2011年1月4日(火)「しんぶん赤旗」
渡邉第一生命幹部(現生保協会会長)が選挙行脚
自・民の金融族議員応援 09年総選挙
不払い処分の翌年
第一生命(東京都千代田区)の渡邉光一郎社長が、同社専務執行役員だった2009年の総選挙で自民、民主両党などの候補者28人を応援して全国行脚をおこなっていたことが、3日までに関係者の証言と本紙が入手した内部文書で明らかになりました。同氏は10年、同社社長、生保協会会長に就任しています。08年には大手10社が金融庁の業務改善命令を受けている生保業界は、不払いをめぐる献金や接待などの政界工作が問題になっていますが、選挙で政治家支援に全力をあげる政界との癒着ぶりが浮き彫りになりました。(生保「不正」取材班)
渡邉氏の選挙行脚が判明したのは、09年8月18日公示(30日投票)の総選挙です。激励訪問を受けたのは自民、民主両党を中心に28人の前職の候補者(自民24人、民主2人、国民新1人、無所属1人)です。
第一生命の内部文書などによると、渡邉氏は18日の公示日に、群馬県前橋市の自民党の尾身幸次元財務相(群馬1区、落選)の出陣式に参加。同日、都内の3候補の陣営を“陣中見舞い”しています。
訪問先の一つ、与謝野馨元財務・金融・経済財政担当相(東京1区、現・たちあがれ日本共同代表)の秘書は「18日に私が渡邉氏と会った。21日の(第一生命)調査部部長の訪問も私が受けた」と認めています。
翌19日に、渡邉氏は京都へ。その後、長野県や東海地方を巡り、後半戦の24日からは福島県や九州、中国、北海道、富山県、四国とかけ歩きました。
公示日から投票日前日までの12日間のうち9日を、選挙応援にあてる熱心さ。17都道府県を行脚し、推定移動距離は1万キロ、政党の党首並みの奔走ぶりです。
渡邉氏は当時、第一生命の専務執行役員として、同社の政界工作部門である調査部の担当でした。支援した候補者には、尾身、与謝野両氏ら金融、財政関係の大臣経験者や山本明彦前金融担当副大臣(当時、愛知15区、落選)など、各党の首脳や財務金融部会などの幹部が目立ちます。
ある生保業界関係者は「選挙になると、本社調査部から『○○先生の事務所に何人を動員しろ』と支社などに指示を出す。他社を出し抜いて議員に印象づけることが目的なので、議員や秘書に名刺を渡し、何人動員したのかをアピールしていた」と話します。
第一生命は、応援する国会議員を「A」を頂点に「E」までの5段階にランク付け。議員の後援会に入る人の名簿を提供したり営業所の朝礼などで、議員があいさつできるように便宜を図っていました。
第一生命は「公職選挙法や政治資金規正法等の法令を遵守し、常識の範囲内で慎重に検討の上、実施しております」と本紙に回答しています。
■関連キーワード