2011年2月3日(木)「しんぶん赤旗」
日本航空 TPP 国保 国民の命と安全守る政治を
衆院予算委 志位委員長が迫る
日本共産党の志位和夫委員長は2日、衆院予算委員会の基本的質疑に立ち、日本航空の人員削減、環太平洋連携協定(TPP)、高すぎる国民健康保険料という三つの問題を取り上げ、菅直人首相に国民の命と安全を守る政治への転換を求めました。
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日航再建 やり方見直せ
日航再建の進め方に関して志位氏は、「空の安全確保」は政治が責任を負うべき問題だと強調。日航の社外アドバイザリーグループが「財務状態が悪化した時こそ『安全の層』を厚くすべきだ」と提言しているのに、日航の整理解雇は「安全の層」を薄くするものになっているのではないかとして、二つの大問題を指摘しました。
一つは、年配者から選別して退職強要と整理解雇が行われ、55歳以上のベテラン機長や53歳以上の客室乗務員らが1人もいなくなっていることです。「ハドソン川の奇跡」と報じられた米国の飛行機事故で緊急着陸を成功させた機長(57歳)が「空の安全に最も重要なのは、経験を積みよく訓練されたパイロットだ」と警鐘を鳴らしていると強調しました。
もう一つは、病欠や乗務離脱を整理解雇の基準にしていることです。世界100カ国以上のパイロットで組織する国際操縦士協会からも、体調不良でも会社に申し出にくくなり、乗務につかざるをえなくなり、「安全を脅かす」と警告されていると批判しました。
首相は「指摘は理解する。そうならない方向で見守っていきたい」と述べ、大畠章宏国交相も「安全を確保して再生を図るのか(日航を)呼んで確認する」と答えました。
志位氏は、日航の人員削減のやり方は「空の安全」より「利益追求」を優先させるものだと指摘。政府に無法な整理解雇の中止を指導するよう求めました。
自給率向上と両立せず
志位氏は、菅政権が推進するTPP(環太平洋連携協定)について、仮に日本が参加した場合、アメリカとの2カ国だけで参加・交渉国のGDP(国内総生産)のうち90・8%を占めることになるとして、「日本にとってのTPP参加は、例外なしの関税撤廃を原則とする、日米FTA(自由貿易協定)締結となるということだ」と指摘。「『アジアの成長の取り込み』どころか、アメリカの対日経済戦略に組み込まれることになる」と批判しました。
その上で、政府が目指す「食料自給率50%」と「関税ゼロ」がどうしたら両立できるのかと追及。農水省が2007年にまとめた試算で、「大規模化」をやっても米国やオーストラリアとは太刀打ちできず、価格補てんのため毎年約2兆5000億円をつぎ込んでも「自給率の低下等は避けられない」と認めていると指摘しました。
首相は農水省試算について、「何も対応をしなかった場合だ」などとしどろもどろ。志位氏は、政府の報告書でも、TPP参加には「アメリカ議会の同意が必要」とされており、牛肉のBSE(牛海綿状脳症)輸入規制や残留農薬の安全基準までアメリカ言いなりになり、経済主権を失うと強調。「日本が進むべき方向は、第一に、『食料主権』に立った貿易ルールの確立であり、第二に、東アジア諸国と多様な農業を互いに尊重し、平等・互恵の経済関係を発展させる方向だ。ここにこそ日本の未来がある」と強調しました。
国保料 引き下げよ
命を脅かす問題として国保料の問題を取り上げた志位氏は、所得300万円の4人家族の場合、大阪市で42万8700円などとなる実態をパネルで示すと、首相も「負担感としてはかなり重い」と認めざるをえませんでした。
志位氏は「それならなぜ追い打ちをかけるのか」として、国保料引き上げや「収納率向上」を求める厚労省「通達」の撤回を求めました。
「収納率向上」の名で、大阪市の自営業者が子どもの学費などのために積み立ててきた学資保険まで差し押さえると通告された例を示して告発すると、首相も「胸が痛む」と認めざるを得ませんでした。「国保制度には、構造的問題がある」と述べる首相に対し、志位氏は「最大の構造的問題は国庫負担が減らされてきたことだ」と指摘。民主党も公約していた国庫負担増への転換を求めました。
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