2010年11月19日(金)「しんぶん赤旗」

主張

医官のアフガン派遣

NGOの復興支援を妨げるな


 戦争のまっただなかにあるアフガニスタンに政府が自衛隊の医官などを派遣しようとしていることに危ぐの声が広がっています。

 アフガニスタン本土への自衛官派遣は初めてのことです。今月末に事前調査団を現地に送り、年内にも派遣を強行する構えです。派遣するのは医官と看護官10人程度で、外国軍の医療兵を育成するための教育・訓練にあたります。しかしアフガニスタンの人々からは外国軍の一部とみられ、反発を買うのは必至です。それはまた復興支援に従事する非政府組織(NGO)などの日本人関係者までも危険にさらすことになります。

米国の歓心買うために

 自衛官派遣問題は日米首脳会談(13日)を前に、11月に入って突如としてもちだされたものです。北沢俊美防衛相は11日の衆院安保委員会で派遣のための「調査団をださせてもらいたい」とのべ、菅直人首相は首脳会談でオバマ米大統領に、「前向きに検討している」と表明しました。事実上、日本政府が自衛官派遣を約束したのと同じです。国会審議も抜きにして自衛官派遣を米政府に約束するなど許されることではありません。

 政府が突如、医官・看護官の派遣をもちだしたのは、沖縄の米海兵隊普天間基地の「県内移設」が沖縄県民の反対で頓挫しているなど、米政府がつのらせている日米関係への「不満」をやわらげ、菅政権への信任を厚くしたいからにほかなりません。首脳会談で、沖縄県民の総意である「県内移設」反対と普天間基地の閉鎖・撤去の要求を米側に伝えもせず、あろうことか憲法違反の自衛隊派兵をもちだして米政府の歓心を買うなど言語道断です。

 日本共産党の井上哲士参院議員の追及に北沢防衛相が、自衛官の活動は「ISAF(国際治安支援部隊)のプログラムのなかで想定」とのべたことも重大です。ISAFは北大西洋条約機構(NATO)軍の指揮下にあり、やっている活動は米軍と一体の戦争そのものです。ISAFのなかで、負傷兵を治療する医療兵を自衛隊が教育・訓練するのは、戦争の一部を担い、米軍などの武力行使と一体となるのは明白です。外国の武力行使と一体の活動は憲法違反という政府見解にも反することになります。

 見過ごせないのは、自衛官の派遣によって自衛官だけでなく、アフガニスタンの復興支援に従事するNGOなどの日本の関係者までもが危険にさらされかねないことです。アフガニスタンの人々は、米軍やNATO軍などの大量殺りく攻撃や誤爆などで多くの民間人が犠牲にされており、外国軍への憎悪を強めています。自衛官の派遣が知られれば、軍事にかかわりのない日本人関係者も攻撃の対象にされる危険性が増大します。

非軍事支援の強化こそ

 アフガニスタンなどで活動している日本国際ボランティアセンターは、「強く懸念」するとの声明をだしました。アフガニスタンの復興支援に携わる日本人関係者を危険にさらすべきではありません。

 自衛官の派遣は、外国軍の撤退を強く求めているアフガニスタンの人々の願いに反します。いま日本にとって必要なことは軍事的関与ではなく、NGOや文民などによる非軍事の復興支援を強めることです。これこそ憲法をもつ日本の最大の役割です。





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