2010年11月10日(水)「しんぶん赤旗」
主張
法人税率引き下げ
「やらなくて結構」ならば
日本経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)が、法人税率引き下げは「やらなくて結構」と言いだしました。といっても、負担増が続いてきた国民に遠慮したわけでも、厳しい財政にようやく思い至ったわけでもありません。
米倉会長は8日の記者会見でのべました。税率引き下げは「課税ベースの拡大(と引き換え)と言うなら(やらなくて)結構」―。
大企業優遇の租税特別措置を見直して税率引き下げの財源をつくるやり方では恩恵が目減りするから、それなら「やらなくて結構」と言い始めたわけです。
消費税増税を財源にと
政府税制調査会は法人税率を5%引き下げるための財源を検討しています。財務省は、大幅に拡充してきた研究開発減税や大銀行の法人税負担をゼロにしてきた「欠損金の繰越控除」など、大企業優遇税制の縮減を提示しています。単純合計で、その総額は4・5兆円に上ります。
優遇措置が減るなら「やらなくて結構」というのは「駄々っ子」のような言い分ですが、そんなかわいいものではありません。財界の税制要求に照らせば、米倉会長が「やらなくて結構」と言って求めているのは、「法人税率引き下げの財源は消費税増税で生み出せ」ということだからです。
日本経団連は「成長戦略」の第一に法人税率の引き下げを掲げています。大企業の実際の税負担はフランスやイギリスより低いにもかかわらず、日本の税率は高すぎるとして大幅な引き下げを求めています。その財源は消費税増税でまかなえというのが財界の年来の主張です。
民主党政権は財界の「成長戦略」を丸ごと受け入れて政権の「新成長戦略」に盛り込み、夏の参院選公約にも法人税減税と消費税増税を掲げました。参院選直前に菅直人首相が「消費税率10%」を打ち出したのは、この流れの中でのことです。しかし、民主党の方針は選挙で国民の手厳しい審判を受け、そのまま推進するわけにはいかなくなっています。
日本共産党の志位和夫委員長が10月7日の衆院代表質問で、「『空前の金あまり』状態にある大企業に、法人税減税でさらに数兆円ばらまいたとして、いったいどのような効果が生まれるのか」とただしたのに対して、菅首相はまともに答弁できませんでした。
その後、政府の国内投資促進円卓会議で首相は「法人税を下げても、そのお金がため込まれるのでは効果が薄い」と語りました。佐々木憲昭衆院議員の財務金融委員会での質問に、野田佳彦財務相も「法人実効税率を引き下げても本当に効果があるのか、議論の余地が相当ある」と答えています。
暮らしの予算に充てて
首相や財務相が「効果が薄い」、効果があるのか分からないと言っているにもかかわらず、民主党政権は法人税率引き下げを既定の路線として進めています。そんな減税の財源として、苦肉の策として持ち出してきたのが大企業優遇税制の縮減です。
当の財界が、それなら「結構です」と言っているのですから、効果も見いだせない法人税率引き下げはやめるべきです。財務省が示した大企業優遇税制の縮減案はぜひ実行して、国民の暮らしの予算に充てるよう求めます。