨大企業の本拠地であるアメリカが、企業活動の“自由を制約される”ことを嫌い、生物多様性条約への加盟を避けていることがあります。

 また先進国と途上国の経済格差が拡大し、途上国が貧困や紛争に悩むなかで、環境を犠牲にした経済活動をやむなくされている現実があります。

大企業の責任

 日本共産党は綱領で、「大企業を中心とする利潤第一の生産と開発の政策」が国内の自然の破壊を全国的な規模で引き起こしていると指摘しています。

 その上で、(1)環境に対する社会的責任を大企業に果たさせ、自然保護と環境保全のための規制措置を強化する(2)多国籍企業の無責任な活動を規制し、地球環境を保護するとともに、すべての国との平等・互恵の経済関係を促進して、南北問題や地球環境問題など世界的規模の問題の解決に積極的に取り組む―ことを明らかにしています。

 気候変動問題と同様、生物の多様性を保全するという人類共通の目標を追求しつつ、先進国が途上国との間で、差異のある責任を果たしながら、支援、援助、協力を強めていくことが必要です。

 先進国が環境保全を前提にした経済・社会発展に取り組み、途上国も先進国が歩んできた“環境を犠牲にした発展”とは違う道筋を探求することが迫られています。(つづく)





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp