2011年1月26日(水)「しんぶん赤旗」
菅首相「税と一体改革」というが
社会保障 切り捨てばかり
後期医療“温存”・国保料さらなる値上げ
菅直人首相は、24日の施政方針演説で、「国民生活の安心を高める。そのためには、国民に負担をお願いすることは避けられない」として、社会保障財源の確保を口実に、庶民に消費税増税を迫りました。しかし、「税と社会保障の一体改革」といいながら、民主党政権がやっていることは、「国民生活の安心」どころか社会保障の切り捨てばかりです。
国民が政権交代で託したのは、自公政権の社会保障切り捨ての「傷跡」をなおすことでした。民主党政権はこの期待にこたえないだけでなく、「傷」をいっそう広げて切り捨て路線に踏み込んでいます。
象徴的なのは後期高齢者医療制度です。民主党は公約を反故(ほご)にして廃止を先送り。しかも、昨年12月にまとめた「新制度」案は高齢者差別の点で後期医療制度と変わりません。
自公と同じ
「高齢者の医療費に関する負担の明確化」を「利点」として引き継いでいるからです。“高齢者医療にこんなにお金がかかっている”と高齢者に肩身の狭い思いをさせ、高齢者の保険料を重くし、医療費削減を図る自公路線そのままです。
さらに、自公政権が実施できなかった70〜74歳の窓口負担の1割から2割への引き上げや、75歳以上の低所得者の保険料軽減策をなくすことまで打ち出しています。
所得200万円の4人家族で年間40万円を超す例もある国民健康保険の保険料(税)。2割を超す世帯が払えず、152万世帯が正規の保険証を取り上げられ(09年6月)、無保険で命を落とす事例が後を絶ちません。
民主党政権はこれを改善しないだけでなく、逆に、市町村が保険料軽減や国保財政の赤字解消のために行っている一般財源から国保財政への繰り入れをやめるよう、「保険料の引き上げ、収納率の向上」を迫る通知(10年5月)まで出しました。差し押さえなど過酷な保険料取りたてに拍車がかかっています。
将来は国保の運営を広域化(都道府県単位)して、一般財源からの繰り入れを全面禁止しようとしています。
削減路線に
民主党政権は、自公政権と同様の医療費「適正化」=医療費削減路線に踏み込んでいます。病院からの患者追い出しになっている「入院期間の短縮」目標も引き継ぎました。
民主党の看板だった「最低保障年金」は投げ捨てられようとしています。「税と社会保障の一体改革」を担当する与謝野馨経済財政相は21日、「人生90年時代の日本のビジョン」として、年金の支給開始年齢の65歳からのさらなる引き上げまで言い出しました。
介護でも、大幅負担増を計画。いっせい地方選挙への影響を恐れて一部見送ったものの、軽度者の保険給付を外す方向に踏み込みました。
消費税率は引き上げられても、医療でも介護でも、年金でも、待っているのは改悪ばかりになりかねません。
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