2010年11月24日(水)「しんぶん赤旗」

消費税と社会保障財源

大門議員 大企業・大金持ちに応分の負担を

海江田担当相 日本の再分配機能は低い


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(写真)質問する大門実紀史議員=22日、参院予算委

 日本共産党の大門実紀史議員は22日の参院予算委員会で、社会保障の財源は消費税に頼らずに、高額所得者の応能負担の徹底と大企業の社会的責任を果たさせる方向で解決すべきだと主張しました。

 政府と与党は10月28日、税制と社会保障の「一体改革」を検討する社会保障改革検討本部(本部長・菅直人首相)を設立しています。大門氏が同本部の案は「消費税増税が前提となっているのか」とただしたのに対し、野田佳彦財務相は「一つの選択肢になりうる」と答えました。

 大門氏は「消費税は所得の少ない人ほど重くなる逆進性をもつ税金であり、所得再分配に逆行する。財源は応能負担でまかなうべき」と主張しました。

 税や社会保障がもつ所得再分配の機能は、日本ではどうなっているのか。大門氏が、税と公的移転(おもに社会保障の現金給付)の再分配効果についての国際比較データ(グラフ1)を示すと、海江田万里経済財政担当相は、「OECD(経済協力開発機構)の中で極めて低い」と認めました。

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優遇税制廃止迫る

 ついで、大門氏は、政府税制調査会(税調)に出された所得階層別の所得税負担率を示しました(グラフ2)。所得税は累進課税なので、本来は所得が上がるほど、税の負担率は高くなります。ところが所得が1億円を超えると、所得税負担率が下がっています。所得1億円超の階層では、所得に占める株式譲渡所得の割合が急速に増加しますが、株式譲渡益や配当は現在、 証券優遇税制によって税率が20%から10%に軽減されているためです。

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 大門議員 お金持ち(高額所得者)から税金をあまりとっていないということだ。

 野田財務相 所得税は一定の所得水準から累進性を失っている。原因の一つとして金融所得への低い税率が適用されていることが考えられる。

 大門氏は、政府税調でも証券優遇税制の廃止が議論されており、「廃止を決断すべきだ」と主張。野田財務相は「時限措置で、2012年に本則に戻すことになっている。これを踏まえて議論している」とのべました。

欧州では企業負担

 ヨーロッパ諸国の社会保障が充実しているのは、消費税率が高いからだとの主張が広められています。この点について、大門氏は、日本と欧州各国の社会保障財源の内訳(グラフ3)を示して反論しました。消費税の割合は、各国とも1割程度でしかありません。

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 大門氏は「ヨーロッパの社会保障財源の一番を占めているのは企業の社会保険料負担。ヨーロッパの社会保障が充実しているのは、消費税が高いからではなく企業がきちんと社会保障の財源を負担しているからだ」と指摘しました。

 大門氏は、「日本は、法人税などの負担を含めても企業負担が欧州に比べかなり低い」と強調。財界の要求に従って法人税を5%下げ、消費税を10%に引き上げれば「社会保障費に占める消費税の割合は現在の倍近くになってしまう」と警鐘を鳴らしました。

 大門 社会保障の財源はみんなで負担すべきものだ。しかし消費税増税で社会保障をまかなう考え方は、結局、大企業の社会保障に対する責任を免除し、国民の負担だけを増やすことになるのではないか。

 菅首相 これ(グラフ)だけをみて、その通りだと申し上げられない。ここは違うというのももう少し検討したい。

 大門 正面から答えていただきたい。国民負担を増やし企業負担を減らす方向でいいのか。

 菅首相 法人税が他国に比べ高いと、雇用が失われるということを心配している。

 菅首相はこれまで、大企業に200兆円の内部留保があり、これを還流させる必要があると述べていました。大門氏は、「社会保障財源は余裕のある大企業にきちんと負担させるべきだ」と主張しました。


 OECD 経済協力開発機構の略称。第2次大戦で疲弊した欧州経済の復興のために米国側の提案で欧州の16カ国が結成(1948年)した欧州経済協力機構が母体。これに米国やカナダが加わり、61年に発足。日本は64年に加盟。現在33カ国で構成。

 ジニ係数 イタリアの統計学者・社会学者のジニが考案した所得分配の不平等さを示す経済指標。0から1の数値で表し、所得格差が広がるほど1に近くなります。





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