2011年1月27日(木)「しんぶん赤旗」

主張

米大統領一般教書

TPP参加への不安がつのる


 オバマ米大統領が2012年の大統領選挙に向けた再選戦略を明らかにしました。米国の競争力を強化し、輸出拡大を通じて雇用を確保することが、一般教書演説の柱です。その中身は、日本がいま問われている環太平洋連携協定(TPP)への参加問題にも大きくかかわるものです。

国際競争力の強化へ

 大統領は演説で、景気回復が最大の課題だとの認識を改めて明らかにしました。米国の失業率は昨年12月に9%超が戦後最長の20カ月連続となるなど、きわめて厳しい事態です。高失業率が昨年の中間選挙での敗北につながったとの見方が強いなか、大統領が雇用確保を重視するのは当然です。

 実は昨年の教書演説も「雇用が今年の第一の課題」とし、「5年で輸出倍増」の方針を掲げていました。しかし、それが軌道に乗ってはいないのが現状です。

 大統領は今回、「問題は、新たな雇用と産業が根付くのが米国か、他の国かということだ」と、国際競争力の強化に力点を置きました。法人税減税や規制緩和などの具体策で、大企業寄りの姿勢を打ち出したことが特徴です。

 オバマ大統領は昨年、医療保険改革や金融規制改革を進め、財界から強い非難を浴びました。今回の演説には、中間選挙を受けた路線の見直しがうかがえます。

 輸出拡大策として米国が追求するのが自由貿易協定です。米企業の競争力を引き上げ、日本市場にも攻勢をかけようとするものです。見過ごせないのは、そこには米国の国益が太い柱として重視されていることです。オバマ大統領は貿易交渉に言及したなかで、「私が署名する協定は、米国の雇用を促進するものだけだ」と強調しました。

 米国はTPP交渉を主導しています。その大統領の認識は、TPPとは米国の輸出拡大に役立つものになるということです。それは、日本で流布されている見方を否定するものです。

 TPP参加が、日本農業に壊滅的打撃を与えることは、政府の試算からも明らかです。一方で、TPPに参加すれば、日本の工業製品の輸出が増えるかのようにいう見方が強くあります。菅直人首相は施政方針演説で、「平成の開国」を日本の「成長と雇用」につなげると述べました。しかし、オバマ演説は、菅首相の期待が甘いことを物語っています。

 オバマ大統領が進める規制緩和も人ごとではありません。大統領は米紙への寄稿で「規制はコストだ」と述べ、「米経済を競争力のないものにしている時代遅れの規制の見直し」を主張しました。

規制緩和迫られる日本

 TPPに参加すれば、日本でも広範な分野での規制が「非関税障壁」とみなされ、撤廃・見直しを迫られることになります。消費者・市民がさまざまな運動によって実現させた食品や環境、開発、医療、教育、金融、安全など生活のすみずみまでかかわる規制も例外ではありません。米系多国籍企業の利益に立つグローバル化を優先し、そのもとで経済ルールを破壊するものになることは必至です。

 貿易は輸出国と輸入国の双方にとって利益になるべきです。輸出国が輸入国の口を無理やり開けさせるようなTPPには反対するしかありません。





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