2011年1月8日(土)「しんぶん赤旗」

薬害イレッサの和解勧告

亡き娘、安どさせたい

原告会見


 「一つの区切りになりました。(被害者なのに)非難の多い裁判でした」。肺がん治療の抗がん剤「イレッサ」の被害者らが国と輸入販売元のアストラゼネカ社(大阪市)に損害賠償を求めた薬害イレッサ訴訟で、実名を公表して「がん患者の命の重さを問う」と訴えてきた原告団代表の近澤昭雄さんは提訴から6年間のたたかいをそう振り返りました。

 裁判所が国と企業に救済責任を求めた和解勧告を受けての会見で近澤さんは、「抗がん剤で亡くなってもしかたがない」という風潮のなかで、抗がん剤の副作用死を対象にした被害救済制度の創設を求めた訴訟の目的について正しく理解されなかった苦労をにじませました。「すごくホッとした」という会見の言葉に実感がこもっていました。

 近澤さんは次女の三津子さん(当時31歳)をイレッサ投与から1カ月半で亡くしました。間質性肺炎を起こして、苦しみのために横になって眠ることもできず、ベッドに座った状態でいるという壮絶な闘病でした。「夢の新薬」を信じて使ったと近澤さん。「今のがん患者に安心して治療を受けてもらえるように、すこしでも形に残していきたい。そうすれば亡くなった子どもも安どしてくれると思う」と涙を流して話しました。

 弁護団の水口真寿美弁護士は「イレッサ承認時の添付文書について国と製薬会社の責任を認めたのは画期的です」と評価。今後の和解協議で、未提訴の被害者についても議題に乗せたい考えを示しました。

 大阪訴訟の弁護団長の中島晃弁護士は「承認時点からの責任を指摘しており、踏み込んだ判断だ。和解に向けて全力を尽くしたい」と述べました。

 原告団・弁護団は「薬害防止において高い歴史的な意義がある」との声明を発表しました。

 声明は、「致死的な間質性肺炎について十分な注意喚起を行わなかった被告企業および被告国の責任を明確にしている点において高く評価できる。とりわけ、承認時の初版添付文書についての被告の責任を指摘している点は画期的である」と評価。被告のアストラゼネカ社と国に「裁判所の勧告を真摯(しんし)に受け止めて、和解協議に応じることを強く求めたい」と迫っています。





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