2010年10月23日(土)「しんぶん赤旗」
農業破壊のTPP
民主党内に懸念と強行交錯
菅首相 APECへの“手土産”狙う
菅直人首相が所信表明(1日)で環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への加盟を検討すると、突然表明したことをめぐり、民主党が揺れています。
TPPは例外なしに100%貿易自由化を進める協定で、日本農業にもたらす壊滅的影響への懸念が広がるなか、JA全国農業協同組合中央会、農民連など農業団体が強く反対。民主党内からも、党内議論も経ずに突然TPP加盟検討を表明した菅政権への批判が噴出しました。
21日には、鳩山由紀夫前首相や亀井静香国民新党代表ら与党の100人を超える国会議員が国会内で勉強会を開催。「TPPへの参加については国家戦略を踏まえた慎重な検討をするべき」だとして、「拙速な参加表明に大きな懸念を表明する」との「緊急決議」を採択しました。
「緊急決議」は、「TPPへの参加を慎重にすべき理由」と題する「別紙」のなかで、「わが国の農業が壊滅的な打撃を受けることは必至」だと指摘しています。
菅首相が、突然「検討」を言い出した背景には、日本の農産物市場の開放を求める米国と、それに応えつつ工業製品の輸出拡大を図るという財界の要求があります。菅首相には、11月のAPEC首脳会議への“土産”とする思惑があります。
7日に開かれた日米財界人会議で、日本経団連の米倉弘昌会長がTPP支持を表明し、前原誠司外相は11月のAPECまでに基本方針をまとめるよう菅首相から指示されたと述べました。
前原氏は党内外からの批判の声を無視し、19日の講演では、「国内総生産における(農林水産業などの)第1次産業の割合は1・5%。1・5%を守るために98・5%のかなりが犠牲になっている」と、農業切り捨て論までぶち上げました。
これに対し、21日の新成長戦略実現会議で、全国農業協同組合中央会の茂木守会長が抗議の意思を表明。筒井信隆農水副大臣も、同日の会見で、「マイノリティー」(少数派)を切り捨てたほうがいいという発言だと批判し、省として抗議の姿勢を示しました。
しかし、閣内ではTPP加盟を強行する声が強まっています。海江田万里経済財政担当相は22日の閣議後の会見で、「日本も舵(かじ)を切らなければならない時期が差し迫っている。早い段階で参加の意思を示して考えるべきだ」と発言。玄葉光一郎国家戦略担当相(民主党政調会長)も同日の記者会見で、「国益にもとづいた総合成長を図らなければならない」などと主張しました。(林信誠)