2010年11月17日(水)「しんぶん赤旗」
APEC報告に対する
吉井議員の質問
衆院本会議
日本共産党の吉井英勝衆院議員が16日の衆院本会議で行ったAPEC報告に対する質問は次の通りです。
米国オバマ政権はTPP、環太平洋パートナーシップ協定を米国の通商政策、対アジアを中心とした輸出倍増計画の柱に位置づけ、強力に進め、日本の対応を求めています。菅総理が所信演説で「参加検討」を突如打ち出し、「協議開始」を強行するのはなぜか。「東アジア共同体」、ASEAN+6の方針を大転換し、米国主導のTPPにかじをきったのはなぜか。玄葉大臣は、2国間EPA(経済連携協定)が進められなかったらTPPというハイウエーに乗ることになったと答弁した意味は何か。
TPP参加交渉国はAPEC加盟の21カ国・地域のうち9カ国にすぎず、中国も韓国も入っていません。9カ国のうちチリなど6カ国と日本は、すでにEPAを締結・合意しています。日本が参加する意味合いは米国と豪州にあり、中核は事実上の日米FTAなのではありませんか。
米国主導のTPPは例外なくすべての品目の関税をゼロにし、完全な自由化を求めています。農畜産物をはじめあらゆる品目、サービス、金融、労働力の移動から投資まですべてに及ぶのです。総理は「平成の開国」といい、世界から「立ち遅れている」かのようにいいますが、本当にそうなのでしょうか。
日本農業は、鎖国状態どころか世界で最も開かれた市場となっています。農産物の平均関税率は韓国が62・2%、EUが19・5%などに対して、わが国は11・7%。世界最大の農産物輸出大国であるアメリカやオーストラリアに対してわが国の食料自給率は40%にすぎません。
北海道はじめ8道県議会や全国町村会が参加反対決議を行っています。農水省の影響試算によっても日本農業と地域経済に壊滅的影響を及ぼすことは明らかではありませんか。
農林水産業はいったん失うと取り返しのつかない多面的機能をもっており、お金だけに換算できるものではありません。前原外務大臣は、「日本のGDPの1・5%の第1次産業を守るため、98・5%が犠牲になっている」と発言しました。暴論であり、前原発言の撤回をもとめます。
TPPがめざす「シームレス」すなわち「切れ目のない地域の形成」とは誰のためか。自動車、電機など輸出大企業は多国籍企業に成長し、海外生産拠点を設け、国際生産ネットワークを築いています。シームレス市場の形成は、日本経団連、財界の一貫した要求です。ある自動車メーカーは海外生産へ切り替え、そこを輸出拠点として豪州への輸出拡大をはかることを表明しています。TPPは、国内立地と雇用の拡大を保障するものではなく、産業と雇用の空洞化を加速しかねないものではありませんか。
日米首脳会談で菅総理は、安保改定50周年にあたり、米軍の引き続くプレゼンス(駐留)が必要との認識を示し、普天間基地の辺野古「移設」に「5月の日米合意をベースに最大限の努力をする」と表明しました。県民の「県内移設反対」の総意を真っ向からふみにじるものです。
アフガン本土に自衛隊医療部隊の派遣を検討すると表明したことも重大です。国際治安支援部隊(ISAF)への自衛隊派遣は、憲法9条から問題となり、自民党でさえ踏み出せなかったものです。
総理は「いま歴史の分水嶺(れい)にたっています」といいながらいつまで日米同盟にしがみつく政治をつづけるのでしょうか。日米同盟を絶対視するのではなく、平和、人権、対等、平等、互恵の東アジア共同体の構築を目指す政治への転換こそもとめられているのです。