2011年1月11日(火)「しんぶん赤旗」
TPPは医療に重大影響
日本医師会が懸念
市場化進め「命」に格差
環太平洋連携協定(TPP)について、医療関係団体から、関税の原則撤廃に加え、労働力や金融など各種サービスの輸入も原則自由化する「TPPへの参加によって医療や介護分野に重大な影響が出ることが懸念される」などの声が上がっています。
日本医師会は、昨年12月3日、定例記者会見で「政府のTPP参加検討に対する見解」を発表しました。中川俊男副会長は会見で、「医療分野については、これまでの規制改革論者の意見を踏まえると、TPPへの参加によって、日本の医療に市場原理主義が持ち込まれ、最終的には国民皆保険の崩壊につながりかねない面もあることが懸念される」と指摘。国民皆保険を一律の「自由化」にさらすことのないよう強く求めるとのべています。
日医の見解は、具体的な懸念の内容として、まず「混合診療の全面解禁により公的医療保険の給付範囲が縮小する」としています。
保険診療と自費診療の併用を認める「混合診療」の解禁は「必要な治療はすべて保険でおこなう」という公的医療保険の原則を崩し、患者の支払い能力による治療の格差を生みだすものです。
同見解は「混合診療を全面解禁すれば、診療報酬によらない自由価格の医療市場が拡大する。これは外資を含む民間資本に対し、魅力的かつ大きな市場が開放されることを意味する」と指摘。それに呼応して「公的医療保険の給付範囲が縮小され、社会保障が後退する。また自由価格の市場では、医薬品や医療機器も高騰し、所得によって受けられる医療に格差が生じることになる」と表明しています。
また、TPPのめざす分野の一つは「投資」であるとして、「株式会社の医療機関経営への参入を通じて患者の不利益が拡大する」と指摘。医療への株式会社参入の問題点として、▽収入増やコスト圧縮の追求による医療の質の低下▽利益の追求で不採算な患者や部門、地域からの撤退―などをあげています。