2011年1月27日(木)「しんぶん赤旗」

オバマ米大統領 一般教書演説

TPP推進、法人減税 表明


 【ワシントン=小林俊哉】オバマ米大統領は25日夜、上下両院合同会議で一般教書演説を行いました。中国やインドなど新興国の台頭を含む国際経済状況の激変で「世界は変わった」と強調。世界のトップを自認してきた米国の地位が、熾烈(しれつ)な国際競争で揺らいでいるとの危機感を表明し、基礎研究、教育、産業基盤の強化の必要性を強調しました。


 オバマ氏は基礎研究への集中投資として、生物・医学、情報技術、クリーン・エネルギーの3分野に言及。とくに、石油依存脱却のため、35年までに米国電力の80%をクリーン・エネルギーでまかなう目標を示しました。

 教育分野では、数学、科学教育で世界に遅れていると指摘。学費の税控除の恒久化などで20年までに大学卒業者割合で世界一に復帰することを目指すと表明しました。

 産業基盤整備では、25年以内に、高速鉄道網を米国人口の8割が利用できるようにすると強調。5年以内に98%の国民が高速無線インターネット網にアクセスできる環境を実現すると表明しました。

 一方で、韓国、パナマ、コロンビアとの自由貿易協定(FTA)の推進や環太平洋連携協定(TPP)の推進も表明。法人税率の引き下げを表明するなど、米経済界に同調する主張を行いました。

 深刻な財政赤字の縮減方策については、今後5年間の国内施策の裁量的支出凍結、中央省庁の統廃合を主張。将来の高額所得者増税が必要だとしました。 外交方針では、対外方針の効率化の必要性を強調。イラク戦争の終結、今年7月のアフガニスタン駐留米軍の撤退方針を再確認。北朝鮮の核問題では、同国に核兵器放棄の約束を実行するよう求めました。

解説

「将来への投資」重視 共和党へのすり寄りも

 1期目後半期を視野に入れたオバマ大統領の一般教書演説は、米国の厳しい経済、財政状態を反映し、内政重視で、新たな政策的優先順位を打ち出すものとなりました。

 1930年台の大恐慌以来といわれた経済危機から2年を経過し、経済は回復傾向にあるものの、失業率は9%台で高どまりです。財政赤字は、2010年度は、1兆5600億ドルで国内総生産(GDP)の10%を超えています。

 「チェンジ」を掲げたオバマ政権にとってこれらの改善はまったなしの課題。「将来への投資」として、その戦略を示しました。現状打開のカギとしたのは、技術革新、教育水準の向上、インフラ整備。いずれも、かつては米国が世界の最先端でしたが、今は陰りが見える分野です。

 米国がトップクラスの競争力を維持するためには、こうした分野への優先的投資が不可欠との判断です。

 財政赤字対策では、安全保障を除く裁量的歳出の水準を5年間凍結することを表明。法律で支出が決められている義務的歳出以外は、民生関係で厳しい予算編成が余儀なくされます。

 税制改革の中では法人税減税を打ち出しました。徴税の効率化で財政赤字は増やさないとしていますが、企業要求を受け入れたものです。

 昨年11月の中間選挙で、下院では共和党が過半数となっており、法案成立のためには、民主、共和双方の協力が欠かせないことを再三にわたって訴え、政策的にすり寄る姿勢も見せました。

 雇用創出では、昨年打ち出した「14年までに輸出倍増という目標」に今回の演説でも言及。輸出増加のもと、米国内での雇用増を図る方針を示しました。

 この分野では最近の例として、中国、インドとの協定で25万人、韓国との協定で7万人と、具体的な目標をあげました。

 演説のなかでは、環太平洋連携協定(TPP)には直接ふれていませんが、「アジア太平洋、地球規模での貿易交渉を続ける」と明言し、日本へのTPP加入を迫る構えです。(西村央)





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