2011年1月18日(火)「しんぶん赤旗」
経団連経労委報告 国民要求に背
財界、賃上げ拒絶
内部留保ため込み固執
日本経団連は17日、企業側の2011年春闘対策方針である経営労働政策委員会報告「労使一体となってグローバル競争に打ち勝つ」を発表しました。大企業がため込んでいる内部留保の一部を賃上げ、雇用に活用すべきだという世論を受け入れず、1%の賃上げを求める連合の低額要求にさえグローバル競争の激化を口実に「きわめて厳しい要求」と拒否しています。
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毎年、自動的に賃金が上がる定期昇給は「維持に焦点を当てた賃金交渉を行う企業が大半を占めると見込まれる」とのべ、昨年の凍結姿勢よりは表現が和らいでいますが、ベースアップ交渉には応じないという、かたくなな姿勢です。
この12年間で労働者の年収が61万円も下がる一方で、大企業が244兆円もの内部留保をため込む異常な状況を改めるのは、日本経済再生のために財界に求められている社会的要請です。
しかし経労委報告は、日本の賃金水準は韓国や台湾など「競合する国や地域」と比べて高いと主張。この間の賃金低下の理由は「企業競争力の低下」「自発的とも言える有期契約労働者が増えたこと」などにあるとして、賃金水準の復元ありきの主張は「適切と言えない」とのべています。
さらに賃上げしても貯蓄に回り「期待通りに消費支出につながらない可能性がある」とのべ、財界の賃金抑制策が消費の低迷をもたらしているとする意見に目を向けず、国際競争力強化のために引き続き賃金を抑え込む姿勢に固執しています。
また内部留保の活用については「現金や預金として保有されているわけではない」と拒否しています。同時に、内部留保が増えている事実は否定できないため、設備投資の確保が「不可欠」だとのべ、「現在の内部留保は国際的に見て十分な水準と言いがたい」と居直っています。
大企業の内部留保は実際は、貯金や換金ができる証券投資に振り向けられており、「金あまり」はごまかしようがない事実で、財界系シンクタンクからさえ賃上げに活用すべきだと指摘されているほどです。
今春闘で全労連は、「だれでも月額1万円以上の賃上げ」を要求していますが、労働総研などの試算で、3%未満の内部留保を活用するだけで実現可能だとしています。