2010年10月21日(木)「しんぶん赤旗」

COP10の課題 (下)

日本経済のあり方は

日本共産党地球環境問題対策チーム責任者 笠井衆院議員に聞く


 日本が生物多様性の問題でかかわっているのは、日本国内だけではありません。

 環境NGO(非政府組織)の「A SEED JAPAN」が先月、「ケータイとゴリラのつながりとは?」と題するフォーラムを開きました。

 携帯電話のコンデンサーに使われるレアメタル(希少金属)にタンタル金属があります。この採掘が、内戦によって家や農地を失った住民の森への移動や、軍閥の資金稼ぎと結びつき、アフリカのコンゴの保護動物である希少なゴリラの生息域を破壊し、ゴリラが捕獲されて採掘者の食用に供されているのです。

 ホットスポットの一つに挙げられているマダガスカルや「天国に一番近い島」と呼ばれる南太平洋のニューカレドニアでは、日本の企業も参加した大規模なニッケル採掘による森林破壊が進んでいます。これに対して、先住民などの激しい反対闘争も起きた経緯があり、環境団体や研究者から疑問や批判が出てきました。

 資源の大量消費国である日本にとっては、真剣に考えるべき現実です。

米の加盟焦点

 企業活動の制約を嫌って生物多様性条約に参加していないアメリカの加盟を強く働きかけていくことが、重要なテーマとなっています。

 最新の医薬品などの原料になる生物資源を、アメリカの大企業が途上国から獲得しています。このことなどにより、世界知的所有権機関のデータベースで、ゲノム技術(DNAの塩基技術)に関連して出願された特許の国別優先権主張の割合は、アメリカが60%で、他国を圧倒しています。

 日本の財界は、一般的には「利益の公正かつ衡平な配分を目指す」としながら、“国民負担の増大”や産業の縮小を理由にあげて、途上国側が求める法的拘束力ある議定書をけん制しており、政府の姿勢を制約することが懸念されます。

 COP10の議長国である日本は、何より2010年以降の効果ある保全目標を「名古屋ターゲット」として決め、多様性の持続可能な利用を含む法的拘束力ある「名古屋議定書」を採択することに責任を負っています。

政策の転換を

 OECD(経済協力開発機構)の作業部会が今年5月、日本の環境政策に関する評価・勧告の報告書を公表しました。これは、日本政府が3月に決定した第4次生物多様性国家戦略について、「生物多様性の損失率を著しく減少させるとした02年のOECD締約国会議での合意目標には及んでいない」と厳しく指摘し、保護地域や生物多様性の回廊地域の拡大など改善を求めています。

 国家戦略では東京湾の三番瀬、山口県の上関(かみのせき)、沖縄県の辺野古や泡瀬干潟など、開発・建設計画のある地域や生息地は保護されないままです。

 日本共産党は、開発・埋め立て計画を抜本的に見直し、ジュゴンなどの国内の希少な野生生物の指定や、辺野古をはじめ生物の多様性が豊かな地域への保護区の設定を強く要求しています。

 WWF(自然保護基金)などが発表した「エコロジカル・フットプリント・レポート 日本2010」によると、世界中の人が日本並みの大量消費社会で暮らせば、それを支えるのに地球2・3個分が必要だそうです。アメリカ並みなら地球5個分が必要だといいます。持続可能性という点から、自らの経済、社会を見直すことが必要です。

 日本は、国内でも国際社会でも、抜本的な政策の転換をし、生物多様性保全優先のビジネスモデルや消費者運動を構築するなど、広範な領域でリーダーシップの発揮が強く求められています。(おわり)





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