2011年1月31日(月)「しんぶん赤旗」
文化庁予算案を読む
「事業仕分け」に沿い芸術団体助成を削減
辻 慎一
来年度文化庁予算案の詳細が明らかになりました。総額は、1031億2700万円で、前年度比11億300万円(1・1%)増となっています。
要望にこたえず
予算案を柱ごとにみると、「文化芸術の創造と人材育成」は125億5300万円で前年度比12億6100万円(9・1%)の減額、「文化財の保存・活用・継承等」は451億4600万円で21億1400万円(4・9%)の増額、「文化芸術の発信・国際文化交流の推進」は411億4000万円で1億2700万円(0・3%)の減額となっています。
昨年来、芸団協による文化予算の抜本増額を求める署名が広がりました。予算案は総額で増えたというものの、国家予算全体に占める割合は0・11%で変わりません。しかも、芸術創造や人材育成支援が減額では芸術団体の要望にこたえたものとはいえないでしょう。
減額となったのは多くが「事業仕分け」で対象となった事業です。芸術団体への重点支援事業は、「トップレベルの芸術団体、劇場・音楽堂からの創造発信」となり、2億3700万円(5・2%)の減額です。とくに芸術団体支援などに当たる分は、3億200万円(7・8%)減です。
子どもたちに生の舞台芸術を届ける事業は、「次代を担う子どもの文化芸術体験事業」となり、2億3500万円(4・7%)の減額。そのうち芸術団体に委託する「巡回公演」は4億8900万円(10・5%)減となっています。
事業仕分け第2弾で対象となった国立美術館・博物館の運営費交付金では、国立美術館が単年度の作品購入費用の増額が認められ、わずかな増額ですが、国立文化財機構は2億5100万円の減額となっています。
矛盾深めるもの
文化財関係では、伝統文化や史跡を活用した二つの「観光振興・地域活性化」事業で8億4000万円増。メディア芸術関係では、東京国際映画祭などの支援が増額となり、「日本映画製作支援事業」「アニメーション映画製作支援事業」は今年度と同額となっています。
こうしてみると、舞台芸術を中心とした芸術団体への助成の減額が著しいことがはっきりします。一昨年からの「事業仕分け」には、多くの芸術団体が抗議の声をあげ、概算要求では一定の増額が要求されましたが、昨年11月、行政刷新会議が「再仕分け」を行い、「事業仕分け第1弾の結果に即した『圧倒的な予算の縮減』が行われていない」と指摘しました。予算案は、こうした「事業仕分け」の流れに沿ったものといえます。
芸団協が当面要望している芸術団体への助成を100億円にすることは、「思いやり予算」などをわずかに削減すれば実現できます。総額を増やしながら、芸術団体への助成を狙い撃ちにして削減するやり方は、幅広い芸術・芸能団体との矛盾を深めざるをえません。芸団協の提出した60万の請願署名は、今後、国会で審議されます。日本共産党は、いっそう共同を広げ、公的助成と文化予算の抜本増額を求めていきます。
制度面での変化
芸術団体への支援方法では変化が生まれました。「実質的に公演活動の赤字を補填(ほてん)する仕組みであったもの」を「創造活動面への支援に重点化する」としています。芸術団体や日本共産党が主張してきた「赤字補填」方式の問題点を初めて認めたものであり、団体の活動への継続した支援につながりうるものです。ただ、「赤字補填」の中心問題である「自己負担金」や支援対象経費などの扱いはこれからであり、抜本的な増額を求めるとともに、現場に即した支援方法になるよう求めていくことが必要です。
(党学術・文化委員会事務局次長)