2010年11月20日(土)「しんぶん赤旗」
食料主権 世界の流れ
TPP問題 市田書記局長の質問
19日の参院予算委員会で、焦点となっている環太平洋連携協定(TPP)を取り上げた日本共産党の市田忠義書記局長・参院議員。米国いいなりに食料自給率向上の国民的願いに逆行する危険な協定のねらいが浮かびあがりました。
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市田氏 「雇用も里山も崩壊する」
菅首相 「開国と農業両立」くり返す
東京でも北海道でも相次いで開かれたTPP反対の大規模集会。どんな思いでたちあがったと思うのか、とただす市田氏に、菅直人首相は「開国と農業の再生を両立させる」と答えるだけ。市田氏は「国民の血の出るような叫びが分かっていない」と批判し、農業と暮らし、雇用、地域経済への影響について鹿野道彦農水相に明らかにさせました。
北海道では、農業、関連産業、地域経済などに与える経済的な損失額は2兆1254億円。農水省は、国内農水産物の生産額は4兆5000億円減少し、食料自給率は40%から13%に転落。就業機会の減少も350万人減少するとしています。
市田氏 例外なき関税撤廃が求められ、日本の農業は壊滅、関連産業も廃業に追い込まれ、地方の雇用は失われる。日本の農山村地帯は見る影もなくなるだろう。
菅首相 すべての関税をゼロにした仮定だ。両立するための対応をする。
市田氏 「鎖国どころか十分開かれている」
1戸当たりの農地面積は北海道20・5ヘクタールに対し、EUは13・9ヘクタール。肉用牛飼養頭数は同178頭に対しアメリカは84頭―。市田氏は、すでにEUやアメリカ並みの経営規模になっている北海道農業でさえ壊滅的打撃を受けるとのべ、「“両立”は不可能だ」と強調しました。
政府は日本の農産物関税率は11・7%とアメリカに次いで2番目に低くなっていると報告。(グラフ参照)
市田氏は、「(政府は)農林水産物を中心に“鎖国”状態になるかのようにいうが、“鎖国”どころか十分すぎるほど開かれている。関税率の低さが日本農業の疲弊、困難の主要な原因だ。TPPへの参加は、崖(がけ)っぷちに立っている人を突き落とすようなものだ」と述べると、他党議員からもいっせいに「そうだ」の声があがりました。
TPP参加で低下する食料自給率について国民はどう思っているのか―。鹿野農水相は、内閣府の世論調査(10月)で食料自給率の引き上げを求める人は9割を超えていることを報告しました。
市田氏は、圧倒的国民は、輸入に頼らず、安全で安心な食料は日本の大地からと願っていると強調し、TPP参加は国民の願いに逆行すると指摘しました。
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市田氏 「狙いは農産物輸出大国の米・豪へ門戸開放」
現在のTPP参加国は交渉参加国と合わせ9カ国です。このうち日本とEPA(経済連携協定)を結んでいるのは5カ国です。(図参照)
市田氏は、「結局2国間FTA(自由貿易協定)などが進まないアメリカ、オーストラリアという農林水産物輸出大国に門戸を開いてやろうということだ。日本にとってTPP参加は、日米FTAの締結と同じ意味を持つ。日本で参加を強く求めているのは、日本経団連、なかでも自動車、電機などの輸出大企業だ」と強調しました。
TPP参加の場合、日本のGDP(国内総生産)は0・48から0・65%しか押し上げられません。市田氏は「日本全体ではほとんど増えない。一部輸出大企業の利益のために、農業、漁業、林業、それにつながる地域社会もめちゃくちゃになる。これを守るルールを考えるべきだ」と述べました。
さらに市田氏は、農林水産業は、「国土の保全、環境、景観の保持、文化の継承など多面的な機能を持っている」と指摘。政府はその機能の貨幣評価額について、農業8兆円、林業70兆円、漁業11兆円(日本学術会議報告)と答えました。
市田氏は、「農業は8兆円のうち、関税の撤廃で3・7兆円が損なわれ半減する」と主張しました。
市田 今、世界では、市場任せにする害悪が明らかになり、「食料主権」を保障するルール確立を求める流れが広がっている。
菅首相 何もやらないで、農業が自然に立ち直ることにはならない。食料主権を確立できるような農業にしていきたい。
市田 後継者が育たないのは農業だけでは食べていけないからだ。輸入自由化を行い、価格も流通も市場任せにしてきたからだ。
市田氏は、「世界の流れに真っ向から反対するアメリカなどの進める潮流に追随していっていいのか」と主張。
TPPは農業だけにとどまらず、労働市場の開放まで含まれることをあげ、「市場原理万能で何でもかんでも市場任せにするやり方は、農業や環境、雇用をみても破たんするのは明らかだ。農業、食料、環境、労働など市場任せにさせたら成り立たなくなるものを守るルールづくりこそ21世紀のまともな経済発展の方向だ」と迫りました。
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