2011年1月10日(月)「しんぶん赤旗」

「ワンパッケージ」で賃上げ政策を

NHK番組 志位委員長が提案


 日本共産党の志位和夫委員長は、9日放送のNHK「日曜討論」各党代表インタビューに出演し、国民の生活を立て直して深刻な日本経済の低迷を打破するために、政治の責任で「ワンパッケージ」の賃上げ政策を実行に移すことを提案しました。


 志位氏は、日本経済の最大の問題は大企業の内部留保が244兆円に達して空前の「カネ余り」になる一方で、働く人の賃金(年収)が12年間で61万円も減り、家計・内需が低迷して経済成長が止まった国になっていることだと指摘。「この事態を打破するために、『ワンパッケージ』で賃上げ政策を実行に移すことを提案したい」と力をこめました。

 志位氏が提起したのは、(1)労働者派遣法を抜本改正して非正規社員を正社員にする(2)中小企業にきちんと手当てをしながら最低賃金を時給1000円以上に引き上げる(3)雇用の7割を抱える中小企業を本格的に支援して大企業の労働者との賃金格差をなくしていく(4)日本航空のような無法解雇をやめさせて解雇規制のルールを強化する―という4本柱。

 「政治の責任で賃上げを主導していくことを強く求めていきたい」と強調しました。

内政・外交―改革の展望語る

 志位氏は、“民主党政権に裏切られ、自民党にも戻れない”という深い閉(へい)塞(そく)感が広がる中、「米国・財界中心」の政治のゆがみを正せばどんな展望が開けてくるかを「大いに語っていきたい」と新年の抱負を表明。社会保障、税制、農業、外交などさまざまな分野で、日本共産党がめざす改革の展望を語りました。

 また、いっせい地方選挙について、「自治体の原点は『住民の福祉と暮らしを守る』ことにありますが、実際に起こっているのは自治体の独自の福祉の施策を切り捨て、大企業呼び込みのために莫(ばく)大(だい)な税金をつぎ込むことです。これを改めるために、共産党を大いに伸ばしていきたい」と決意を述べました。


志位氏が提起した賃上げ政策4本柱

▽労働者派遣法を抜本改正して非正規社員を正社員にする

▽中小企業にきちんと手当てをしながら最低賃金を時給1000円以上に引き上げる

▽雇用の7割を抱える中小企業を本格的に支援して大企業の労働者との賃金格差をなくしていく

▽日本航空のような無法解雇をやめさせて解雇規制のルールを強化する


2011年政治にどうのぞむか

NHK番組 志位委員長の発言

 日本共産党の志位和夫委員長は9日、NHK「日曜討論」の「2011年 各党代表に問う 政治はどう動くのか」に出演し、インタビューに答えました。聞き手は神志名泰裕解説委員。


2011年の戦略

政治のゆがみを正したら、どんな展望が開けてくるか大いに語りたい

 神志名泰裕解説委員 今年の(「党旗びらき」での)新年のあいさつでおやっと思ったのは、志位委員長が、政党の評価の基準は政府の悪政を批判する力ではないと話していました。表現は悪いが、共産党らしからぬ表現ではないかと思いましたが、どういう意味なんですか。

 志位和夫委員長 いま多くの国民のみなさんのなかに、民主党政権に裏切られた、かといって自民党に戻るわけにもいかないという、深い閉塞(へいそく)感が広がっていると思う。

 そういうもとですから、政治の現状に対する批判だけでは足らないと。いまの閉塞を打ち破る展望を示す力が問われている。

 私たちは、いまの閉塞の根っこには、外交でも内政でも、米国・財界中心の政治のゆがみがある(と考えています)。ここを正したらどんな展望が開けてくるか、共産党が政権を担ったとしたら何をやるか、これを大いに語っていきたいということを、新年の抱負として述べました。

 神志名 そういう意味なんですね。

 志位 はい。

通常国会への対応

小沢氏疑惑は証人喚問で、政治の中身をただす論戦で勝負する

 神志名 次に、通常国会の入り口の問題で、小沢一郎元民主党代表と仙谷さん(官房長官)らの問題があるが、共産党としては対応はいかがですか。

 志位 小沢さんの問題は、これは議決をしたら出席が義務付けられる、そして偽証したら罰せられる証人喚問で、きちんと真実を話してもらうということを強く求めていきたい。

 それから2人(仙谷由人官房長官、馬淵澄夫国交相)の問責決議の問題については、私たちがそれに賛成したのは、菅政権そのものの外交・内政の全体が、国民の利益に反している。その内閣の一員だからという理由からです。私たちは、菅政権に対して政治の中身を大いに国会で論戦して、その基本姿勢を正していくという、論戦で勝負をする。ですから、2人を辞めさせなかったら審議拒否という立場はとりません。

暮らしと生活の重点

こんな“賃下げ社会”でいいのか――「ワンパッケージ」の賃上げ政策実行を

 神志名 政策の問題ですが、暮らし・生活をどうするのかということが大きな課題ですが、なにを重点に取り組まれるか。

 志位 いまの日本経済の最大の問題を一言で言いますと、働く人の賃金がどんどん減り続けて、12年間で年収(平均)61万円も減っている。こんな“賃下げ社会”でいいのか。これは大問題だと思うんですね。その一方で大企業のため込み金、内部留保が244兆円まで積みあがって「空前の金あまり」になっている。その結果、家計、内需が低迷し、日本は「成長が止まった国」になってしまっている。

