2011年2月18日(金)「しんぶん赤旗」
空の安全 地上から崩壊 日航は現場の声聞け
衆院予算委 穀田議員の追及
「客室乗務員、整備、地上業務、すべての現場で安全を脅かす事態が続出している」―。17日の衆院予算委員会で、再建中のJAL(日本航空)が行っているすさまじい人員削減の実態を取り上げた日本共産党の穀田恵二議員。もうけ優先で安全を切り捨てる問題点が浮かび上がりました。
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消えた「安全」
穀田 人減らしで労働者のモチベーションが低下
国交相 「絶対安全」を貫く気概で
穀田氏は、JAL(日本航空)の稲盛和夫会長がうちだした企業理念(別項)から「安全」の文字が消えていることを指摘しました。
穀田氏は、これまでJALグループが掲げていた「安全第一」は、「1985年のJAL機御巣鷹(おすたか)山事故の教訓から導き出されたものだ」と強調しました。
事故後に就任したJALの新会長が全社員に発した通知を示した穀田氏。同通知が、「航空機の安全運航が原点」とのべ、第一に「絶対安全の確立」という方針を掲げていることを指摘。「520人の犠牲者の霊に応えるもっとも必要なことは『日本航空絶対安全の確立』にある」と述べていることを紹介しました。
穀田 働く労働者のモチベーション(意欲)が高いということで安全運航が支えられる。
大畠章宏国交相 働く人が気持ちを一つにし、「絶対安全」を貫く気概で仕事をしてもらうことが大事だ。
穀田氏は、JALの現場では「労働者のモチベーションが低下し、コミュニケーション不足で安全性を脅かす事態が起こっている」と告発。「『更生計画の確実な実行』という名で、急速な人減らしが行われ、『人減らし先にありき』が強行されている。現場は深刻な状態にある」と批判しました。
整備・地上支援
穀田 子会社の150人解雇で機体の重整備できるのか
国交相 改めて立ち入り検査する
パイロットの実態を取り上げた志位和夫委員長の質問(2日)に続いて、穀田氏が取り上げたのは航空機の整備部門の実態です。
JALは、更生計画で旅客機MD90を退役させる計画を決定。機体を整備してきた子会社・日東航空整備が解散を余儀なくされ、3月末で約150人の職員全員が解雇される事態となっています。
穀田氏は、会社ごとつぶして首を切るやり方を批判し「JALは親会社として再雇用の責任を果たすべきだ」と指摘。MD90の退役は2012年であり、あと10回は「重整備」(航空法などで義務付けられている整備)しなければならないとのべ、その間の安全運航に支障をきたすと指摘しました。
同機の整備は「(別会社の)JALエンジニアリングで引き受ける」と答える三井辨雄国交副大臣。穀田氏は同社はMD90の「重整備」の実績は年1回だけで日東航空整備の力を借りていると指摘。そのうえ、「同社自体が大変な人減らしをしている。MD90の重整備は技術的にも人的にもできないとの声があがっている」と批判しました。
穀田 仕事を与えず会社を「切り」、揚げ句の果てに、整備工のいない飛行機を飛ばそうとする。こんなことでは安全が保てない。
大畠章宏国土交通相 指摘の状況があればきちんとすべきだ。改めて立ち入り検査をする。
貨物の積み下ろしなどグランドハンドリングと呼ばれる地上支援業務ではどうか―。
穀田氏は、積み荷留め金のかけ忘れや台車の暴走、固定橋の損傷などの事故が続発したことを指摘。労働者から「『地上から安全が崩壊する怖さ』をJAL経営者は自覚すべきだ」との声が上がっていることを紹介しました。
この業務を担う子会社の一つであるJALグランドサービスは、1年間で2000人以上、3分の1を減らす計画です。
穀田 地上支援業務の現場で事故につながる“ヒヤリハット”が続発している。JAL関連会社の調査・特別監査を実施せよ。
大畠 絶対安全が基盤として確立しているかどうか、関心を持って調べたい。
客室乗務員
穀田 他業務兼務で保安に問題「整理解雇」撤回せよ
国交相 社長・会長に話うかがう
「保安任務」を負っている客室乗務員では―。
JALは子会社が担っている搭乗ゲート業務の職員を削減し、穴埋めに客室乗務員を派遣しています。
そのため、客室乗務員の本来の任務である非常設備の点検や不審者・不審物の注意―などが不十分となり、搭乗ゲートの業務についた客室乗務員が、機内の状況が分からないまま飛び立つ事態になっています。
搭乗ゲート業務でも、チェック不十分のため間違って他社の乗客が乗り込む「客数不一致」まで起こっています。
穀田氏はこの現場の状況を紹介し、保安にとって重大問題だと大畠国交相に迫りました。
穀田 安全の観点から至急調査し、改善させるべきだ。
大畠 安全運航上も大変懸念される。どういう実態があるのか、よく注視したい。
穀田氏は、「各現場で、急速な人減らしで安全が脅かされる事態が続出していることは大問題だ」と強調しました。
穀田氏は、JALインターナショナルが昨年の9月から11月に、すでに2100人を削減し運航・客室乗務員ともに人員削減計画を大幅に上回っていることを指摘。同期間だけでも1586億円の利益を上げており、稲盛和夫会長自身も「(整理解雇の)160人を残すことが経営上不可能かと言えばそうではない」と述べていることを紹介。人員整理の必要性など「整理解雇の4要件」にも反する整理解雇を撤回させるよう求めました。
穀田 問題は整理解雇を強行するなど急速な人減らしで安全性の問題が起きていることだ。
大畠 (整理解雇が)ベテランのパイロットやベテランの整備士にもおよんでいて、安全性をどうやって担保できるのか確認したい。今日の質疑もふまえ、社長、会長にも話をうかがう。
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