2011年1月25日(火)「しんぶん赤旗」
保険金不払い 金融庁の処分軽減理由
渡辺第一生命現社長の陳情と酷似
直前に金融担当副大臣と面談
保険金不払いで金融庁が生命保険10社を横並びの軽い処分にした問題で、当時、第一生命専務(現社長)だった現生命保険協会会長の渡辺光一郎氏が処分直前、自民党の山本明彦金融担当副大臣(当時)に陳情した内容と金融庁の処分軽減理由が文言も含めて酷似していることが24日、本紙が情報公開で入手した資料と関係者の証言などで明らかになりました。当時、第一生命に「業務停止」といった重い処分が予想されていただけに、渡辺氏の陳情と軽い処分との関係が注目されます。 (生命保険「不正」取材班)
関係者の証言によると、渡辺氏は2008年6月23日に山本副大臣に陳情をするため、議員会館を訪ねています。
この数日前、山本副大臣側が「御社はうわさになっているぞ。近々、処分が出るという話だ。外資系1社と御社の名前が出ているようだ」と第一生命側に連絡。急きょ、設定された面談でした。
その席で、渡辺氏は「ここまで業務改善努力を行ったのに、ものさしも示されないまま『ご苦労さま、それでは処分する』と言われては経営として耐えられない」と、処分の動きを強くけん制。
さらに「前向きな経営改善の競争になることがベストプラクティス(好取組事例)の考え方であると理解しており、そういった打ち出しをしていただければ我々としても経営改善がやりやすくなる」と発言していました。
一方、本紙が入手した金融庁内での処分の検討記録。「生命保険会社の支払漏れ等に係る行政上の対応について」と題した「決裁参考」の文書です。
この文書では「各社の自主的な業務改善に向けた取り組みの状況等を軽減理由として十分に考慮」とし、渡辺氏が言う「業務改善努力」が反映されています。
さらに文書は「市場規律を活用して、各社が自主的・自律的に業務改善に取り組んでいけるメカニズムを作ることが重要」と強調。
渡辺氏の言う「前向きな経営改善の競争」に通じる表現になっています。
この陳情から間もない7月3日に、金融庁が第一生命を含めた生保10社への業務改善命令を発表します。予想された業務停止命令よりはるかに軽い処分でした。
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