 この事態を打破するために、私たちは「ワンパッケージ」で、賃上げ政策を実行に移すべきだということを提案したいと思うんですね。

 神志名 賃上げですね。

 志位 賃上げ政策です。

 一つは、労働者派遣法を抜本改正して、非正規社員を正社員にする。

 二つ目は、最低賃金、中小企業にきちんと手当てをしながら、時給1000円以上に引き上げる。

 三つ目は、雇用の7割を抱えている中小企業への本格的な支援で、大企業で働く労働者との賃金格差をなくしていく。

 四つ目は、日本航空に示されているような無法解雇はやめさせて、解雇規制のルールを強化する。

 これを「ワンパッケージ」で打ち出して、そして賃上げを政治の責任で、政治が主導してやっていくということを、強く求めていきたいと思っております。

社会保障と税制改革

やるべきは消費税増税でなく、社会保障拡充、大企業・大資産家に応分の負担を

 神志名 社会保障と税制改革の問題で、菅首相が野党側との協議を呼びかけていますが。

 志位 社会保障といいますけど、実際に進んでいることが何かと言いますと、例えば後期高齢者医療制度の問題でも、差別医療という仕組みは温存したまま、負担増をもっとひどくする。あるいは高すぎる国民健康保険料が払えなくて命を落とす方が相次いでいるのに、それをもっと保険料を引き上げるという方向の号令をかける。切り捨てばかりです。

 それから財政が大変だと言いながら、法人税の1兆5000億円という規模で減税をやる。証券優遇税制を2年延長する。大企業と大資産家には減税のばらまきをやる。

 社会保障は削り、(大企業・大資産家への)減税のばらまきやりながら、庶民には消費税増税というのは、これはとても認められません。

 いまやるべきは、社会保障を削減から拡充に転換する。そして、大企業・大資産家への行きすぎた減税を正して、応分の負担を求める。この改革だと思います。

TPPへの対応

多くの国は参加していない――国民運動で阻止、食料主権を保障する貿易ルールを

 神志名 もう一つTPP(環太平洋連携協定)などの貿易の自由化の問題。それに関連して農業問題がありますが、どうですか。

 志位 これ(TPP)について、先ほどから聞いておりますと、「平成の開国」だと、「バスに乗り遅れたら大変だ」と、盛んに言っていましたが、まわりを見ますと、たとえば中国、韓国、ロシア、フィリピン、タイ、インドネシア、みんな参加していませんよね。

 それで、関税を撤廃するというのがTPPの仕組みですから、そういうことになりますと、たとえば(日本の)食料自給率は(現在)40%ですが、13%まで落ちてしまう。日本のお米の90%以上がつぶされてしまう。農業が破壊され、雇用が破壊され、地域経済が破壊され、国土と環境が破壊されるという事態になりますから、私たちはこれは絶対に反対という立場です。

 多くの農業者のみなさんだけでなく、消費者のみなさんも含めて国民運動でこれは阻止したい。そしていま食料主権という、自国の食料は自分でつくる権利をもつというのが当たり前。これが世界の流れになっていますから、それにのっとった貿易ルールをつくる。これを主張していきたいと思っています。

普天間基地問題

説得すべきは沖縄でなく米国――紛争は国際的道理に立った“外交力”で解決を

 神志名 外交では普天間基地の「移設」問題。これについてはどうでしょうか。

 志位 これは(昨年11月の)沖縄の県知事選挙で、私は「県内移設反対」と「普天間基地の撤去」という県民の総意はいよいよ揺るがないものになったと思うんですね。ですから、菅さんが説得すべきは沖縄ではなくて、米国政府を説得すべきであって、(普天間基地の)無条件撤去を求めていくというのが私たちの立場です。

 基地押し付けをしようという勢力は、尖閣の問題、あるいは千島の問題、朝鮮半島の問題などがあるから、“(日米)安保(条約)が大事だ、沖縄(の基地)はしょうがない”と、こういうふうに言うわけですが、こういう紛争問題は、軍事同盟という“戦争力”で解決すべき問題ではないと私たちは思う。やはり国際的道理に立った“外交力”こそ問われているんですね。9条を持つ国の出番だと思いますね。

選挙制度見直し

民意を反映する比例中心の制度に――衆院比例削減には反対

 神志名 2点、手短にお聞きしたいが、参議院の1票の格差の是正についてはどう対応しますか。

 志位 1票の格差の是正は当然必要になってきます。そのうえで選挙制度については、参議院も衆議院も民意を反映する比例代表中心の制度にしていく。これを衆議院の比例削減にリンクしていくというのは、これは民意を切り捨てる道ですから、反対です。

いっせい地方選挙

「住民の福祉と暮らしを守る」ことが自治体の原点――共産党を大いに伸ばしたい

 神志名 統一地方選挙は端的にいって何を訴えられますか。

 志位 自治体の原点というのは「住民の福祉と暮らしを守る」と、ここにあるわけですが、実際に起こっているのは自治体の独自の福祉の施策は切り捨てる。そして大企業呼び込みのための莫大(ばくだい)な税金のつぎ込み。これを改める。そのために共産党を大いに伸ばしていきたいと思っています。がんばります。

 神志名 ありがとうございました。

 志位 ありがとうございました。





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