2010年11月3日(水)「しんぶん赤旗」
補正予算案
「富が循環する経済」というが
結局は「大企業支援」中心
政府は「経済の好循環」「『デフレ』脱却」とうたいます。しかし、そのために必要な肝心の内需・家計を底上げするまともな政策はなく、従来の自民・公明政権時代の政策の延長にとどまっています。
目立つのは「イノベーション(技術革新)拠点」支援の名で大企業の設備投資に補助金を出すなど大企業支援策が中心になっていることです。社会資本整備では「国土ミッシング(未整備区間)の解消」を名目にした高速道路建設や国際港湾(スーパー中枢港湾)・空港の整備など不要不急の大型公共事業を盛り込んでいます。
ワクチンの接種など国民の要求を一定反映したものも含まれていますが、菅首相が声高に叫ぶ雇用では補助金を出す程度で、雇用拡大につながる実効性に乏しいものです。国民の切実な声に応えるには不十分な内容が目立ちます。
家計、内需低迷のおおもとにあるのは国民の所得の減少です。一方で大企業は「空前の金余り」状態にあります。円高が急ピッチで進む中でも、自動車や電機など輸出大企業は収益を大幅に伸ばしています。大企業の巨額の資金を、投資や雇用の生きたお金として日本経済に還流させることが、日本経済の危機を打開するために必要です。
菅直人首相は「富が広く循環する経済構造を築く必要がある」(10月7日、日本共産党の志位和夫委員長の代表質問への答弁)と言わざるをえません。
しかし、相変わらずの大企業支援や大型公共事業中心の政策では、大企業がため込んだ内部留保を還流させることにはつながりません。
雇用拡大というなら真っ先にやるべきは、労働者派遣法の抜本改正や最低賃金の引き上げなどです。後期高齢者医療制度をただちに廃止することなど、安心できる社会保障制度の確立が必要です。中小企業と大企業との公正な取引ルールの確立などを通じて、大企業の過剰な資金を社会に循環させる経済構造に転換していくことが求められます。(矢守一英)