2011年1月10日(月)「しんぶん赤旗」
朝日訴訟は道しるべ
東京で生存権守れシンポ
人間らしく生きるとは
「人間らしく生きるとは」―。「朝日訴訟の今日的意義」と題するシンポジウムが9日、東京都内で開かれました。主催は、西都9条の会と西都保健生活協同組合。朝日訴訟を振り返り、憲法25条で保障される「健康で文化的な生活」や現在の社会保障制度の現状などについて学びました。
朝日訴訟の第一審判決の起案原稿を書いた元裁判官、小中信幸弁護士と訴訟人、原告の朝日茂さんと養子縁組し訴訟を継承し、「朝日訴訟の会」の理事を務める朝日健二さんが講演しました。
小中氏は、判決起案の原稿について「心がけたのは、浅沼武裁判長が『憲法は絵に描いた餅ではない』と言っていたこと」と強調。「憲法25条の生存権の理念は人間に値する生活を国民に保障するものだと常に念頭に入れて書いた」と述べました。
裁判に関わって一番良かったと思ったことは、「二審で判決が棄却され、最高裁では却下されたにもかかわらず、生活保護基準が引き上げられたこと」と感慨深げに話しました。
「朝日訴訟の一審判決が憲法25条の生存権の“道しるべ“として未だに取り上げられているということは、今日においても生存権が国民に保障されていないということではないか」と指摘。「第二の朝日訴訟と呼ばれる生存権裁判では、国などに25条の理念を十分自覚してもらい、裁判を担当する裁判官には、25条の正しい解釈のもと、適正に判断してもらいたい」と強調すると、大きな拍手が湧き起こりました。
「権利はたたかう者の手にある」―。朝日健二さんは、冒頭朝日訴訟のスローガンを紹介しました。
小泉「構造改革」の社会保障費削減計画のもと、生活保護の加算が削られたことにふれ、「老齢加算の復活を求める生存権裁判を幅広い人たちで支援しましょう」と訴えました。
記録映画「人間裁判」が上映されました。
フロアからも活発な発言が相次ぎました。埼玉県の中学校教員の男性は、40年間、憲法25条の授業の際には朝日訴訟を教材に取り上げています。「憲法があるから、私たちは生きていけるんだ」「意味のある裁判だったと思う」などの生徒の感想を紹介しました。
自身も生活保護を受給している女性(39)=八王子市=は、映画「人間裁判」を見て、「社会保障費が削られ、朝日訴訟のころといまは同じような状況にあることを知った。『反貧困』などの活動に参加しながら仕事を見つけたい」。
法律家を目指しているという男子学生(23)=羽村市=は「低すぎる日本の社会保障費を上げなければ、日本経済もよくならないと思う」と指摘し、朝日訴訟運動を学びたいと話しました。
朝日訴訟 重症の結核患者で生活保護を受けていた朝日茂さんが、低すぎる生活保護基準は「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」という憲法25条に反するとして、1957年に国を相手どり起こした訴訟。一審東京地裁で画期的な違憲判決をかちとりました。最高裁は本人死亡のため却下。その10年間に一大国民運動となり、福祉施策を前進させました。日本の社会保障推進運動の原点といわれます。