2010年11月10日(水)「しんぶん赤旗」
論戦ハイライト
農家は悲痛“おれの代でおわり”
TPP協議撤回 高橋議員迫る
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環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)参加に向かって走りはじめた菅政権。9日の衆院予算委員会で高橋ちづ子議員は、TPPと国内農業の再生とは両立はできないとして協議開始の撤回を求めました。
TPPについて政府は「関係国との協議を開始する」との基本方針をまとめました。13日から始まるAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議で表明します。
農家の声紹介
高橋 基本方針は事実上の交渉参加宣言にもとれる。APECでどう表明するのか。
首相 より自由にしていく方向に積極的に取り組むという精神をきちんと表明したい。
TPPは関税の撤廃が原則で、農産物の輸入完全自由化をすすめるものです。
高橋 政府が参加を検討すること自体、「守るべきものは守る」といってきた方針を転換することになる。
玄葉光一郎国家戦略担当相 例外品目については明確にはなっていない。
「例外なき自由化」をすすめることを認める答弁を受けて、高橋氏はさらに、菅首相が「開国と農業の再生を両立させる」と述べていることを指摘。「おれの代で農業は終わりだ」「息子には借金は継がせられない」と訴える農家の声を紹介し、両立はできないと強調しました。
高橋 こういう農家が来年も農業を続けようと思えるか。
鹿野道彦農水相 TPPに参加するとは決めていない。両立すべく努力したい。
政府は、TPPへの参加とあわせて農業分野の「構造改革」をすすめるとしています。
これには自民党政権時代に前例があります。日本とオーストラリアの経済連携協定が問題になった2007年。関税をゼロにした場合、食料自給率は12%に低下するという試算も出ていました。当時の予算委員会で高橋氏の追及に対し、自民党がすすめていた「構造改革」で担い手農家に土地と支援策を集中し、コストを引き下げても、完全自由化では米国等とたちうちできないことを農水省が認めていました。
譲歩迫られる
高橋氏は、規模拡大を進めてきた大規模農家ほど米価暴落の影響が直撃していると指摘。当時9割の農家が切り捨てられると批判された自民党の「改革」でさえ、農水省も関税ゼロではやっても駄目だといってきたのに、今回どういう改革をするのかと迫りました。
鹿野農水相は「戸別所得補償でコメ農家を対象に定額給付も行い、下落対策も盛り込んだ」と答弁。高橋氏は「それでは対応にならないことは誰が聞いても分かることだ。しかも、戸別所得補償があるからといって米価の下落に拍車をかけたのではないか」と批判しました。
高橋氏はTPPについて、米国が議長国となる来年のAPECでの交渉妥結を目指していると指摘。しかし、この間の日米の農業貿易は対等ではなく、市場開放を迫られる関係だったとして、牛肉、オレンジなどの例をあげ、「日本がたとえ協議でも、交渉の枠組みに入ることは、自由貿易を盾に譲歩と規制緩和を迫られるだけではないか」と強調しました。
さらにTPPの影響は農業だけにとどまらず、雇用など広範囲に及ぶことも示し、TPP交渉には協議にも参加すべきではないと主張しました。