2011年1月5日(水)「しんぶん赤旗」
主張
TPP参加阻止
新しい年を食と農を守る年に
お正月はいかがでしたか。地方色豊かな料理を、味わわれた方も多かったのではないでしょうか。農漁業と食の営みは生きる糧であり、文化の源です。それを守り豊かにすることは、国民の権利であり、政治の責任です。
日本の食と農漁業は、食料の外国依存と地方の切り捨てによる自給率の異常な低下などで、残念ながら豊かさと多様性が失われつつあります。それをいっそうひどくするのか再生に道を開くのか、今年は重大な分岐になりそうです。
市場原理優先の社会
その最大の理由は、菅直人内閣が環太平洋連携協定(TPP)への参加をめざしているからです。TPPは、関税をはじめ「ヒト、モノ、カネ」にかかわる経済的な国境を完全に自由化することを基本にした、連携協定です。
TPPに参加し関税を撤廃した場合に、日本の農業生産は半減し、食料自給率は13%にまで低下すると、農林水産省は試算しています。日本の農業は壊滅的な打撃をうけるのです。それは豊かな食文化の基礎を根底から崩すとともに、農林漁業が支える地域経済をはじめ、国土・環境の維持など国民生活の多くの面で深刻な事態を引き起こすのはあきらかです。
しかもTPPは、関税の撤廃だけでなく、食料の安全基準、医療制度や保険制度、公共事業の入札など、多くの分野での規制の緩和・撤廃も盛り込まれています。「国のあり方」として「弱肉強食」がいっそう貫かれることになり、一部の輸出大企業は潤っても、国民の多くは市場原理優先の社会に放り出されることになるのです。
財界とマスメディアの多くは、日本のTPPへの参加が景気回復の切り札であり、参加しなければ国際的に「孤立する」などと異常なキャンペーンを展開しています。これを受け、菅内閣は6月にも参加表明しようとしています。
重視しなければならないのは、TPP参加をめぐって、農業など1次産業と輸出産業を対立させ、農業の「国際競争力」さえつければ国民全体の利益になるかのように言い募り、国民の分断を策する攻撃が加えられていることです。
こうした異常な対応に対して、農林漁業団体や地方自治体、食品産業、医療関係者など、大きな影響を受ける分野から強力な反対運動が起きているのは当然です。各地で反対集会やシンポジウムが開かれ、TPP参加阻止の一点での共同が生まれ、署名運動もJAグループが1000万を目標に取り組んでいるのをはじめ、さまざまな運動が展開されています。
これらのたたかいをさらに大きく発展させるとともに、政府やマスメディアによる国民を分断するキャンペーンを打ち破って、世論を広げることがもとめられます。
国民本位の政策への条件
そのためには、TPPの本質を広く知らせて幅広い国民的な議論をつくし、国民を苦しめてきた、市場原理一辺倒で大企業に奉仕し、アメリカに追従する経済政策からの脱却を求めていくことです。国民生活中心の経済にしていくことと、TPP参加が相いれないことも明らかにしていくことです。
TPP参加阻止のたたかいは国民本位の経済政策への転換と農林漁業再生に道を開くことにつながります。新しい年の運動の飛躍に力をつくすことを呼びかけます。