2011年2月18日(金)「しんぶん赤旗」
主張
世界の食料高騰
投機抑える実効ある手だてを
食料価格の高騰がやまず、途上国の貧困層をはじめ、世界の人々の生活を直撃しています。食料への投機を規制することは急務で、実効ある手だてが必要です。
そのためには国際協力が欠かせません。今日からパリで開かれる20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は、投機抑制も議論する見込みです。11月に開かれるG20首脳会議を視野に、実りある議論が求められます。
途上国の貧困拡大
食料価格は昨年夏以来上昇し続け、国連食糧農業機関(FAO)によれば、今年1月に史上最高値に達しました。主食となる小麦やトウモロコシをはじめ、食用油や砂糖、コーヒー豆なども値上がりしています。世界銀行によれば、食料高騰によって、途上国の最貧困層が昨年6月以来で4400万人も増加しました。
食料価格は2007〜08年にも急騰し、デモや暴動が世界各地で起きるなど「食料危機」が叫ばれました。しかし、「リーマン・ショック」で金融市場が凍りついた08年9月以後は下落し、高騰の主因がマネーゲームにあったことが裏付けられました。
今回の高騰も投機が影響しています。食料ばかりでなく、原油や原材料なども値上がりしています。米国の超金融緩和であふれ出たマネーが、もうけ口を探して、これらの商品市場に流れ込んでいるからです。
G20の議長国であるフランスのサルコジ大統領は先月、食料価格を安定させるため、投機的取引の規制を首脳会議で議論する方針を発表しました。投機規制はかねてから欧州諸国が中心となって主要国(G8)首脳会議などで求めてきましたが、実現していません。サルコジ大統領の提起は、G20という新たな枠組みを生かそうとする点でも注目されています。
しかし、米国などは投機規制に反対する姿勢を崩していません。超低金利政策への批判にも強い反発を示しています。
米国の中央銀行にあたる連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長は、食料価格の高騰は経済成長が続く新興国での需要拡大によるものだとして、投機の影響を事実上否定し、「米国の金融政策のせいにするのはまったく不当だ」と主張しました。
確かに、中国など新興国で肉類の消費が増え、飼料用穀物の需要が高まっています。干ばつに見舞われたロシアが小麦の輸出を中止し、オーストラリアでも大規模水害が発生するなど、災害による供給不安もあり、温暖化の影響も指摘されています。これらは短期間での解決が難しい問題です。
しかし、それをあて込んでもうける投機を抑え込むことは、ただちにとりかかるべき課題です。投機規制は待ったなしです。
農業振興に力を
中長期的には、世界的に食料生産を拡大することが、食料不安を克服するうえで欠かせません。日本のように食料自給率の低い国が、農業振興に力を注ぐことはきわめて重要です。
菅直人政権が血道をあげる環太平洋連携協定(TPP)参加は、日本農業に壊滅的な打撃を与えます。各国が食料確保に動くなかで、食料は外国から買えばいいという外国依存の考えは、まったくの時代遅れです。