2010年10月26日(火)「しんぶん赤旗」

主張

築地市場移転

「百年の悔い」残す愚挙やめよ


 東京都の石原慎太郎知事が、現在の築地市場を東京臨海部の豊洲地区に移転する方針を表明し、用地購入費や汚染対策費など1281億円の予算を全額執行すると決めました。「『百年の悔い』を残す」(日本共産党都議団)愚かな選択といわざるをえません。

 移転予定先は発がん性物質ベンゼン、猛毒のシアン化合物などで高濃度に汚染された土地です。都が打ち出す土壌汚染対策は、専門家が「絵に描いたもち」と酷評するずさんさです。「食の安全」を投げ出し、都民も関係者も望まない移転の強行は絶対に許せません。

「食の安全」投げ捨てる

 築地市場は「築地ブランド」で世界にも知られる「都民の台所」です。施設の老朽化への対策が課題ですが、もともと都が1988年に現在の場所での施設建て替えを計画しながら財政難を理由に投げ出した経緯があります。その後、臨海部への移転構想が浮上し、99年の石原知事の登場で「豊洲移転しかない」と急展開しました。

 移転先とされる豊洲地区は、東京ガスの工場跡地です。30年間にわたって石炭からガスを抽出する工場が操業し、そのガス製造過程で発生した有害物質が大量に土壌に溶け込んでいます。鉛、ヒ素、水銀などです。ベンゼンにいたっては環境基準の4万倍超という高濃度。生鮮食料品を扱う市場の予定地としては致命的な欠陥です。

 石原知事は記者会見で「(土壌汚染は)日本の先端技術を持ってすれば克服できるという結論が出ている。それへの科学的反論はない」と大風呂敷を広げました。しかし、都の土壌汚染対策は、科学的な裏づけのない欠陥対策だという厳しい批判を受けています。都が情報公開を拒み、日本環境学会など専門家の検証を受けようとしないのも、「まず移転ありき」でまとめた都の「結論」への「科学的反論」から逃げ続けているからです。

 石原知事の暴走には、都議会第1党の民主党も大きな“責め”を負わなければなりません。昨年の都議選で「築地市場の移転に民主党はNO!」と公約していたのに、今年3月の議会で移転関連経費を含む予算に付帯決議を付けただけで賛成したからです。

 日本共産党は都民の反対の世論を受けとめ、都議会で、市場移転関連経費1281億円を削除する修正案を提出しました。都議選で「移転ノー」を公約した政党・会派が共同すれば、知事が計上した予算を削除することができたのです。形ばかりの「凍結」で予算に賛成した民主党の態度が、今回の流れをつくったことは重大です。

現在地での再整備こそ

 「私どもはだれ一人として、築地を去りたくて去る者はいません」。今年3月、都議会経済・港湾委員会で築地市場関係者がのべた言葉です。現在地での再整備こそ望ましいのに、石原都政がそれを遅らせてきたことに、本当の問題があります。「老朽化して危険だ」というのも移転強行の理由にはなりません。危険個所は、移転にかかわりなく、安全確保のための工事をするのが当然です。

 危険な豊洲移転は撤回すべきです。施設の規模を見直し、都が必要な財政投入をすれば、過大な業者負担を抑えて、より良い現在地再整備案を得ることができます。それが都に求められる責任です。





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