2011年1月31日(月)「しんぶん赤旗」
民主党
動き出すマニフェスト見直し
消費増税・TPP・定数削減
透ける悪政推進の思惑
民主党が2009年総選挙のマニフェスト(政権公約)見直しに動き出しています。財界とアメリカの軍門に完全に下ったことで、公約も捨て去ろうという動きで、来年度予算編成で行き詰まったことも背景にあります。同時に、見直しにはさらなる悪政推進の思惑が透けて見えます。
菅直人首相は、衆参両院本会議の代表質問(26〜28日)で「今年9月で衆院任期の折り返しを迎えるので、党でマニフェストの検討を行いたい」との答弁を繰り返しました。
民主党はこれに先立つ13日の党大会で、今年夏までのマニフェスト見直し方針を決定。岡田克也幹事長は「優先順位を上げるもの、下げるもの、現時点で時間がかかるもの、できないものについて、党内で議論を行う」と説明しました。
背景に財源問題
しかし、昨年12月に発表した「民主党政権15カ月の成果」では、財界の要求に応えた法人税5%引き下げや沖縄・米軍普天間基地の県内「移設」を押し付ける日米合意などを挙げて胸を張っており、見直しの方向性は明白です。
昨年末の予算編成で菅政権は、法人税5%引き下げの財源もできないなど苦慮を強いられました。鳴り物入りの事業仕分けによる“財源”もわずかでした。玄葉光一郎国家戦略担当相は14日の会見で総選挙マニフェストで掲げた16・8兆円の財源捻出約束に関し、「しっかり整理し、謝るべきは謝って再出発することが大事だ」と財源問題が見直しの背景にあることを示しました。
現在、菅首相は消費税増税まっしぐらの道を進んでいますが、総選挙マニフェストでは「現行の税率5%を維持」としており、増税を強行するには見直しが不可欠となります。
ただ、党内からは「米国主導のTPP(環太平洋連携協定)も入れると言っている。マニフェストに書いてないことをやって、書いてあることを実行していない。財源がないからマニフェストの全面見直し、消費税増税という声も出ている。国民をバカにした話だ」との声が公然と上がっており、見直し議論の進行とともに党内矛盾が噴き出す可能性があります。
自公を呼び込む
見直しにかけるもうひとつの思惑は何か―。
菅首相は施政方針演説や代表質問で、TPPや消費税増税、国会議員定数削減という悪政のすべてで与野党協議を求めました。
昨年から、自民党は消費税増税への決意を迫るとともに、子ども手当、高速道路無料化、農家の戸別所得補償、高校無償化を批判。同党や公明党は菅首相に対し、マニフェストの撤回を求めていました。
今国会の代表質問でも自民党の谷垣禎一総裁が、「潔くマニフェストの過ちを認め、撤回」すべきとし、公明党の山口那津男代表も「速やかにマニフェストの破綻を認め」るべきと述べ、執拗(しつよう)にマニフェストの撤回を迫りました。
そんななかでのマニフェスト見直しには、自公を与野党協議に呼び込みたい狙いがあることは明らかです。
米国主導のTPP参加に突き進み、財界が求める消費税を増税するためにマニフェスト見直しを進め変節する民主党。それでも、政権交代時に掲げた「国民の生活が第一。」の文字を残すとすれば、もはやマニフェストは完全に存在意義を失うことになります。(藤川良太)