2010年11月26日(金)「しんぶん赤旗」
放送法改定案が衆院通過
塩川議員反対討論「行政関与の恐れ」
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衆院総務委員会が25日開かれ、放送法等改定案と修正案、高度テレビジョン放送施設整備促進臨時措置法(高テレ法)改正案が採決、本会議に緊急上程され衆院を通過しました。日本共産党は放送法改定案に反対。NHK経営委員会への会長の参加などを削除した修正案と、高テレ法の改正案には賛成しました。
これに先立ち、日本共産党の塩川鉄也議員が質問し、放送法改定案は行政が放送内容に行政が関与しかねないことや、放送の定義を広げ、規制の対象拡大の懸念を払しょくできないと、問題点をただしました。
塩川氏は、IPマルチキャストやインターネット放送などをあげ、「放送」と「通信」の区分の基準を示すよう迫り、平岡秀夫副大臣は「技術的に細かく定義することは困難」と答弁。塩川氏は「技術の進展で解釈が変わるのは困る。法文上の明確な規定が必要だ」と主張しました。また塩川氏は、総務大臣がどのような場合に業務停止命令を出すのか明らかになっておらず、放送の自由を侵害する懸念がぬぐえないと指摘しました。
反対討論で塩川氏は「第三者による独立行政委員会の設置が必要だ」と訴えました。
さらに、離島が多い沖縄で地デジ普及が遅れていることを示し、来年7月のアナログ停波は延期するべきだと強く主張しました。
解説
放送と通信の規定不明確
放送・通信技術の進展は著しく、時代に即した法体系の整備は必要です。しかし、今回の放送法改定案から浮かぶのは、放送文化の向上や市民参加という課題より業界の利益に走り、とりわけ放送・通信行政を監督する総務相の権限強化です。
典型的なのが、放送施設を持たない事業者でも、総務大臣が「認定」すれば番組制作に参入できるようにしたことです。塩川鉄也衆院議員は「業務停止命令の権限を与えられた大臣が事業者を直接認定することは、介入の余地を生む恐れがある」と指摘します。
また、インターネットの動画は「放送」か「通信」か、条文では明確な規定はありません。「将来、インターネットやブログも『放送』と解釈され、規制が加えられるのではないか」。市民メディア関係者や放送研究者の懸念は増すばかりです。
もともと、改定案は前国会で廃案になったもの。「修正」が加えられても問題は解決していません。慎重な議論が求められているのにもかかわらず、衆院での審議時間は、わずか2時間40分でした。
民主党は放送・通信行政を総務省から切り離す「独立行政委員会」構想を政策集で掲げていたはずです。自らの政策とは正反対の改定案を押し通した民主党政権の責任が問われます。(佐藤研二)
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