2010年11月10日(水)「しんぶん赤旗」
TPPにかかわる「基本方針」の閣議決定について
日本共産党委員長 志位和夫
政府が9日閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」について、日本共産党の志位和夫幹部会委員長は同日、次の談話を発表しました。
一、政府は本日、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、「関係国との協議を開始する」と明記した「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定した。「基本方針」は、TPPの協議開始を「情報収集」のためなどと言っているが、一方で、国内の「環境整備」として、国内農業との「両立」のための「農業構造改革推進本部」の設置、非関税障壁を撤廃するための規制緩和の推進などを明記しており、菅民主党政権が、TPP参加に向かって走り始めようとしていることは明白である。
TPPは、関税を原則撤廃し、農産物の輸入完全自由化をすすめるものであり、日本農業と地域経済に深刻な打撃となる。日本共産党は、協議開始の撤回を強く求める。
一、農業分野の関税を完全に撤廃すれば、日本の食料自給率は14%まで低下し、コメの自給率は1割以下になってしまう。TPPへの参加は、“おいしい日本のお米を食べたい”という消費者の願いにも反し、国民の食の安全と安定的な食料供給を大きく脅かす。
農産物の関税撤廃は世界のすう勢どころか、農産物輸出国であっても、農産物の平均関税率はEU20%、アルゼンチン33%、ブラジル35%などと高く、アメリカも乳製品や砂糖の輸入規制を続けている。日本はすでに平均12%まで関税を下げており、農業について「鎖国」どころか「世界で最も開かれた国」の一つになっている。
地球的規模での食料不足が大問題になっているときに、輸入依存をさらに強め、豊かな発展の潜在力をもっている日本農業を無理やりつぶすことなどというのは「亡国の政治」と言うほかない。
一、被害は、農業と食料の問題にとどまらない。経済産業省は、TPPに参加しない場合の雇用減81万人としているが、農水省は、参加した場合の雇用減を、農業やその関連産業などを合わせて340万人と、不参加の4倍以上にもなるとしている。北海道庁は、道経済が2・1兆円にのぼる損失を被るとしているが、その7割は農業以外の関連産業と地域経済の損失である。TPPへの参加は、日本農業を破壊するだけでなく、疲弊している地域経済の破壊をすすめ、雇用破壊をすすめるものにほかならない。
日本経団連などは、「乗り遅れるな」などと煽(あお)り立てているが、この「恩恵」を享受するのは自動車、電機などの一部の輸出大企業だけである。一部の輸出大企業のために、日本農業を破壊し、国民生活に多大な犠牲を負わせることなど断じて許されない。
一、自国の食料のあり方は、その国で決めるという「食料主権」――関税など国境措置の維持強化、価格保障などの農業政策を自主的に決定する権利を保障する貿易ルールこそが、日本にも、国際社会にも求められている。
日本共産党は、日本農業と地域経済、国民生活を土台から破壊するTPP参加に断固反対し、食料主権を保障する貿易ルールをめざす国民的な共同をよびかけるとともに、その先頭にたって奮闘する決意である。